原発タンク漏れ 国の当事者意識足らぬ

朝日新聞 2013年08月22日

汚染水漏れ 首相先頭に危機管理を

福島第一原発で、新たな事故が起きた。放射性物質で高濃度に汚染された水が、保管タンクから300トンも漏れたのだ。

原子力規制委員会はきのう、8段階の国際基準に当てはめると上から5番目の「レベル3」(重大な異常事象)に相当すると発表した。

隔離していた放射性物質を大量に環境中に逃した事態は文字どおり重大である。海外からの懸念の声も高まっている。

周辺の安全だけでなく、日本の信用にかかわる危機であり、安倍首相は早急な対応でリーダーシップを発揮すべきだ。

福島での原発事故は86年のチェルノブイリ原発事故と並び、国際基準で最も重大な「レベル7」(深刻な事故)だ。

レベル7の事故自体が収束にほど遠く、今も放射性物質による環境汚染が続いている。

その事故対策の過程で生じたタンクからの汚染水漏れを、改めて「レベル3」と判定することに異論もあるようだ。

しかし、新たな事故と位置づけることで、「なぜ防げなかったのか」という重要な問いに向き合うべきだ。

汚染水が漏れたタンクは、約1千基のうち約350基を占める簡易型で、耐用年数も5年しかない。漏れる危険性は当初から指摘されてきた。

大量漏出が起きたのは、汚染水対策が東京電力任せにされ、その場しのぎの不十分な対策が繰り返された結果だ。

汚染水問題は、安倍首相が今月7日の原子力災害対策本部で「東電任せでなく国としてしっかり対策を講じる」と述べて、ようやく省庁間に連携の動きが出てきたと関係者は語る。

汚染水対策は従来、原災本部の下の廃炉対策推進会議で、東電と経済産業省中心にまとめられてきた。それが裏目に出た。

現状の把握や国内外への説明、対策での国際連携、必要な資金投入など、省庁の壁を越えて政府が総力で迅速に取り組むべきことばかりだ。首相の指導力が問われる局面である。

事故関係の情報は原災本部の内閣危機管理監の下に集約して共有と調整を図るなど、政府として原発事故発生時に準じた態勢を組んではどうか。

東電任せの枠組みを認め、一歩引いた監督にとどまりがちだった規制委にも責任がある。

楽観に傾かず、冷徹に最悪を想定するのが役目である。漏水を防ぐ複数の代替策を準備させたり、環境汚染の徹底監視に乗り出したり、内外の最新知見を積極的に取り入れた対策の具体化をただちに進めてほしい。

毎日新聞 2013年08月22日

原発タンク漏れ 国の当事者意識足らぬ

東京電力福島第1原発でまた、深刻な汚染水問題が発覚した。

地上タンクから高濃度の放射性汚染水が推計約300トン漏れ出ていた。タンクからでは過去最大の汚染水漏れで、1カ月近く漏れに気づいていなかった可能性がある。事故は収束していないことを改めて示す事態だ。原子力規制委員会は、漏れを国際評価尺度でレベル3(重大な異常事象)とすることを検討中だ。

汚染水問題で安倍晋三首相は「国として対策を講じていく」と述べたが、日々の事故対応は基本的に東電任せで、政府が前面に出ているとはいまだに言い難い。もっと当事者意識を持って対応してほしい。

漏れが起きたのは、鋼製の板をボルトでつなぎ合わせた円筒型タンク(使用容量1000トン)だ。原子炉を冷却した水から、放射性セシウムを除去した汚染水が入っていた。

福島第1原発には汚染水の貯蔵タンクが約1000基ある。うち約350基がボルト式で、残りは接合部を溶接したタイプだ。ボルト式は組み立て工期が短いが、継ぎ目から水が漏れやすい。これまでもボルト式タンクで漏れが4件起きた。そもそも今回の漏えい箇所はまだ分かっていない。今後も漏れる恐れがある。

東電はボルト式タンクを緊急点検し、パトロールも1日2回から約3時間ごとに増やすという。漏れの原因や発見が遅れた理由を検証し、監視・点検体制の抜本的な見直しを図る必要がある。海への流出の有無や地下水への影響も、きちんと確認すべきだ。

セシウムを除去した汚染水は、62種類の放射性物質を取り除く多核種除去装置「ALPS」で再度、処理される。しかし、試運転でトラブルが起き、停止したままだ。汚染水のリスクを下げるためにも、東電は装置の稼働を急いでほしい。

東電は汚染水増加の原因となっている地下水流入を減らす緊急対策として、敷地山側に井戸を掘り、汚染される前の地下水をくみ上げて海に流す「地下水バイパス」を計画している。だが、風評被害への懸念などから地元の了解は得られていない。

今年4月には汚染水の地下貯水槽で漏れが判明し、先月には高濃度の汚染水が地下水と混じって海へ流出していることが発覚した。海外の関心も高まっている。日本の国際的な信用を左右しかねない状況だ。

