きしむ連立 意思示さぬ首相に責任

朝日新聞 2009年12月16日

普天間先送り 鳩山外交に募る不安

米軍・普天間飛行場の移設問題で、鳩山内閣が方針を決めた。決着を来年に先送りし、連立3党で移設先を再検討するという。しかし、これを方針と呼べるだろうか。

移設先の検討対象には、県外や国外ばかりでなく、自民党政権時代に合意された名護市辺野古も含まれる。移転先の結論を示す時期は明示しない。辺野古移設を前提とした経費は来年度予算案にとりあえず盛り込んでおく。

沖縄の基地負担、日米合意の重さ、連立への配慮。どれにも応えたいという鳩山由紀夫首相の姿勢の繰り返しにすぎない。ただ結論を先延ばしするだけである。

危険な普天間飛行場の現実を早期に変えようとすれば、選択肢は限られている。日米合意を基本に辺野古へ移設するか、本気で沖縄県外の移設地を探るかだ。加えてこの間、傷ついた日米当局間の信頼をどう回復するつもりなのか。政権の意思も方向性も見えないままである。

政権発足から3カ月。これまでの無策と混迷がさらに続くのだろうか。

この問題の深刻さを認識していたのかどうか、先月の東京でのオバマ米大統領との会談では「私を信頼してほしい」と語りかけた。何の成算もなしにこの言葉を発したと見られても仕方あるまい。

半世紀以上続いてきた自民党政権から代わったのだから、従来とは違う日米関係、同盟のあり方を追求したいという首相の気持ちは理解できる。沖縄が戦後60年以上にわたって背負ってきた過重な基地負担を、歴史的な政権交代を機に軽減したいと考えるのも当然だろう。

だが、そうであるなら、手順を踏んで現実的な政策として練り上げ、同盟国である米国の信頼と同意をとりつけていく努力が要る。そこをおろそかにしたまま、ただ「待ってくれ」「辺野古の可能性も残っている」などと優柔不断な態度を続けるのは同盟を傷つけ、ひいては日本の安全を損ないかねない危険すら感じさせる。

政府方針に沿って、これから事態の打開を目指そうとしても、先行きは極めて険しいことを首相は認識すべきだ。そもそも再交渉するための土台となる米国との相互信頼を一から築き直さねばならない。

対案をつくるにしても、いつまでという期限が欠かせない。しかし、来年5月までとする考え方に社民党が難色を示し、与党3党の間では合意できなかった。外交には相手があるという現実をあまりに軽く見ていないか。

結論を先送りし、さらに日米間の交渉が長期化する可能性も大きい以上、普天間返還が「凍結」されることも覚悟する必要がある。辺野古移設とセットの海兵隊員8千人のグアム移転も進まない恐れがある。

沖縄の現実も、いっそう厳しさを増すだろう。堂々巡りのあげく、辺野古移設の受け入れに戻ろうといっても、県外移設への期待を高めた県民の反発で代替施設の建設が順調に進むとは思えない。来年1月の名護市長選や秋の沖縄県知事選で、辺野古移設反対派が当選すれば、なおさらのことだ。

鳩山首相に求めたいのは、普天間の移設をめぐるもつれを日米関係そのものが揺らぐような問題にさせないことだ。出発点は同盟の重要性を新政権として再確認することにある。

日本の安全保障にとって、米国との同盟は欠かせない柱だ。在日米軍基地は日本防衛とともに、この地域の安定を保ち、潜在的な脅威を抑止する役割を担っている。

むろん、だからといって米国の軍事的合理性だけに基づいて過重な基地負担を地元に押しつけ続けていいはずはない。最小限、どの程度の存在がどこに必要なのか、両国で協議し、納得しあわなければならない。普天間移設で問われているのは、まさにこの問題なのだ。

首相は、普天間の米海兵隊が担っている抑止力を、飛行場の返還後も何らかの形で補う必要はあると考えているのだろう。3年前の在日米軍再編をめぐる日米合意全体の見直しを目指しているのではなく、普天間の移設先だけの問題であることをはっきりさせるべきだ。

米政府がこの問題で鳩山政権への不信や戸惑いを深めているのは「鳩山政権は日米同盟を本当に大事に思っているのか」という思いがぬぐえないからだろう。

首相はかつて「常時駐留なき安保」構想を打ち出したことがある。持論の「東アジア共同体」や中国重視政策と日米の同盟関係のかかわりについても、明確な説明を欠いたままだ。

