中期財政計画 歳出と歳入改革で再建を図れ

毎日新聞 2013年08月10日

中期財政計画 歳出削減の道筋見えぬ

政府は中期的な財政運営の展望を示す中期財政計画を閣議了解した。内容を見ると、これまでの財政健全化目標を繰り返し示しただけで、目標をどうやって達成するかの具体策は盛り込まれなかった。安倍晋三首相が目指した「信頼に足る財政計画」とはとても言えない。

財政健全化目標は、国と地方の基礎的財政収支の赤字を2015年度までに10年度に比べ半減させ、20年度までにゼロにするというものだ。年金給付や公共事業といった政策にかかる経費は借金(国債)に頼らず、税収で賄うという考え方である。中期財政計画では、赤字半減に向け、14、15年度に国の一般会計で4兆円ずつ収支を改善し、新規国債発行額は前年度以下にするよう最大限努力すると説明した。

安倍政権は、消費増税の最終判断を10月ごろに行うとしており、中期財政計画では触れられなかった。財政再建には増税だけでなく歳出削減が重要だが、その具体策は「大胆なスクラップ・アンド・ビルドを行うことによりメリハリをつける」など抽象的な表現にとどまった。

社会保障、社会資本整備、地方財政の3分野の歳出は重点化、効率化すると強調したが、これは6月に政府がまとめた骨太の方針の要約にすぎない。年金、医療などの社会保障費は高齢化で毎年約1兆円ずつ膨らむ。このため、社会保障制度改革国民会議が、所得の高い高齢者の負担増など歳出抑制策を盛り込んだ報告書をまとめた。ところが中期財政計画はそれには触れず、「制度改革を含めた歳出・歳入両面の取り組みによって財源確保を検討する」と漠然と指摘しただけだ。

政府が併せて閣議了解した14年度予算の概算要求基準でも、歳出の上限が盛り込まれず、成長戦略や防災、地域活性化など幅広い分野で上乗せ要望を認め、「優先課題推進枠」として重点配分することを決めた。自民党内の予算要求圧力に、どれだけ優先順位をつけ、メリハリの利いた対応ができるか未知数だ。

安倍首相は9月上旬にロシアで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議で中期財政計画を示し、財政再建の道筋を説明する。アベノミクスによる異次元の金融緩和の副作用として長期金利が不安定化し、国債暴落のリスクが高まって、世界経済の不安要因になっている。先進国のなかでも最悪の状況にある日本の財政がその背景にあり、ドイツなどから厳しい目が向けられている。

政府は中期財政計画の策定で「国民の安心や国際社会、市場からの信認を確かなものとする」と説明してきた。だが、これでは十分な信認を得るのは難しい。

読売新聞 2013年08月09日

中期財政計画 歳出と歳入改革で再建を図れ

日本経済再生に向け、財政健全化は待ったなしだ。メリハリの利いた2014年度予算案を編成するとともに、中長期的な再建の道筋も描かなければならない。

政府は8日の閣議で、今後の財政運営の指針となる中期財政計画と14年度予算案の大枠を示す概算要求基準を了解した。閣議決定を見送り、歳出の上限額を明記しなかったのも異例と言える。

安倍首相が秋に、来年4月の消費税率引き上げを最終判断することから、税収の見通しを現時点では確定できなかったためだ。

景気は回復基調にあるが、デフレ脱却のめどは立っていない。海外経済の動向など、不安要因も多い。首相が慎重に判断するのは、もっともである。

問題は、税収の見通しが立たないとしても、中期計画と要求基準の歳出への切り込みがいずれも甘い点だ。首相は「信頼に足る計画を策定し、予算の大胆な効率化を図る」としたが、財政規律を十分に重視したとは言い難い。

概算要求基準は、公共事業など裁量的経費を13年度当初予算から約10%削減する一方で、成長戦略などの予算要求について、3・6兆円程度の特別枠で別途に認める方針を示した。

「優先課題」という名目で特別枠に要求が殺到し、予算規模が最終的に膨らむ懸念がある。

歳出膨張に歯止めをかけないと限られた財源では対応できない。政策効果の乏しい事業がないか、厳しく精査すべきだ。

中期計画も、最大の歳出項目である社会保障費に関する記述を後発医薬品の活用など課題の列挙にとどめ、削減の規模や方法といった具体策の言及を避けた。社会保障で痛みを伴う改革を進められなければ、財政再建は難しい。

計画は、国と地方の基礎的財政収支の赤字を10年度の国内総生産(GDP)比(6・6%)から15年度に半減し、20年度に黒字化するという目標も改めて掲げた。

ただ、黒字目標の実現には約34兆円の収支改善が必要となる。極めて険しい道のりである。

首相は9月にロシアで開かれる主要20か国・地域首脳会議(サミット)で中期計画を説明し、目標達成への決意を示す。

日本の最重要課題が、デフレ脱却であると強調するとともに、歳出と歳入両面の改革で、財政再建と安定成長を図る考えを明示すべきだ。規制改革で市場を開拓して新規産業を興すなど、成長戦略の実現も急がねばならない。

産経新聞 2013年08月10日

中期財政計画 収支改善への道筋見えぬ

財政の立て直しは、デフレからの脱却と並び、安倍晋三政権が取り組むべき最重要課題だ。

中期財政計画と平成26年度予算の概算要求基準の策定は、その姿勢を示す機会となるはずだったが、歳出削減の具体策に踏み込めず、本来あるべき歳出総額の上限すら示せなかった。

首相が今秋に消費税率アップの最終判断をするまでは、歳出入を左右する税収を見積もれないと判断したためだが、物足りない内容であり、残念だ。歳出が膨張する懸念も拭えまい。具体的な財政収支改善策を早急に打ち出さなければならない。

国と地方の基礎的財政収支の赤字幅を22年度の水準から対国内総生産(GDP)比で27年度までに半減させ、32年度までに黒字化するのは国際公約だ。それを果たすため、計画は今後2年間で国の赤字を計8兆円分削減する収支改善目標を掲げた。そのために無駄を縮小し、優先度の高い施策への重点配分をうたっている。

メリハリの利いた予算は財政健全化に不可欠だ。不要不急の施策を減らすことはもちろん、痛みを伴う改革も避けては通れまい。

だが、中期財政計画からは明確な道筋がみえてこない。社会保障費は全体の水準を抑制するとしたものの、後発医薬品の使用促進などを挙げるだけで数値を含む予算の削減目標などはなかった。総論だけでは説得力を持たない。

ただでさえ、税収の上ぶれを当て込んで、与党から歳出圧力が高まることが予想される。概算要求基準では、成長戦略や地域活性化などに使える優先課題推進枠を設けた。通常予算で認められない施策を特別枠に潜り込ませようとする動きが出る可能性もある。安倍政権は、こうした要求を厳しく取捨選択しなければならない。

内閣府が公表した試算では、高めの経済成長を果たし、消費税率を10%に引き上げたとしても、32年度までに基礎的財政収支を黒字化できないという。それならばなおのこと、歳出を見直す不断の取り組みが欠かせない。

日本の財政再建は世界からも注視されている。首相は9月にロシアで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会議で中期財政計画を説明する。日本の財政運営に対する信頼が得られなければ、アベノミクスへの評価も低下しかねないことを忘れてはならない。

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