経済の本格回復 設備投資がカギになる

朝日新聞 2013年08月13日

景気と消費税 やるべきことを着実に

今年4~6月期の国内総生産(GDP)の伸び率は、物価の影響を除いた実質で年率2・6%となった。先進国のなかでは高い成長率だ。

個人消費は、株高や猛暑に伴う押し上げ効果もあって堅調だった。円安を受けて輸出もプラス成長に貢献した。

一方、企業の設備投資はマイナスが続く。従業員が得る報酬総額は伸びたが、働く人の総数が増えた影響が大きく、1人あたりの給与は低迷している。

企業が収益改善を追い風に投資を増やし、競争力を高める。雇用や賃金も増やして家計を支え、それが企業の収益に返ってくる――。そんな民間主導の好循環を軌道に乗せるうえで、政府と企業の役割が改めて明確になったのではないか。

政府は、成長戦略の具体化と補強を急ぐ必要がある。柱となる「産業競争力強化法」は、企業の投資を促す税制優遇が中心になりそうだが、新たな分野への参入を促す規制改革や、起業を活発にする環境整備など、課題は少なくない。

企業にも訴えたい。設備や研究開発への投資を怠れば、国際競争に後れをとる一方だ。従業員の賃金を抑えるばかりでは、自らの市場も広がらない。

経済界は法人減税などを求めるが、すでに多額の資金をため込んでいる企業が少なくない。

4~6月期の経済成長率は、来春から予定される消費増税を政府が最終決断する際の有力な指標だ。増税の見極めに慎重な安倍首相は、今回の成長率について「順調に景気は上がってきている」としつつも、なお状況を注視する構えを崩さない。

忘れてならないのは、財政再建への姿勢がゆらいだ際に予想される悪影響である。

日本銀行の黒田総裁は「脱デフレと消費増税は両立する」と強調し、予定通りの増税を促した。日銀は「異次元」の金融緩和の柱として国債を市場で大量に買っている。

これが財政赤字の穴埋めと見られ、国債価格の急落(利回りの急騰)を招けば、デフレ脱却も経済成長も幻となる。

今後、今年度の補正予算や来年度予算をめぐり、景気対策として公共事業の上積みを求める声も強まるだろう。

だが、昨年度の補正予算での大幅な公共事業の追加には「誤算」も生じている。人件費や資材が高騰し、効果がそがれているからだ。

公共事業を膨らませる余裕は財政にはないし、足元の景気にもプラスばかりとは限らない。肝に銘じてほしい。

毎日新聞 2013年08月13日

経済の本格回復 設備投資がカギになる

内閣府が発表した今年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、実質GDP成長率が年率換算で前期比2.6%だった。3四半期連続のプラスで、日本経済が順調に回復していることを示した。ただ、設備投資は6四半期連続のマイナスで、景気が本格的な回復局面に入ったとは言えない。円安・株高で企業は好調な業績を維持しており、投資に踏み切るタイミングをはかってほしい。

GDPが好調なのは個人消費が堅調で、円安で輸出が押し上げられていることも大きい。2012年度補正予算に盛り込まれた公共事業の執行も本格化してきた。

SMBC日興証券が東証1部上場企業の4~6月期決算を集計したところ、売上高は前年同期比約8%増、経常利益は約50%増だった。円安で潤う輸出企業や、証券、銀行を中心に、企業の収益は絶好調だ。

ところが4~6月期の設備投資は0.1%減だった。中国経済の減速や、米国の金融緩和縮小にからみ市場が不安定化するなど海外のリスク要因もあるが、何より、国内で売り上げを膨らませる見通しが立っていないのが原因だ。

日本政策投資銀行の大企業の設備投資計画調査で、今年度の計画は前年度の実績に比べ10%増加を見込んでいる。昨年度の調査でも計画は12%だったが実績は3%弱にとどまった。ただ、今年度の場合、利益は十分にあがっている。それを投資に回さなければ景気回復の歯車は力強さを増さない。政府は秋の臨時国会で企業向けの投資減税などに取り組むが、規制改革も含め、企業の需要を底上げする政策が必要となる。

個人消費は高額品や外食が好調だが、内閣府の調査では消費者の購買意欲を示す消費者態度指数は悪化している。大企業を中心にボーナスは上向いているが、毎月の給料は上がっていない。一方で、円安などを背景に食品やガソリンなど生活必需品が値上がりしていることが影響しているとみられる。

とはいえ、年率2.6%増というのは堅調な数字だ。これは安倍晋三首相が、来年4月に消費税を8%に引き上げるかどうかを判断する際の重要な材料になる。9月9日に公表される改定値で設備投資などの新たな数値が盛り込まれて修正されるが、消費増税に進む経済的な基盤は固まりつつあるように見える。

ただ、最終判断に向けては賃金の上昇や家計への打撃なども考慮する必要がある。安倍首相の指示で今月下旬に有識者会合が開かれ、専門家ら50人程度から経済に与える影響について幅広く意見を聞く。会合の内容を国民全体で共有し、納得できる議論を進めてほしい。

産経新聞 2013年08月13日

GDPと消費税 首相は複合的な視点もて

3四半期連続のプラス成長は、アベノミクスへの期待感が浸透してきた証左だといえよう。

安倍晋三首相が来年4月の消費税増税を判断する重要な材料となる4~6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、2・6%増となった。政府の成長率目標は今後10年平均で2%だ。それを上回る結果を前向きに捉えたい。

安倍政権は、景気回復の足取りをより確かなものとする政策を今後も強力に推進してほしい。

問題は2・6%増という水準をどう見るかだ。3%台が多かった民間の事前予想よりは低かった。増税を決断するには、低すぎるという見方も出てこよう。

首相が増税による景気の腰折れを心配することはよくわかる。ただ、少子高齢化が進む中で社会保障費の安定財源を確保することは、絶対に欠かせない。

財政健全化は日本が世界に果たすべき責務でもある。それを踏まえ、首相は増税のリスクがどれほどあるかを冷静に見極め、最終判断を示さなければならない。

4~6月期は、米国の量的金融緩和が縮小するとの観測をきっかけに世界の金融市場が混乱し、日本では株価や為替、長期金利が乱高下した。安倍政権発足後、急速に膨らんだ景気回復への期待感に陰りが出た時期でもある。

それでも、高額品を中心とした消費は堅調で、円高修正を背景に輸出もGDPを押し上げた点は心強い。アベノミクスの2本目の矢である財政出動で公共事業が増えたことも成長を支えた。

懸念すべきは設備投資のマイナスだ。日本政策投資銀行がまとめた平成25年度の大企業の設備投資計画は、前年度実績より10%以上増加していたが、足元で慎重姿勢が根強いことを裏付けた。政府は設備投資減税などの導入を検討している。企業の投資意欲を高める取り組みを急いでほしい。

景気回復局面では、経済指標にもばらつきが出る。足元では企業業績が上向き、消費者物価指数や完全失業率が改善する一方、所定内給与はマイナスのままだ。

9月にはGDP改定値も公表されるが、消費税の増税が景気に与える影響を判断するには、物価や雇用、所得、消費など、さまざまな指標の変化を評価しなければならない。中国経済の減速などにも留意が必要だ。首相には複合的な視点が求められている。

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