日米が連携して取り組むべき課題は、地域の平和から核不拡散、地球環境まで幅広い。米国にとっても日本との関係が揺らいではアジア政策は成り立たない。オバマ大統領は先の東京演説で日米同盟を「繁栄と安全保障の基盤」と強調した。

普天間をめぐるこじれで日米両政府の円滑な対話ができなくなっては大局を見失うことになる。

事態がここまで来た以上、決着は容易ではない。首相は現実を直視して、相互信頼の再構築を急ぐべきだ。

毎日新聞 2009年12月16日

基地移設の政府方針 普天間の永続避けよ 問われる首相の指導力

与党党首級による政府の基本政策閣僚委員会は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で、移設先を決めずに先送りし、与党3党で協議機関をつくって検討することを決めた。結論を出す時期については、平野博文官房長官が「来年5月まで」との案を示したが、社民党が反対して合意できなかった。

日米合意の沖縄県名護市辺野古への移設を含めて移設先を再検討しようというものであり、事実上の日米合意の白紙撤回ともいえる。

鳩山政権が発足してちょうど3カ月。鳩山由紀夫首相は「最後は私が決める」と繰り返してきた。ところが、移設先はおろか、結論を出す時期さえ決められなかった。事態は3カ月前とまったく変わっていない。「政府方針」と言うのも恥ずかしい肩すかしである。

首相は11月の日米首脳会談で、オバマ大統領に対して「私を信用してほしい」と言明した。その結果が、期限もつけない連立内の協議では、米側も言葉がないであろう。米政府は、辺野古への移設が唯一の実現可能な案であるとの立場を変えていない。移設が暗礁に乗り上げて普天間飛行場が現状のまま固定化されることのないよう、首相は米政府との協議に全力をあげるべきだ。

こうした事態を招いた原因は、首相のリーダーシップと、首相官邸の調整能力の欠如にある。首相はそのことを深く自覚すべきである。

今後、連立内の協議、対米交渉を進めるにあたって注文がある。

第一は、日米合意の考え方である。政権交代があれば、内政・外交ともに過去の政策を見直すのは当然であろう。しかし、相手のある外交では限界もある。今後の外交方針とは違って、すでに政府間の公式合意が存在する場合には「継続性」が重視される。さらに、日米合意については、国会が承認した「在沖縄海兵隊のグアム移転協定」で明文化されており、法的にも確定している。

常識的には、政府間合意を覆す場合、相手国が納得できる新たな案を提示する義務は、合意見直しを提案する側にある。普天間の「県外・国外移設」を強く主張する社民党も、連立政権の維持を重視する首相も、この点は理解すべきである。

普天間問題を、日米同盟全体を揺るがす発火点にしてはならない。そんな事態は、「日米同盟が日本外交の基盤」と強調する首相の本意でもないだろう。対米協議に向けて、鳩山政権はあらゆるチャンネルを使って米側に働きかける必要がある。

第二は、普天間の固定化への懸念である。普天間移設問題の原点は、市街地にある普天間飛行場の離着陸機による騒音など生活被害の解消、米軍機墜落による周辺住民の危険性の除去である。普天間所属の米軍機事故は年平均2・2件発生し、2004年には、近接する沖縄国際大学で米軍ヘリ墜落事故が起きている。隣接する小学校が、米軍機の校内墜落を想定した全校児童の避難訓練を強いられる異常事態は、一日も早く解消しなければならない。

移設の協議が長期化するなら、一部訓練の移転などその間の対策が必須となることは言うまでもない。

もともと普天間閉鎖は「時間をかけて議論するテーマ」ではない。期限を設けない連立内協議が、「危険の温存」「普天間基地の固定化」につながることを強く危惧(きぐ)する。

第三は、沖縄県全体の負担軽減である。日米合意通り、米海兵隊のグアム移転や沖縄の米軍6施設返還が実現しても、依然として在日米軍全体の施設面積の約70%が沖縄に集中し、基地の存在に伴う著しい負担を沖縄県民に強いる事態には変わりない。基地の縮小・移設を含めた負担軽減は、衆院選マニフェストで「在日米軍基地のあり方の見直し」を掲げた民主党政権の重要テーマの一つだ。首相は、普天間移設とあわせ、負担軽減策の実現に政治生命をかけて取り組むべきである。

