駐日米大使指名 スイート・キャロライン

毎日新聞 2013年07月27日

駐日米大使指名 スイート・キャロライン

オバマ米大統領は次期駐日大使にキャロライン・ケネディさん(55)を指名した。連邦議会上院での承認手続きが残っているが、名門ケネディ家からの起用でもあり、強い異論は出そうもない。順調なら承認を経て9月にも着任することになろう。

キャロラインさんの指名を歓迎する。暗殺されたケネディ大統領の長女であり、父の葬儀に参列した時のあどけなくも悲しげな顔を覚えている人も多かろう。歌手のニール・ダイアモンドが、悲劇を乗り越えて10代になった彼女の、優しく愛らしい姿を「スイート・キャロライン」という歌で表現したことも有名だ。

米国初の女性駐日大使になる点も含めて、話題性では抜群の人事である。外交に新しい風を吹き込んでほしい。これまで駐日大使は大物政治家が務めることが多かった。特に1990年代以降は、モンデール氏(元副大統領)、フォーリー氏(元下院議長)、ベーカー氏(元上院院内総務)と続き、次のシーファー氏もテキサス州下院議員の経験がある。

弁護士のルース現大使は、政治家や政府要人としての経歴を持たない点で異例である。やはり弁護士出身で政治、外交の経験が特にないキャロラインさんの起用により、駐日大使の「脱政治家」傾向はさらに強まったといえるかもしれない。

ある意味では論功行賞の人事でもあろう。2008年にオバマ上院議員(当時)が大統領選に名乗りを上げた時、キャロラインさんは「父のようになれる人」と支持を表明した。これがオバマ氏を勢いづかせた半面、対抗馬のクリントン上院議員(後の国務長官)との摩擦も生じた。

その後、キャロラインさんはクリントン氏の後継上院議員になる意欲を示したものの断念し、一時はオバマ大統領との確執も伝えられた。結局、米外交の中心である国務長官がクリントン氏からケリー氏に代わった後で、駐日大使に据えることが決まったわけである。

ちなみに、米国の駐中国大使は商務長官や州知事の経験を持つ中国系の米国人。駐韓国大使は韓国から米国へ移住し、6カ国協議の特使も務めた外交官だ。中韓が実務型であるのに対し、日本は論功行賞の色彩が強い話題先行型といえなくもない。

だが、政治や外交の実務経験も大切とはいえ、大使に必要なのは駐在国の事情を理解し、本国と連携して必要な措置を迅速に講じることだろう。その点、キャロラインさんには米政府と議会への強い発信力がある。尖閣問題にしろ北朝鮮の核・ミサイルにしろ東アジアの不安定化が進行する中、スイートなキャロラインさんには日本の安全と域内の安定に寄与する頼もしさも期待したい。

産経新聞 2013年07月29日

ケネディ次期大使 名声にふさわしい仕事を

オバマ米大統領が次期駐日大使に、故ケネディ大統領の長女であるキャロライン・ケネディ氏を指名した。上院による指名承認を経て、今秋にも着任する見通しだ。

外交手腕は未知数ながら知名度は抜群で、選挙応援などを通じてオバマ氏と近しい。オバマ政権の対日関係重視を表す人事と受け止めたい。

1960年代に登場した若き指導者、ケネディ氏はそのカリスマ性に、凶弾に倒れた悲劇性も加わって、内外で最も知られた米大統領の一人だ。ケネディ一族は米政界きっての名門でもある。

娘のキャロライン氏は大使として世界の関心を集め、日米同盟の重要性を内外に印象づけよう。

気がかりなのは氏に外交、政治の経験がないことだ。重要ポストへの起用は、2008年大統領選の民主党予備選で支持を表明して、「オバマ候補」へと流れを変えた「論功行賞」とされる。

駐日米大使は、モンデール元副大統領、ベーカー元上院院内総務ら政官界の大物が就くケースが多い。ケネディ氏起用に不安がくすぶるのも当然だろう。話題優先の人事でないことを願いたい。

もっとも、ルース現大使も08年選挙でオバマ氏の資金集めに貢献し、外交経験はなかった。知名度も存在感も乏しかったが、東日本大震災で米軍の支援活動「トモダチ作戦」に尽力するなど、評価しうる実績を作っている。

ケネディ氏は初の女性駐日米大使となる。日本を知り、外交のスキルを磨いて、一家の名声にふさわしい仕事をしてほしい。

日米間には米軍普天間飛行場移設、日本の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加といった重要懸案がある。海洋進出攻勢に出る中国や、日本人拉致問題を含む北朝鮮への対応も難題だ。

オバマ政権1期目は、クリントン国務長官が安全保障面の「アジア回帰」を主導し、知日派のキャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)がそれを支え、ドニロン米大統領補佐官(国家安全保障担当)も手堅い力を発揮した。

2期目に入って彼らは去り、後任国務長官のケリー氏の関心はアジアより中東に向いている。

ケネディ氏には日本の立場に十分な理解を求めたい。そのうえでいつでも電話で話せるというオバマ氏との関係を生かし、日米のパイプ役を果たしてほしい。

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