パレスチナ和平 米国の仲介努力は奏功するか

毎日新聞 2013年08月01日

中東和平交渉 オバマ政権の正念場だ

イスラエルとパレスチナの中東和平交渉が3年ぶりに行われた。今後9カ月以内に包括合意を目指すことで一致したという。意欲的な目標設定はいいとして、仲介役たる米国の強い後押しがなければ、交渉は空中分解してしまうだろう。オバマ大統領の正念場である。

中東和平の直接交渉は2010年にも行われ、オバマ大統領が1年以内の合意を呼びかけたものの、ユダヤ人入植地をめぐる対立から不調に終わった経緯がある。今回の目標である「9カ月」はその時より短いが、問題解決のめどが立ったわけではない。2週間以内に次回会合を開けるかどうかも含めて、情勢は波乱ぶくみというべきだろう。

占領した土地に自国民などを送り込んで住宅地(入植地)を建設するのは、占領地改変などを禁じた国際条約の違反とされ、米歴代政権も「和平の障害」とみなしていた。イスラエルはこうした国際的な懸念をよそに入植地を作り続け、いまや入植者の人口は、東エルサレムとパレスチナ自治区のヨルダン川西岸を合わせて50万人を超えたとされる。

イスラエルの自制が必要なのは言うまでもない。と同時に、同国の後ろ盾であり和平の仲介役でもありながら、入植地建設を制止できない米国の態度も問われるべきだろう。自治区を構成する西岸、ガザという二つの地域で、パレスチナの指導部が割れているのも大きな問題だ。

交渉進展を阻む問題は山積しているが、パレスチナを独立させない外圧が働いているのも確かだろう。東ティモールやコソボ、南スーダンなどが独立、または独立を宣言したのに、なぜパレスチナは独立できないのか、という視点は大事である。

国連総会のパレスチナ分割決議(1947年)から66年、イスラエルが広大な占領地を持った第3次中東戦争(67年)から数えても半世紀近い。当事者のイスラエルとパレスチナ、仲介者の米国も「2国家共存」に同意している以上、一日も早い構想実現に努めるべきだ。

米国の責任は重大である。これまでの中東交渉は、クリントン政権下の3首脳会談(00年)に見るように、大統領自らの仲介を当然とする空気があった。とりわけオバマ大統領の場合は、中東への新たなアプローチをうたったカイロ演説(09年)もあって和平仲介への期待感が強い。

だが、今回の交渉はケリー国務長官が前面に出ている。そのよしあしは即断できないにせよ、仮に仲介が失敗すれば「オバマ大統領はやる気がない」「裏切られた」との失望感が広がることは避けられない。後に引けない仲介であることを、大統領は自覚すべきである。

読売新聞 2013年07月29日

パレスチナ和平 米国の仲介努力は奏功するか

イスラエルとパレスチナの約3年ぶりの直接交渉の実現へ、つなげることが肝要だ。

イスラエルとパレスチナ自治政府に和平交渉再開を働きかけてきたケリー米国務長官が、「交渉再開のための基本的な部分で合意に達した」と発表した。

近く、双方の閣僚級の担当者が詰めの協議を行うという。

自治政府側は、パレスチナ国家樹立を目標に掲げており、日米欧やアラブ諸国は支持している。ただ、イスラエルの同意が不可欠だ。イスラエルと自治政府の直接交渉が再開され、平和共存への歩みが始まることを、期待したい。

今回の基本合意は、2月に就任したケリー国務長官が何度も中東に足を運び、仲介した成果だ。

「アラブの春」の激動が続く中東で、米国の存在感が問われている。シリア内戦は泥沼化し、地域の大国エジプトは政情不安定から抜け出せないでいる。

米国は、イスラエルとパレスチナの和平仲介を中東外交立て直しの契機とし、中東の安定に役割を果たしたいのだろう。

基本合意の成立は、強硬一辺倒のパレスチナ政策で国際的に孤立したイスラエルが、軌道修正を図ったことにもよる。

昨年の国連総会では、米国、イスラエルの反対にもかかわらず、パレスチナに「オブザーバー国家」の地位を与える決議案が、圧倒的多数で可決された。

ヨルダン川西岸への入植活動強行に対し、国際社会、とりわけ最大の貿易相手の欧州が批判を強めていることに、イスラエルは危機感を強めている。

イスラエルが入植活動を中止することで、自治政府との対話再開への道も開くのではないか。

自治政府の側も、交渉当事者の能力を示すには、統治が及ぶのはヨルダン川西岸だけでガザ地区はイスラム主義組織ハマスの支配下のまま、という現状を解消する必要がある。

岸田外相は先週、中東を歴訪し、イスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナ自治政府のアッバス議長とそれぞれ会談し、和平交渉の再開を促した。

また、日本の支援でヨルダン川西岸エリコに建設中の農産加工団地の活用を巡って、イスラエル、自治政府、ヨルダンの関係閣僚と4者協議を行った。

岸田外相らが協力緊密化で合意したのは、評価できる。

和平を側面支援するこうした外交努力を、今後も継続したい。

産経新聞 2013年07月30日

中東和平 相互努力で本交渉目指せ

中東和平交渉が米国の仲介で、約3年ぶりに再開する。イスラエルとパレスチナ双方の交渉担当者がワシントンで予備交渉のテーブルに着く。

シリア内戦の泥沼化、エジプトのクーデターなど「アラブの春」の激動が続くが、パレスチナ和平は地域の安定の根幹をなす問題だ。イスラエルの入植問題など両者の主張は対立したままで、難航が予想されるが、まずは交渉を軌道に乗せる努力を求めたい。

予備交渉は2日間で、イスラエルのリブニ法相、パレスチナの和平交渉責任者のアリカット氏らが参加する。今後数カ月間の交渉の進め方を決めるという。

オバマ米大統領は今年3月、2期目の最初の外遊でイスラエルとパレスチナを訪れた。その後、ケリー国務長官が頻繁に中東入りして両者に交渉再開を強く促した。オバマ政権の外交的成果だが、真価が問われるのはこれからだ。

イスラエル側は交渉再開に先だって、パレスチナ側の要求を受け入れる形で、パレスチナ人政治犯104人を釈放する決定を下した。本格交渉へ前向きな姿勢を示したといえる。

イスラエルはしかし、パレスチナ側が求める占領地でのユダヤ人入植地建設の凍結は拒んでいる。中東和平交渉は2010年10月、入植活動をめぐってパレスチナ側が反発、中断が続いていた。

イスラエル側は、この拒否姿勢を改める必要がある。一方、パレスチナ側も、ガザ地区はイスラム原理主義組織ハマスが支配し、自治政府の統治が及ばないという現状を解消しなければならない。

和平交渉では、聖地エルサレムの帰属やパレスチナ難民がイスラエル領内の故郷に帰還する権利など多くの問題が未解決のままだ。交渉進展に向け国際社会全体が支えていかなければならない。

日本は、岸田文雄外相が先ごろ、ヨルダンのほか、イスラエルとパレスチナを訪問し、両者に交渉再開を促した。

パレスチナ自治区のエリコ郊外で日本は、農産品加工団地の建設を進めている。イスラエルとパレスチナが共同で農業開発に取り組むことで、相互の信頼醸成を図る考えだ。

米国のパレスチナ和平仲介を側面支援する形であり、日本らしい貢献で中東でも日米協力を実現させることは極めて重要だ。

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