第四は、「負担軽減」と「抑止力の維持」の両立についての議論である。日米安全保障条約に基づく在日米軍基地の存在が、北朝鮮など日本周辺の脅威に対する抑止力として機能していることは、鳩山政権も認めるところであろう。しかし、その議論が政権内で十分になされているとは言い難い。在沖米軍の主力である海兵隊の存在が抑止力維持のために必要だとの議論は、米政府よりも外務、防衛両省を中心に日本政府側に強いとの指摘もある。

海兵隊を含めた在日米軍基地の存在による抑止力の中身と、今後のあり方について鳩山政権が明確な考えを固める必要がある。そうでなければ、米側との実質的な協議は進まず、すれ違いに終わりかねない。

繰り返すが、今回の「政府方針」の内容では、何も決めなかったに等しい。このままでは連立内の協議もどこまで真剣に行われるか疑問である。少なくとも結論を得る時期を明確にしたうえで、3党間でただちに協議を開始すべきだ。鳩山首相の指導力を改めて求める。

読売新聞 2009年12月16日

普天間移設 展望なき「越年」決定は誤りだ

鳩山首相は、米軍普天間飛行場の返還を頓挫させたことで、歴史に名を残すのではないか。そんな深刻な危惧(きぐ)を抱かざるを得ない。

政府が、沖縄県の普天間飛行場の移設問題について、結論を来年以降に先送りする方針を正式決定した。移設先は、現行計画の見直しも視野に入れ、与党3党で協議していくという。

民主、社民、国民新の3党連立政権を維持するため、国益より党益を優先した結論だ。11月の日米首脳会談で合意した「迅速な結論」を一方的に反古(ほご)にするもので、長年積み上げてきた日米の信頼関係を崩壊させかねない。

米側は日本の新方針に否定的な姿勢を示しており、今後の日米交渉は難航するのが確実だ。来年の日米安保条約改定50周年に向けて同盟を深化させる協議が開始できないだけでなく、日米関係全体の停滞が懸念される。

そもそも普天間飛行場の代替施設は部隊運用上、他の海兵隊基地と近接している必要がある。このため、1996年の日米合意以来、一貫して県内移設が飛行場返還の前提条件となっていた。

この前提を見直して県外・国外移設を提起する場合、この13年間の日米の共同作業は無に帰し、返還合意さえ白紙に戻る。鳩山政権は、その重大な意味を理解し、今回の決定をしたのだろうか。

この事態を招いた最大の責任は無論、「最後は私が決める」と言いつつ、優柔不断な対応に終始してきた鳩山首相にある。

首相は、米国も沖縄も社民党も大切だとして、会談相手ごとに都合のいい発言を繰り返してきた。その結果、県外移設論が沖縄や社民党に高まり、自らの選択肢を狭めてしまった。

本人の発言も、日替わりのようにぶれ、関係者を混乱させた。首相としての資質が問われる。

問題は、移設先の決着を来年に先送りしても、何の展望も開けないことだ。県外移設は現実的な候補が見当たらない。一から具体案を検討し、米国と沖縄と移設先の同意を得るのは極めて困難で、膨大な時間と労力を要しよう。

それでも、鳩山首相は、現行計画以外の案を模索する考えを表明した。現行計画の実施費を来年度予算案に計上する、という政府方針と明らかに矛盾する。

首相発言が新たな混乱を引き起こすのは避けられまい。首相は本当に、日米同盟を堅持しつつ沖縄の負担軽減を実現したいのか、重大な疑問が残る。

産経新聞 2009年12月16日

普天間問題 迷走のあげ句先送りとは

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設問題で、政府がまとめた新たな方針は、日米合意に基づくキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)に代わる新たな移転先を明示するものではなかった。当初は最終決着の期限を5月にする考えだったようだが、社民党の反対で決まらなかった。

鳩山政権発足以来、3カ月を迎えるのに、この問題で鳩山由紀夫首相は迷走し続け、結局、結論を先送りしたにすぎない。日米関係を傷つけ、危機的な状況にまで追い込んでいる。その責任はきわめて大きいのに、自覚すらしていないようにみえる。無責任としかいいようがない。

米側は日米合意が「唯一、実現可能な案」との立場を崩しておらず、18日までの回答を日本に求めていた。しかも、今後の調整を与党の実務者に委ねることを盛り込んだことで、この問題の早期決着に反対してきた社民、国民新の両党の意向がより強く反映される可能性が高い。

