美白化粧品事故 被害拡大の責任は重い

朝日新聞 2013年08月02日

美白化粧品 「灰色情報」を見逃すな

1件の情報の陰に、3千件近いトラブルが潜んでいた計算になる。カネボウ化粧品の自主回収問題の教訓はそこにある。

美白化粧品を使って肌がまだらに白くなった人が3人いる。端緒は、医師から寄せられたそんな情報だった。

さかのぼって調べると、それ以前の2年間に店頭や電話窓口で、33人から同じような相談を受けていたことがわかった。

自主回収を発表すると、届け出は8600人にふくらんだ。台湾でも被害が判明した。

33人の情報が寄せられる間のどこかの時点で調査を始めていれば、ここまでの被害拡大は防げたはずだ。

では、どうすれば気づけたのか。少しでも心配のある情報は必ず追跡調査する。それしかなかったようにみえる。

カネボウは先進的とされる顧客対応システムを使っていた。電話窓口や店頭に寄せられた相談を入力すると、社内の各部門に情報が共有される。それでも危険信号を見逃した。

相談者33人のうち12人は医師の診察を受けていた。だが、いずれも体質で生じる白斑との診断だったため、担当者は対応不要の「相談」に分類していた。カネボウはそう説明する。

同社は、今回のような相談はすべてチェックの必要な「肌トラブル」に分類するなどの再発防止策を検討するという。

「灰色は黒」とみなしてフォローするのは、人手も経費もかかる。それでも、大きな製品事故を起こしたときの損失と信用失墜にはかえがたい。

消費者からの情報をこまめにすくい上げることは、商品改良にもつながる。長い目でみればプラスになるのだ。化粧品業界に限らず、メーカーにはそう考えてもらいたい。

問題の美白成分は厚生労働省の承認をうけた医薬部外品だ。カネボウは申請の際、実際に肌につけて白斑やアレルギーが生じないか試験をし、厚労省の審査では、それを専門家がチェックして承認したはずだ。

カネボウの試験は十分なものだったか。承認審査にはもっと厳しくすべき点はないか。厚労省は検証してもらいたい。

2年前、小麦アレルギーを引き起こして自主回収された「茶のしずく石鹸(せっけん)」も医薬部外品だった。一般に、医薬部外品は医薬品より効き目がおだやかだ。副作用への警戒心がゆるむ分、気づくのが遅れて被害が拡大しやすい面があるだろう。

早期発見のためには、メーカーと医療機関や医学界との連携強化が欠かせない。

毎日新聞 2013年08月01日

美白化粧品事故 被害拡大の責任は重い

カネボウ化粧品の美白化粧品で、肌がまだらに白くなる「白斑」被害が深刻化している。情報公開や製品回収が後手に回り、被害の拡大を招いた同社の責任は重い。損害賠償や治療のフォローなど被害者の救済に万全を期すべきだ。

同社ブランドの信頼は、大きく失墜した。原因の究明を徹底するとともに再発防止策を早急に打ち出し、信頼回復に努める必要がある。

カネボウには、問い合わせが約20万人から寄せられている。同社が症状を確認した人は4061人。うち1828人は重い症状だった。

問題なのは、ここまで被害を拡大させてしまった同社の対応だ。カネボウには2年前から、肌の異常を訴える利用者からの相談が寄せられていた。しかし、担当者は利用者の個人的な持病だと思い込み、被害情報は社内で共有されなかったという。

さらに不可解なのは、5月中旬に社外の皮膚科医から、美白化粧品で白斑の症状が出ているとの情報が寄せられたのに、調査を開始したのは2週間後で、自主回収を始めるまでには2カ月近くもかかったことだ。

白斑の原因とみられる美白有効成分は、シラカバの樹皮などに含まれる天然成分を元に同社が独自開発した。2008年1月に厚生労働省の承認を受け、この成分を含む美白化粧品は約440万個も売れている。メーカー各社が美白成分の独自開発を競う「美白ブーム」の中、シェア拡大を目指す同社にとっては欠かせない商品だったといえるだろう。

そうした事情が、対応の遅れにつながったことはないのか。消費者庁の阿南久長官は「5月時点で使用中止を呼び掛けていれば、被害を少しでも減らせたはずだ」と指摘した。カネボウは対応が後手に回った原因を究明し、公表する責任がある。

カネボウは粉飾決算事件で経営危機に陥った旧カネボウから、産業再生機構の支援を受けて04年に分離独立した会社だ。信頼回復の道は険しい。06年に同社を買収した親会社の花王も再発防止策を主導し、信頼回復を図る役割を担うべきだろう。

行政にも責任の一端はある。全国の消費生活センターなどにも、自主回収前に被害の相談が寄せられていた。消費者庁は事故防止のため、国民生活センターと連携して情報を収集、提供するシステムを築いている。今回被害の拡大を防げなかった原因を分析し、今後の消費者保護に役立ててほしい。

問題の商品はアジア10カ国・地域でも販売され、台湾では既に被害が申告されている。日本ブランド全体の信用にも影響しかねない事態だ。各国関係機関とも連携して対応を急ぐ必要がある。

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