規制委は汚染水の海洋への影響を監視する検討会を設けた。安全性を判断する前提となる客観的な分析を国内外に発信してほしい。地下水バイパスを実施するなら、汚染が生じた時の対応も含め、政府が責任を持って、地元自治体や国民への説明を尽くす以外に道はない。

読売新聞 2013年08月23日

原発汚染水 原子力規制委は一層の関与を

東京電力福島第一原子力発電所で、汚染水漏れがまたも判明した。

汚染水の漏出が相次いで、解決のめどが立たない。深刻な事態である。東電は全力で対処すべきだ。

ただ、東電の対処能力は資金面でも、人材面でも限界に近い。政府の幅広い支援、協力が今後、ますます大切になるだろう。

新たに漏出が分かったのは、放射性物質を含む汚染水の貯蔵タンクだ。漏出量は約300トンで、25メートルプール1杯分に相当する。

貯蔵タンクは円筒形で鋼製部品をボルトで接合してある。最大1000トンの汚染水を貯蔵できる。溶接していない継ぎ目が弱点で、過去にも漏出が起きている。

敷地内の貯蔵タンク約1000基のうち今回と同型は約350基ある。総点検を急ぐべきだ。

これまでの点検は、地面に漏れた水の跡がないかを見る方式だった。だが、少量だと見逃しやすい。タンクに水位計が必要だ。

汚染水は毎日増え続ける。確実に貯蔵しておくには、今の東電だけでは危うい。原子力規制委員会のチェックが不可欠である。

原子炉等規制法でも、事故後の福島第一原発を特別な施設と位置付け、規制委が安全確保を監視することを責務と定めている。

それを担う人員として、現地には、規制委の事務局である原子力規制庁の職員10人が保安検査官として常駐している。東電の保守点検計画に問題はないか。現場の作業は適切に進められているか。しっかり監督してもらいたい。

今回のタンク以前にも、大きな汚染水の漏出が4件起きている。敷地内での汚染水貯蔵にも限界がある。汚染水の増加に歯止めをかけないと、いずれ破綻する。

まずは原子炉建屋への地下水流入を減らすことだ。これが汚染水の最大原因と言える。流入前に地下水をくみ上げ、安全確認後に海へ放出するほかない。地元漁協には理解を示す声もある。政府が前面に出て協力を求めたい。

貯蔵している汚染水に含まれる放射性物質を減らす浄化装置の稼働も急ぐ必要がある。浄化すれば大量貯蔵時のリスクが減る。

今週の規制委会合では、汚染水問題を海外にどう説明するかが議題となった。今回の漏出を、原子力事故の国際尺度で最大の7から0のうち「レベル3」とする案も出たが、まとまらなかった。

あれこれ評価するより、事態の収束が最優先だ。政府一丸でこの問題に臨むことが、海外の懸念を軽減することにつながろう。

産経新聞 2013年08月23日

汚染水漏出 レベル評価よりも対策だ

またもや深刻な汚染水漏れである。

東京電力の福島第1原子力発電所の敷地内に設置されている地上の貯蔵タンクから高濃度の放射能汚染水が漏出した。

その量は約300トンと推定されている。この汚染水の一部が排水溝を通って外洋に流出した可能性もあるという。

汚染水問題でこれ以上、対応の遅れが続けば、第1原発の事故処理は根本から破綻しかねない。

もはや事態は、東電の取り組みだけで解決できる段階ではなくなっている。政府が前面に出て、増え続ける汚染水問題の解決に当たらなければならない。

原子力規制委員会に期待されているのは、評論家的な発言ではなく、汚染拡大防止の実効的な知恵の提案だ。世界から日本の政治の危機管理能力が注視されている。この現状認識が必要だ。

今回は、ボルトで結合した急造の貯蔵タンクから漏れた。22日の総点検で漏れが疑われる同型のタンクが見つかったことから、監視体制の強化が急がれる。

また、準備が整っていながら実行に移せない状態が続いている未汚染地下水の海への放出も必須の対応だ。原発の地階には、山側からの地下水が流れ込み、元からある汚染水と混ざって総量を連日400トンずつ増やしている。

この地下水を原発の上流側の井戸からくみ上げて、海に流せば改善されるにもかかわらず、漁業関係者の理解が得られていない。

安倍晋三首相は7日に汚染水問題への対応強化を表明したが、来年度予算での国費投入だけでは不十分だ。喫緊の課題は漁民の説得である。一日も早い地下水のバイパス放出が必要だ。なぜ、首相は自らその説明をしないのか。

次には、トラブルで点検中の多核種除去装置「ALPS」の稼働促進だ。東電には9月末の補修完了目標を達成してもらいたい。汚染水から、ほとんどの放射性物質を取り除けるこの装置が動けば、事態は大きく改善に向かう。

重要なのは、汚染水と放射能の減量に直結する対策から順に、迅速かつ確実に実施することだ。タンクの増設には限界がある。再び同種の事故も起こり得る。

規制委も汚染水漏れの事故レベルの評定などに時間を費やしている暇はないはずだ。福島事故は汚染水との闘いである。それを忘れると勝ち目はない。

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