この結果、日米間の亀裂が拡大しているのに、こうした対応で日米関係が危機に陥る心配はないと、鳩山首相は判断しているのだろうか。日米合意の白紙化、さらに日米同盟の空洞化を避けるため、なお早期決着の道を探るべきである。

この問題がトゲとなって、さきの日米首脳会談で合意した「日米同盟深化に向けた政府間協議」は開始できない状態にある。来年の安全保障条約改定50周年に合わせ、両国の基盤を話し合う機会を失うことになれば、日米関係は致命的な打撃を受ける。

日本が米国から「核の傘」を含む抑止力の提供を受けていることを忘れてはならない。インド洋での海上自衛隊による補給支援は、来年1月で終了する。日本によるテロとの戦いの継続を強く求めていた米側は失望している。

信頼関係を失えば、米側から伝えられる安全保障に関する情報も限られたものになる。同盟の空洞化がそうした形で具体化すれば日本の抑止力を低下させ、結果的に国民の生命・財産を危うくする。安全保障よりも、政党の都合や連立重視が優先されるのでは、国家としての責務を果たせない。

現行計画は関連経費が来年度予算に計上され、選択肢として残っている。首相は決着をさらに長期化させそうな与党内協議に委ねず、自ら打開すべきである。

毎日新聞 2009年12月16日

基地移設の政府方針 普天間の永続避けよ、問われる首相の指導力

与党党首級による政府の基本政策閣僚委員会は、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で、移設先を決めずに先送りし、与党3党で協議機関をつくって検討することを決めた。結論を出す時期については、平野博文官房長官が「来年5月まで」との案を示したが、社民党が反対して合意できなかった。

日米合意の沖縄県名護市辺野古への移設を含めて移設先を再検討しようというものであり、事実上の日米合意の白紙撤回ともいえる。

鳩山政権が発足してちょうど3カ月。鳩山由紀夫首相は「最後は私が決める」と繰り返してきた。ところが、移設先はおろか、結論を出す時期さえ決められなかった。事態は3カ月前とまったく変わっていない。「政府方針」と言うのも恥ずかしい肩すかしである。

首相は11月の日米首脳会談で、オバマ大統領に対して「私を信用してほしい」と言明した。その結果が、期限もつけない連立内の協議では、米側も言葉がないであろう。米政府は、辺野古への移設が唯一の実現可能な案であるとの立場を変えていない。移設が暗礁に乗り上げて普天間飛行場が現状のまま固定化されることのないよう、首相は米政府との協議に全力をあげるべきだ。

こうした事態を招いた原因は、首相のリーダーシップと、首相官邸の調整能力の欠如にある。首相はそのことを深く自覚すべきである。

今後、連立内の協議、対米交渉を進めるにあたって注文がある。

第一は、日米合意の考え方である。政権交代があれば、内政・外交ともに過去の政策を見直すのは当然であろう。しかし、相手のある外交では限界もある。今後の外交方針とは違って、すでに政府間の公式合意が存在する場合には「継続性」が重視される。さらに、日米合意については、国会が承認した「在沖縄海兵隊のグアム移転協定」で明文化されており、法的にも確定している。

常識的には、政府間合意を覆す場合、相手国が納得できる新たな案を提示する義務は、合意見直しを提案する側にある。普天間の「県外・国外移設」を強く主張する社民党も、連立政権の維持を重視する首相も、この点は理解すべきである。

普天間問題を、日米同盟全体を揺るがす発火点にしてはならない。そんな事態は、「日米同盟が日本外交の基盤」と強調する首相の本意でもないだろう。対米協議に向けて、鳩山政権はあらゆるチャンネルを使って米側に働きかける必要がある。

第二は、普天間の固定化への懸念である。普天間移設問題の原点は、市街地にある普天間飛行場の離着陸機による騒音など生活被害の解消、米軍機墜落による周辺住民の危険性の除去である。普天間所属の米軍機事故は年平均2・2件発生し、2004年には、近接する沖縄国際大学で米軍ヘリ墜落事故が起きている。隣接する小学校が、米軍機の校内墜落を想定した全校児童の避難訓練を強いられる異常事態は、一日も早く解消しなければならない。

移設の協議が長期化するなら、一部訓練の移転などその間の対策が必須となることは言うまでもない。

もともと普天間閉鎖は「時間をかけて議論するテーマ」ではない。期限を設けない連立内協議が、「危険の温存」「普天間基地の固定化」につながることを強く危惧(きぐ)する。

