大阪・誤認逮捕 これでは捜査と言えぬ

毎日新聞 2013年07月31日

大阪・誤認逮捕 これでは捜査と言えぬ

ずさんとしか言いようのない捜査である。大阪府警が誤認逮捕した男性会社員について、大阪地検が起訴を取り消した一件だ。関与を否定する男性の主張を裏付けるため、弁護人が車の走行実験など独自調査をした結果、男性にアリバイがあることを突き止め、無実と判明したが、男性は85日間勾留された。

基本的な裏付け捜査をなぜしなかったのか。府警は捜査の経緯を検証し、公表するが、新たな冤罪(えんざい)被害者を出さないために詳細な分析が必要だ。捜査が不十分なことを見逃して起訴に踏み切った地検についても同じことが言える。

男性は、盗品のガソリンカードを使って給油したとする窃盗罪で6月に起訴された。現場のガソリンスタンドにある防犯カメラに男性が映っていたことを決め手に府警が逮捕していた。

ところが、カメラの撮影時刻は実際の時刻と数分違っていた。北堺署は映像を過信し、この時刻のずれや、男性が給油後に利用した高速道路の自動料金収受システム(ETC)の記録などの確認を怠った。男性の言い分を聴き、裏取りをすれば、男性は無関係とわかり、第三者による犯行の可能性を検討できたはずだ。

経験の浅い若手が捜査したとはいえ、上司が捜査結果の報告を受けて決裁している。男性を犯人と決めつけた見込み捜査が修正されなかったことには指導力不足の問題もある。

パソコンの遠隔操作事件で大阪府警は昨年、アニメ演出家の男性を誤って逮捕した。検証の結果、インターネット上の住所であるIPアドレスなどの客観的証拠を過大に評価し、否認の供述内容の吟味が足りなかったことを問題点に挙げている。どうすれば捜査の現場にその教訓を浸透させられるのか、警察幹部は真剣に考えなければならない。

大阪府警では6月から証拠品や調書の捏造(ねつぞう)が相次いで発覚した。公務執行妨害事件で堺署員が複数の虚偽調書を作成、公判でも偽証したことが判明し、結審した裁判がやり直しとなった。証拠の注射器が紛失したと思い込んだ当時の警部補が同型の注射器を調達して偽装していたことも明らかになった。

証拠類を適切に取り扱うことは、捜査の基本だ。順法意識を欠いていると指摘されても仕方のない不祥事が続いており、組織に潜む問題の洗い出しは急務である。

今回の誤認逮捕で、男性は取り調べ時に捜査員から「あなたは普通じゃない」などと屈辱的なことを言われ、長期間の拘束で体力も落ち、現在休職中だ。ずさんな捜査は、深刻な人権侵害を引き起こす。危機感を持って捜査の基本に徹しなければ、国民の信頼は遠のくばかりだ。

読売新聞 2013年08月02日

大阪誤認逮捕 ずさんな捜査に驚かされる

ずさん極まりない捜査と言うほかない。警察と検察には、猛省と徹底検証を求めたい。

堺市のガソリンスタンド(GS)で1月に起きた窃盗事件で、大阪地検堺支部は男性会社員の起訴を取り消し、男性に謝罪した。大阪府警も誤認逮捕だったことを認めた。

男性は、事件と無関係だったのに、85日間も勾留され、休職を余儀なくされた。取り調べの際には、捜査員から何度も呼び捨てにされ、「あなたは普通じゃないんですよ」などと侮辱もされた。重大な人権侵害である。

誤認逮捕の最大の原因は、男性を犯人と決めつけた見込み捜査に尽きると言っていい。

駐車中の車から盗まれたカードが、GSで使われていた。府警が防犯カメラを調べたところ、ガソリンが販売された時刻に男性の姿が映っていた。府警はこの画像を逮捕の決め手とした。

ところが、弁護人の調査で、防犯カメラの時刻がずれていたことが判明した。犯行があった時刻の1分後、男性は約6キロ離れた高速道路の入り口を乗用車で通過していたことも明らかになった。

男性が犯行に及ぶのは事実上、不可能なことになる。無実を証明するアリバイだ。府警は基本である裏付け捜査を怠った。弁護人が調査するまで誤りに気づかなかったという。あきれるばかりだ。

一つの証拠を過大評価して、誤認逮捕する。府警は昨年のパソコンの遠隔操作事件と全く同じ過ちを犯した。IPアドレスを重視し過ぎて、パソコン所有者のアニメ演出家を誤って逮捕した。苦い教訓がまるで生かされていない。

関与を否認する供述に耳を貸さなかった点も共通する。

検察の責任も重い。警察の証拠をよく吟味せず、男性を起訴した。警察の捜査に対するチェックが機能していない。

保釈請求にも反対し、家族との接見も一時、禁じた。弁護人がアリバイを証明しなければ、不当勾留はさらに長引いただろう。

今回、男性は一貫して犯行を否認した。だが、無実の人が長期の身柄拘束により、罪を認める供述をしたケースは少なくない。

否認した被告を釈放しない「人質司法」は、冤罪(えんざい)を招く大きな要因である。

身柄拘束の在り方については、刑事司法制度の見直しを進める法制審議会の部会でも議論されている。ルールがあいまいとの指摘があるからだ。今回の事件を、人質司法を見直す契機とすべきだ。

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