中部電力の越境 地域独占崩す第一歩に

朝日新聞 2013年08月11日

電力自由化 本当の競争のためには

中部電力が東京電力の管内で企業向けに電力を販売する。三菱商事傘下のダイヤモンドパワー(東京都)を買収し、今秋にも首都圏市場に参入する。

企業など大口向けの電力販売は2000年に自由化されている。電力会社は地域に関係なく販売することが可能になっていたのに、相互乗り入れはまったく進まなかった。

どの大手電力も、他の地域に攻め込むよりは自分の地盤を守り、業界秩序を維持したほうが得策と考えてきたからだ。

その一角を占めてきた中部電力が、みずから殻を破る。震災後の大きな環境変化や今後の電力改革をにらんだ経営判断を、歓迎する。同様の動きが広がることを期待したい。

ただ、今回は特殊な事情がある。東電は原発事故を抱えて経営難に陥り、いまや自前では電力供給すらおぼつかない状況にある。

そうしたなかでの中部電の参入は、「助け合い」の側面がないとはいえない。

料金体系やサービスなど、本当に消費者の選択肢が増えるような競争になっているか。注視が必要だ。既存の大手電力同士が手を組んで、新電力を締め出すようなことがあっては本末転倒である。

電力改革の成否は、なにより新興勢力を育てられるかどうかにかかっている。

原発の停止に伴って大手の値上げが相次ぐなか、新電力との契約を希望する企業は増えているが、新電力側は必要な電力量を調達できていない。

大きな発電所や自治体が所有する水力発電は大手電力が抱え込んでいるからだ。電力需給が逼迫(ひっぱく)ぎみなこともあって、卸売市場もなかなか活性化しない。

こうした課題を克服し、競争を促していくためには、必要な措置を命じる権限をもった規制機関が必要だ。

先の通常国会に提出された電力システム改革法案にも、発送電の分離とともに、そうした新機関を15年をめどに設立することが盛り込まれていた。

政局の混乱に巻き込まれて廃案になってしまったが、もともと民主党政権時に骨格をつくった法案でもある。与野党で協力し、次の国会で成立させることが不可欠だ。

新機関発足までの間、同様の役割を担うワーキンググループが今月、初会合を開いた。

電力事業者らからデータを提出させたりして公正な競争市場の育成を監視する。現行法の枠組みでできる最大限の競争促進を担ってほしい。

毎日新聞 2013年08月08日

中部電力の越境 地域独占崩す第一歩に

中部電力が、三菱商事子会社の電力小売事業者「ダイヤモンドパワー」を買収し、首都圏での電力小売りに参入することになった。地域独占を守り続けてきた電力大手間で、垣根を越えた競争が始まる第一歩として期待したい。

政府は、先の通常国会で廃案になった電力自由化に関する法案の早期成立を目指し、競争環境の整備に努める必要がある。

中部電は、10月にダイヤ社株式の8割を買い取る。同社は「特定規模電気事業者(新電力)」と呼ばれ、企業の自家発電設備などから余剰電力を仕入れ、工場、商業ビルなどに販売している。

電力の小売りは2000年に大規模事業所向けが自由化されて以降、順次対象が拡大され、05年には家庭向けなどの小口を除き、総電力量の約6割が自由化された。

ところが、新電力のシェアは12年度で3.5%にとどまっている。大手の地域の垣根を越えた取引は、九州電力が中国電力管内のショッピングセンターに販売する1件しかなく、事実上強固な地域独占体制が維持されてきた。これでは、競争原理は働かず、電気料金の抑制もサービスの多様化も望めない。

一方で東日本大震災以降、電力大手の相次ぐ値上げで、国民の不満は高まっている。競争を促す電力制度改革が求められるわけだ。

中部電は東京電力に比べ原発依存度が低い。原発停止に伴う発電コストの積み増しが少ないため、値上げもしていない。東電管内は今後も料金高止まりが予想されるため、中部電が価格差を生かして参入すれば、利用者のメリットも大きいはずだ。

もっとも、中部電と東電の管内は電気の周波数が違う。現状では首都圏に十分な電力を供給できる余力があるわけではない。一気に本格的な競争を起こすのは難しい。

それでも、ダイヤ社は東京・丸の内のオフィスビルなど優良顧客を多く抱えるため、電力業界に与える衝撃は大きい。さらに中部電は、東電と共同で茨城県内に石炭火力発電所を新設するほか、静岡県内にも三菱商事などと石炭火力発電所を建設し、ダイヤ社に供給する計画を立てている。供給力が高まれば、競争も促進されるだろう。

大手が値上げしたことで、価格競争力を高めた新電力も勢いを増し、東電管内では会社新設も目立ってきた。芽生え始めた競争を大きく育てるためには、公正な条件を整える電力制度改革が欠かせない。

国民が自由化のメリットを受けられるよう、政府は改革の工程を盛り込んだ電気事業法改正案の早期成立を図り、競争を後押しすべきだ。

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