第三は、沖縄県全体の負担軽減である。日米合意通り、米海兵隊のグアム移転や沖縄の米軍6施設返還が実現しても、依然として在日米軍全体の施設面積の約70%が沖縄に集中し、基地の存在に伴う著しい負担を沖縄県民に強いる事態には変わりない。基地の縮小・移設を含めた負担軽減は、衆院選マニフェストで「在日米軍基地のあり方の見直し」を掲げた民主党政権の重要テーマの一つだ。首相は、普天間移設とあわせ、負担軽減策の実現に政治生命をかけて取り組むべきである。

第四は、「負担軽減」と「抑止力の維持」の両立についての議論である。日米安全保障条約に基づく在日米軍基地の存在が、北朝鮮など日本周辺の脅威に対する抑止力として機能していることは、鳩山政権も認めるところであろう。しかし、その議論が政権内で十分になされているとは言い難い。在沖米軍の主力である海兵隊の存在が抑止力維持のために必要だとの議論は、米政府よりも外務、防衛両省を中心に日本政府側に強いとの指摘もある。

海兵隊を含めた在日米軍基地の存在による抑止力の中身と、今後のあり方について鳩山政権が明確な考えを固める必要がある。そうでなければ、米側との実質的な協議は進まず、すれ違いに終わりかねない。

繰り返すが、今回の「政府方針」の内容では、何も決めなかったに等しい。このままでは連立内の協議もどこまで真剣に行われるか疑問である。少なくとも結論を得る時期を明確にしたうえで、3党間でただちに協議を開始すべきだ。鳩山首相の指導力を改めて求める。

読売新聞 2009年12月13日

連立党首会談 首相は小党に振り回されるな

社民党、国民新党との連立は本来、民主党にとって政権の安定が目的だったはずだ。

それなのに現実は、3党連立を組んでいるせいで政権運営が混乱し、内政・外交とも危機的状況に陥っている。

こんな本末転倒の話はない。

鳩山首相が社民党党首の福島消費者相、国民新党代表の亀井金融相と会談し、米海兵隊普天間飛行場移設問題の解決に向け、3党で協議していくことを確認した。

首相は会談で、「具体的方針が出るのはだいぶ先になる」との見通しを示したという。

だが、米国は現行計画での年内決着を強く求めている。社民党は総選挙で在沖縄米軍基地の縮小・撤去を掲げた党だ。双方とも納得する妙案などあるはずがない。

鳩山首相は先月、来日したオバマ米大統領に対して「迅速に結論を出す」と約束し、「私を信じてほしい」と言った。

その言葉の重みを思えば、社民党の理解が得られなくても、現行計画で早期決着を図るしか道はないはずだ。社民党が連立離脱をほのめかせば、自民、公明両党に協力を仰ぐ選択肢もありえよう。

ところが、首相はむしろ社民党に配慮する姿勢を強めている。社民党は首相の姿勢に乗じ、米側が容認するはずもない普天間飛行場のグアム移転まで唱え始めた。

首相がその時々で相手に期待を持たせる発言をした結果、米国で日本との橋渡し役を果たしてきた知日派まで「ハトヤマは信頼できない」と批判を強めている。

経済問題では、国民新党が積極財政出動の持論を押し通す場面が目立っている。

今年度の第2次補正予算編成では、亀井氏と菅国家戦略相が激しく火花を散らした。財政規律を優先して歳出規模を抑えたい菅氏らに対し、亀井氏が歳出の大幅な積み増しを求め、基本政策閣僚委員会を欠席した。

このため、緊急経済対策の決定がずれ込む騒ぎになった。

来年度予算についても、国民新党は歳出増を求めており、第2次補正予算と同じことが繰り返されれば、鳩山内閣が目指す年内編成が危うくなりかねない。

日本の政治は1990年代から連立政権が常態化しているが、ここまで少数党に振り回されている政権は例がない。

3党連立とはいえ、国の最高指導者は鳩山首相だ。首相はそのことを強く自覚し、早急に態勢の立て直しを図る必要がある。もはや八方美人では済まされない。

産経新聞 2009年12月13日

連立政権 日本の「危機」放置するな

鳩山由紀夫首相は11日夜、福島瑞穂社民党党首、亀井静香国民新党代表と会談した。焦点の米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題に対し、「3党でしっかり協議していく」ことを申し合わせた。具体性のない合意にとどまり、明確な対処方針が示されなかったのは残念だ。

