来日客の誘致 隠れた魅力を売り込もう

毎日新聞 2013年08月26日

訪日外国人100万 日本のファンをもっと

日本を訪れる外国人が7月、単月で初めて100万人を突破した。前年同月比(%)で2けたの高い伸びが続いており、政府が目標とする「年間1000万人」の年内達成も、視野に入ってきた。

近年、増加が特に目立つのがタイ、ベトナム、台湾などアジアからの訪日者である。経済発展に伴い海外旅行を楽しむ人が増えていることが大きな要因だが、円安や訪日者を増やすための官民あげた取り組みも奏功しているようだ。

「年間1000万人」を目標に掲げた10年前の訪日外国人数は500万人程度だった。それからすれば大きな進歩である。ただ、世界的に見るとまだ多いとはいえない。2010年の統計によれば、訪れる外国人旅行者数で世界一のフランスは7680万人、米国に次ぐ3位の中国も5500万人を超えている。年間1000万人超の国・地域は、マレーシア、タイなどを含め22もあった。

裏を返せば、日本にも外国人旅行者をもっと増やす余地があるということだ。訪日者の増加は、人口減少で伸び悩む国内の消費にプラスとなるが、多くの外国人に日本を知ってもらい、ファンになってもらう利益は、経済的なものにとどまらない。初めての訪日者、そしてリピーターを増やす努力や工夫を重ねたい。

政府は7月から、タイ、マレーシアからの観光客に対しビザ取得を免除するなど、東南アジア諸国5カ国へのビザ要件を緩和した。さらに緩和の対象を広げる必要があろう。

外国人旅行者には地方の多様な魅力も知ってもらいたい。実際、北海道などへの関心が高まっているようだが、不十分な受け入れ態勢によってせっかくの需要を取りこぼすようではもったいない。余力のある地方空港を国際線用に活用するため、入国管理などの整備を急いでほしい。

海外の銀行口座から直接円建てで引き出せる現金自動受払機(ATM)を増やしたり、外国語の表示や案内を充実させたりと、やるべきことはまだたくさんある。

歴史ある神社仏閣や世界遺産でなくても、海外の人たちが喜んでくれるものは意外と多い。例えば、米タイム誌は「東京観光トップ10」の一つに、渋谷駅前のスクランブル交差点を挙げたことがある。「整然としたカオス」と珍しがっていた。こうした日常に潜む“売り物”を発掘し、ソーシャルメディアなども駆使して、おもしろく発信していきたい。

外国人旅行者の誘致では、観光地間や隣国との争奪戦といった考えに陥りがちである。しかし、連携を通じてともに付加価値を高めることも可能だろう。新しい発想で臨めば、可能性は無限に広がりそうだ。

産経新聞 2013年08月25日

来日客の誘致 隠れた魅力を売り込もう

来日する外国人旅行者を「年間1000万人」まで増やすという今年の政府目標が達成可能な状況になってきた。

日本政府観光局によれば、7月の来日旅行者数は、前年同月比で2割近くも増え、単月ベースで初めて100万人の大台を超えた。1~7月の累計は595万人だが、この増勢ペースは今後も続くと期待されている。

交通輸送、宿泊から飲食に至るまで裾野が広い観光業は、日本の景気回復に大きな役割を果たす。来日観光客増加の流れを確かなものとするためにも、国、地方を挙げた取り組みが欠かせない。

来日客の急増は、年初来の円安効果が大きいが、従来の韓国や台湾だけでなく、東南アジア地域からの観光客が大幅に増えたことが効いている。日中関係の冷え込みで激減した中国人観光客の落ち込み分を完全に補った格好だ。

政府は7月から、タイとマレーシアの旅行者に対して短期訪日の観光ビザ(査証)を免除し、フィリピンとベトナムの旅行者には、有効期限内なら何度でも入国できる数次ビザを認めた。その効果が早くも表れたといっていい。

インドネシアなどのイスラム教徒向けに、豚肉を使わない料理を提供し、礼拝場所を確保するといった、きめ細かな対応で集客に成功した旅行会社も出てきた。各国の実情に合わせた売り込み手法をさらに工夫していきたい。

国際会議を含め、多様な国や地域から日本を直接見に来てもらうことは、国際社会における日本理解を深め、存在感を高める。来日客誘致の意義は大きい。

観光立国を掲げる政府は、2016(平成28)年には来日外国人数を1800万人とすることを次の目標とし、さらに2030(同42)年には3000万人を目指すとする目標を成長戦略で定めている。その時点で、来日客が日本国内で消費する金額は年間4兆円にもなると推計している。

しかし、日本の魅力は日本人自身が意外に見落としがちだ。世界遺産に指定された富士山や京都、奈良といった定番の観光地にとらわれない売り込みが必要だ。

東京・築地の鮮魚市場など、従来は考えもしなかった場所に、外国人観光客の関心が集まっているのは好例だろう。

この国の魅力を再発見し、自ら掘り起こす努力が欠かせない。

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