核廃棄をめぐる協議の再開につながると見るのは早計に過ぎよう。対話攻勢を強めている北朝鮮の真意を、慎重に見極めなければなるまい。
離散家族の再会実現に向けた南北赤十字会談が、北朝鮮の金剛山で始まる。韓国側の開催提案に北朝鮮がこたえた。昨年2月に李明博・韓国政権が発足して以来、初めての赤十字会談である。
北朝鮮は、保守政権の李大統領を「逆徒」などと誹謗し、一切の対話を拒んできた。今回の赤十字会談を機に、韓国との政府間対話や、核廃棄に向けた6か国協議の復帰に動くのか。今後の北朝鮮の態度を注視する必要がある。
8月に入り、北朝鮮はそれまでの強硬姿勢から一転して、対話姿勢に出ている。
金正日総書記が、2人の米女性記者の解放を求めて訪朝したクリントン元米大統領と会談し、解放を命じた。続いて、韓国の現代グループ会長が訪朝したのを機に、拘束していた韓国人社員の解放や観光事業再開などを発表した。
金大中元大統領の死去も、北朝鮮の対南“接近”に大きな弾みをつけた。異例の弔問団を派遣し、李大統領との会談では、関係を改善したいという金総書記からのメッセージを伝えたという。
普段の敵対的な態度から手のひらを返したような変貌ぶりだ。
北朝鮮が下手に出てきたのは、国連安全保障理事会の制裁が効いた結果でもあろう。ミサイルや核開発につながる懸念のあるカネ、モノ、人の出入りを遮断され、窮したあげく「人道的な支援」を韓国に期待しているフシがある。
李大統領は、北朝鮮の弔問団に韓国の「一貫した確固たる政策の原則」を説明し、金総書記への伝達を要請したという。大規模な支援実施は北朝鮮の核放棄が前提、という立場は堅持した形だ。
北朝鮮は、6か国協議をボイコットすることで、その共同声明で自ら宣言した「核放棄」の約束を反故にしようとしている。
国際社会は、核保有の既成事実化を決して許さぬよう、厳しく対処すべきだ。北朝鮮が核放棄へ具体的な措置をとるまで、圧力は緩めてはならない。
韓国には、北朝鮮を政府間対話に引き出す狙いから、金剛山観光の再開問題をテコに使う思惑があるようだ。米国も、「安保理制裁決議には抵触しない」として容認する見解を初めて表明した。
だが、核やミサイル開発の貴重な資金源になりかねない。実施に際しては慎重な対処が必要だ。
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