ケネディ大使 新たな日米関係を構築したい

朝日新聞 2013年08月14日

ケネディ大使 日米に新たな息吹を

「米国と日本の関係は、例外なく、世界でもっとも大切な二国間関係である」

そう断じたのは、1988年までの11年余り、駐日大使として最長の任期を務めたマイク・マンスフィールド氏である。

大使になる前は、議会上院で民主党の最高幹部として16年間も率いた重鎮だった。

その後も、モンデール元副大統領、フォーリー元下院議長らが続いた。米駐日大使のポストは常に名誉ある重職である。

その次期大使に、オバマ大統領はキャロライン・ケネディ氏(55)を指名した。故ケネディ大統領の長女である。

暗殺の悲劇をくぐった名家の少女として知名度は抜群だ。ただ、詩集などの著述業や、ケネディ記念図書館館長などの肩書はあるが、政治経験はない。

そのため一部で不安がる声もある。日中の摩擦や経済問題などに対処できるのか、と。

だが、実はこの時代だからこそ、適した人選といえるのではないか。

日本研究の大家であるハーバード大学のボーゲル博士も、指名を支持する一人だ。

博士いわく、今の日米には、ライシャワー大使時代のような安保闘争の混乱も、マンスフィールド時代のような貿易戦争もない。米政財界は中国ブームに染まり、日本への関心が薄れている。米国の目を日本に引き寄せ、広い交流を促す魅力のある大使こそふさわしい――。

最近の世論調査によると、日米はともに80%超が相手に親近感を抱いている。政治や経済で折々の問題はあっても、スポーツ、文化、学界を含む結びつきは固く、広い。両国の絆の主役は今や広範な市民なのだ。

大使の資格を、政治経験に狭く限る理由はない。各論には専門の官僚がいる。むしろ、大局的な協調の価値に光を当て、活力を吹き込む。それが日米成熟時代の新たな大使像であろう。

今週離任したジョン・ルース前大使も政治は未経験の弁護士ながら、震災支援に奔走し、広島・長崎の原爆式典に米大使として初めて参列するなどの足跡を刻んだ。

ケネディ氏は政治に無縁だったわけではない。オバマ政権を生んだ08年の選挙に向け、「私の父のような大統領になれる」と支援の先陣を切り、時代の風を読む才をみせた。

日米間の多岐にわたる課題を新鮮な目で見すえ、率直な意見を聞かせてほしい。芸術や市民運動なども含め、父譲りのリベラルな発想で、新たな交流の地平を切り開いてもらいたい。

読売新聞 2013年08月11日

ケネディ大使 新たな日米関係を構築したい

オバマ米政権が日本を重視する姿勢の表れとして、歓迎したい。より成熟した日米関係を構築する一歩とすべきだ。

オバマ大統領が、駐日大使にケネディ元大統領の長女の弁護士、キャロライン・ケネディ氏(55)を指名した。女性の駐日大使は初めてで、上院の承認を得て、今秋にも着任する。

ケネディ氏は米国屈指の名門の出身だ。2008年大統領選では早々とオバマ氏を支持し、オバマ氏が民主党候補に選出される流れを作った。12年の大統領再選にも貢献した。オバマ政権に目立つ論功行賞による政治任命である。

米国の歴代の駐日大使には、マンスフィールド氏ら大物政治家、ライシャワー氏のような学者、アマコスト氏ら外交官など、様々な経歴の人物が起用されてきた。

最近は、シーファー、ルース両氏のように、大統領との強い個人的関係に基づく人選が続いた。ケネディ氏もこの系統と言える。

ケネディ氏は外交や政治の経験がなく、大使としての手腕は未知数だ。一方で、オバマ大統領と太いパイプを持ち、ケリー国務長官とも親しいことが強みである。

大物の駐日大使に期待されるのは、日米関係が重大な局面を迎えた際、電話一本で大統領と直接連絡を取り、問題解決の道を探ることだ。その意味で、ケネディ氏は重要な“武器”を備えている。

ケネディ氏のもう一つの長所は抜群の知名度と人気だ。安定した日米関係の象徴的存在として、相手国に対する両国民の関心を高める役割が求められよう。

日米両国は現在、様々な重要課題に直面している。

経済、軍事両面で台頭する中国や、核開発を進める北朝鮮に、どう向き合うか。米軍普天間飛行場の移設問題や日米防衛協力をいかに進めるか。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉などでアジアの自由貿易をどう推進するか。

こうした難題の解決には、首脳級を含む、政府間の関係強化が欠かせない。ケネディ氏には、その一翼を担ってもらいたい。

近年は、米国への日本人留学生が減少し、出身国別で7位に低下するなど、日米交流の先細りが懸念されている。中国や韓国が米国での情報発信や交流拡大に努める中、日本の存在感が薄れることは、国益にも悪影響を与えよう。

次代を担う青少年などの草の根交流の拡充は、日米の相互理解と信頼醸成を進める基盤となる。この分野でも、発信力の高いケネディ氏の貢献に期待したい。

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