連立政権を構成する3党首がいま見据えるべきは、日米関係の危機的な事態だろう。

移設問題に関する日米首脳会談は米側から拒否され、18日までに日本政府の結論を出すよう求められた。関係悪化は日米関係全般に及んでいる。日本の安全ひとつとっても、米軍の抑止力がなければ国民の安寧は保たれない。

こうした状況をどう打開するかこそ、3党首が決めるべきことなのだ。だが、危機感を共有しているようにはみえない。

これは連立政権が国益を重視する合意に基づいていないためだろう。民主党内ですら安全保障などの基本政策がまとまっていない。論議を避けてきたツケともいえる。結局、できるだけ長く政権を維持し、自らの勢力を拡大することに主眼が置かれているといわれても仕方あるまい。

社民、国民新の両党は日米合意に基づくキャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)への移設方針や、早期決着そのものに反対している。政府内に新たな作業チームを設ける案も浮上しているが、問題を先送りし、長期化させるのが狙いなのだろう。

首相もこれらを理由にして判断を遅らせるほうが得策と考えているようだ。党首会談に先立ち「日米合意そのままで行きましょうで済むなら簡単だが、そのような状況ではない」と語った。最高責任者が政府間合意を尊重して問題を解決する姿勢をみせないことを強く憂慮する。

亀井氏は第2次補正予算の規模で菅直人副総理・国家戦略担当相と激しく対立した。積極的な財政支出を唱え、政権内の財政規律論を打ち消している。経済対策の方針がはっきりしないことが国民の不安を強めている。

勢力比では社民、国民新党合わせて20議席で民主党の20分の1以下である。首相は自らの指導力不足が「連立離脱」の恫喝(どうかつ)を許し、政権構造のゆがみを増幅させていることを直視すべきだ。政治を漂流させ、国益を損なう事態をこれ以上、放置してはなるまい。

毎日新聞 2009年12月11日

きしむ連立 意思示さぬ首相に責任

数のうえでは圧倒的に少数の社民党と国民新党が持論を強く主張し、これに民主党が振り回される。そして民主党内には不満ばかりが募っていく。鳩山政権発足以来、まだ3カ月もたたないのに、連立与党3党の関係がぎくしゃくしてきた。

鳩山由紀夫首相が11日、社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相、国民新党代表の亀井静香金融・郵政担当相と会談するのは、こんな悪循環を打開するためだろう。だが、社民、国民新両党が強気に出るのは首相側にも大きな責任がある。内政、外交双方で鳩山首相の明確な意思が見えないからだ。

09年度2次補正予算の規模が約7・2兆円に膨れあがったのは、亀井氏が再三予算増額を求めたためだった。しかも、亀井氏は当初、補正予算を決める予定だった4日の会合を欠席し、決定はずれ込んだ。

8日には菅直人国家戦略担当相が亀井氏を「なぜ、出てこない」となじり、20分間も口論が続いたという。首相が説明したような「政策論争」ではなかったのは明らかで、連立運営がスムーズにいかない姿を見せつけるだけだった。

米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題では福島氏が連立離脱もちらつかせて同県名護市辺野古に移設する現行計画に反対した。福島氏が近く沖縄を訪問する一方、社民党議員が訪米し、米議会に直接働きかけることも検討している。

それぞれ、党の主張があるのは当然だ。ただし、社民、国民新党ともに来夏の参院選を意識し、存在感をアピールするのが主眼となっていないか。先の総選挙結果を見れば、多くの有権者が支持したのは民主党だ。社民、国民新両党には一定の節度が必要で、11日の党首会談では改めてその原則を確認すべきだろう。

それにしても頼りないのは鳩山首相ではないか。首相は「連立の維持が政権安定につながる」と繰り返すだけで、例えば補正予算では財政危機に対して今後、どんな方針で臨むのか、基本的な考えを明らかにしなかった。そんな首相の姿勢を見越してか、亀井氏は新年度予算でも規模縮小に反対する構えだ。

一方の普天間問題では社民党が連立離脱の可能性を示唆したことが、首相にとってかえって「渡りに船」だったようにも思える。首相は現行の辺野古以外に代替地を探すよう求めているが、残念ながら展望が開けているようには見えない。「連立維持のため」というのは、実は首相自身が結論を先送りする格好の口実となったのではないかということだ。

もはや八方美人ではいられない。首相が強い指導力を見せないと乗り切れない年末がやってきた。

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