ネット依存 付き合い方を考えよう

朝日新聞 2013年08月19日

ネット依存 次代のリスクに対策を

次代を担う青少年に「インターネット依存」が広がっている実態が数字で示された。

厚生労働省が初めて全国の中高生を対象に抽出調査した。10万人が回答し、8%がネット依存とされた。中高生全体も同じ比率なら52万人が該当する。

パソコンやスマートフォンをネットにつないで使っていないとイライラなど情緒不安定になり、生活に影響が出る。これがネット依存の広い意味だ。

症状が深刻になると、生活が昼夜逆転して不登校になり、本人の健康や人生設計、家族関係が崩壊する場合もある。久里浜医療センター(神奈川県)に専門外来があるが、重症で受診するのは大半が若者だ。

医学的には病気かどうかまだ議論もあるが、米精神医学会や世界保健機関が正式に病気と認定する方向へ進んでいる。

日本でも広く問題意識を共有し、予防や治療のための対策を進めるべき時期にきている。

症状は多様で、一般には薄く広い問題でもあり、発見しにくい。深刻化しても、問題が家庭の中に閉じこもりがちだ。

とくに短期間で不登校などへと発展する危険性が高いタイプとしては、オンラインゲームへの依存が際だってきた。

これはネット上のゲーム空間で、複数の参加者が協力して戦闘や冒険を続けるものが多い。メンバーがそろわないとプレーできない。参加は匿名なので、子どもが引き込まれる連鎖の力も強い。ネットには「もう遅いから子どもは寝なさい」という人はいない。

この問題の対策では韓国が先を行く。IT立国の一環でブロードバンドとオンラインゲームを広めたところ、ゲームのやりすぎで若者がエコノミー症候群のような状態で急死するなどして社会問題化した。

政府が乗り出し、早期発見や予防教育、治療態勢の整備などを組織的に進めている。ネット断ちの合宿療法が知られるほか、未明の6時間は16歳未満のネット接続を強制遮断する制度にも踏み切った。

どんな対策がいいかは国情にもよろう。だが、早期発見と適切なアドバイス、家族の協力がかみ合えば深刻化をかなり防げる点は万国共通だ。

日本も、学校での呼びかけ、親たちへの啓発、学校や保健所のカウンセラーの研修、対応できる医療機関の拡充などに取り組む必要があるだろう。

日進月歩で変化するネット環境に潜む未知のリスクに、社会が備える基盤づくりにもつながるはずだ。

毎日新聞 2013年08月19日

ネット依存 付き合い方を考えよう

インターネットに依存している疑いの強い中学、高校生が全国で約51万8000人にのぼると推計されることが厚生労働省の研究班の調査でわかった。予想以上に深刻な実態だ。多角的な取り組みが急がれる。

10万人を超える中高生が回答した初めての全国調査だった。パソコンやスマートフォンなどを使ったオンラインゲームやメール、チャットなどネットへの依存度を世界的に実施されているテストで調べた。

「ネットで人間関係を台無しにしたことがある」「やめようとすると不安やイライラを感じる」など8項目の質問に答えるもので、「はい」が5以上だと「病的な使用で依存の疑いが強い」、3~4だと「不適切な使用」と分類される。

その結果、依存の疑いが強い生徒は、男子が約6%、女子は約10%で、全体では約8%だった。

ネット依存の疑いが強い生徒には、睡眠の質が悪いとか、午前中に調子が出ないといった傾向が目立ち、健康や生活に大きな支障をきたしていることがうかがえた。夜更かしから不登校になったり、ネットから離れられなくて栄養失調になったりする例もあるようだ。

2年前からネット依存の専門外来を設けている国立病院機構「久里浜医療センター」(神奈川県横須賀市)では、これまでに約150人が受診し、今年11月まで初診の予約が埋まっている。

今回の研究班メンバーでもある樋口進院長によると、患者の50%弱は中高生で、当初はオンラインゲームにのめり込む男子が多かったが、最近はスマートフォンでの友人との言葉のやりとりがやめられない女子が増えてきた。依存のために心に深いダメージを受けた子もいるという。

ネットは情報収集にも、コミュニケーションにも、便利な道具だ。ネットから離れた生活は今や考えにくいだろう。だからこそ、多方面から、この問題を考える必要がある。

家庭で話し合って、深夜の使用を禁止したり、ネット使用の制限時間を決めたりするなど、ルールをつくることは有効だ。子供の変化に気づいたら、早めに専門医の治療を受けることが望ましい。

学校でネットとの付き合い方を教育する必要もある。人との触れ合いやスポーツ、レクリエーションなど、リアルな世界の楽しさを味わうことも大切だろう。

韓国では16歳未満が深夜にオンラインゲームに接続できない制度をつくるなど、国を挙げて対策を講じている。今回の結果は現象の一面かもしれず、日本ではまず、詳細な実態調査を進めるべきだ。そのうえで、専門の医療機関の充実や教育など、総合的に対策を練りたい。

読売新聞 2013年08月21日

ネット依存 学校や家庭での予防が大切だ

スマートフォン(スマホ)やパソコンに夢中になるあまり、健康や学業に支障をきたす若者が増えている。

学校や家庭で予防策を急ぐべきだ。

ゲームや電子メールなどの使用をやめられなくなる「インターネット依存」の中高生が、約52万人に上るとの推計が、厚生労働省研究班の調査でまとまった。

調査では平日に5時間以上インターネットを使う中学生は9%、高校生は14%に上っている。

見過ごせないのは、「ネットの使用をやめようとするとイライラする」など、使用をコントロールできない「依存」とみられる割合が、中学生の6%、高校生では9%に達していることだ。

こうしたネット依存では、約6割が睡眠障害に陥っている。深夜ネットに熱中し、昼夜逆転になりがちだからだ。不登校、引きこもりになることもある。

成長期の若者たちの心身がむしばまれる現状は深刻である。

食事が不規則になるための栄養失調や、同じ姿勢を長時間とることで血栓ができるエコノミークラス症候群もみられる。依存が強いほど気分の落ち込みも増える。

症状が重ければ、治療が必要になる。依存に気づかせるため、どれくらいネットを使っているか、1日の行動記録をつけることが有効だ。医師や臨床心理士がカウンセリングを行う病院もある。

ただ、専門外来を持つ医療機関は極めて少ない。ネット依存に詳しい専門家の養成や相談窓口の整備が求められよう。

ネットでは、「人から認められたい」「人とつながりたい」という心理も働くのだろう。

例えば、グループ参加の戦闘系などのゲームは、長く続けるほど上達する。仲間からの称賛や、達成感や高揚感を得たいために、ずるずると身を任せ、抜け出せなくなる例が少なくない。

LINE(ライン)、チャットによる会話では、すぐ返信しないと仲間外れになると思い、画面から目を離せなくなってしまう。

現代では、ネットは仕事や日々の生活に欠かせない通信手段だ。スマホは急激に普及している。それに伴い、ネット依存は今後も増える可能性が大きい。

学校では、パソコンを使った授業の際に、機器の操作法だけでなく、依存の危険性や、スマホとの付き合い方も学ばせるべきだ。

スマホやパソコンを子供に与える際、使用する時間や目的について、親子でルールを決めることも大切と言えよう。

くりふ - 2013/08/23 10:14
日本のサブカルチャーを一方的に否定するような表現に非常に腹が立ちました。
匿名 - 2013/08/23 10:18
くりふさん素晴らしいと思います。アルファーツイッタラー目指して頑張って下さい
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