広島は6日、長崎は9日に、それぞれ68回目の原爆忌を迎える。
唯一の被爆国として、いかに原爆の惨禍を語り継ぎ、非人道的な核兵器が二度と使用されないよう世界に訴えていくか。被爆者の平均年齢は既に78歳を超えた。
広島市の松井一実市長は、きょうの平和記念式典で発表する平和宣言で、2020年までの核廃絶に全力を尽くすことを誓う。
しかし、世界の現状は厳しく、廃絶へのハードルは高い。
冷戦時代のピーク時に世界で計約7万発もあった核兵器は、米露核軍縮交渉で大幅に削減されたものの、なお1万7000発以上も残っているとされる。
今年6月、オバマ米大統領はベルリンで演説し、米露が配備している戦略核弾頭数を現在の3分の2程度にまで、それぞれ削減することを提案した。着実に推進してもらいたい。
無論、核軍縮は米露だけの問題ではない。中国など他の核保有国も積極的に取り組むべきだ。
米露英仏中の5か国以外の核保有を禁止した核拡散防止条約(NPT)体制に、ほころびが目立つようになって久しい。
特に懸念されるのは、核保有の既成事実化を図る北朝鮮の動向だ。昨年12月の長距離弾道ミサイル発射に続き、今年2月には3回目の核実験を強行した。米本土に届くミサイルと、搭載可能な小型核弾頭の開発を急いでいる。
北朝鮮が実戦配備中の中距離弾道ミサイル「ノドン」は、日本のほぼ全域を射程に収める。核弾頭が完成すれば日本が先制核攻撃の標的となる確率は小さくない。
自民党などで、自衛のために相手国のミサイル基地などを攻撃する「敵基地攻撃能力」を保持すべきだという議論が起きているのはそのためである。
米韓や中露と連携し、北朝鮮に対しても核放棄をねばり強く求め続けねばならない。
日本の安全保障政策の根幹にある米国の「核の傘」の重要性も高まっていると言えよう。
米政府は3年前から、米国内の核施設の一部を日本政府に開示するようになった。
核抑止をめぐる日米協議の進展は、日米同盟を機能させる上で必須である。抑止力政策の強化にもつながる。
広島、長崎の惨状を訴える一方で、周囲の核脅威には米国の核で安全を担保する。それが、被爆国であり、非核保有国としての日本が取り得る現実的選択である。
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