インターネット上や企業のシステムに膨大な電子情報、「ビッグデータ」が蓄積されている。
情報を上手に活用できれば“宝の山”になる。一方で、個人情報保護のルールを明確にし、企業や消費者が安心して利用できる環境作りを進めることが必要だ。
ビッグデータは、通販の購入履歴やSNS(交流サイト)上の書き込み、スマートフォンの位置情報など、様々なデータの総称である。IT(情報技術)の進歩で、膨大な量のデータの収集や蓄積が容易にできるようになった。
通販業界では、購入履歴を分析し、消費者の好みに合う「お薦め商品」を売り込む販売手法が広がっている。製薬業界には風邪に関するネット上の書き込みと天気予報を合わせて分析し、流行の目安を提供している例などもある。
NTTドコモは、携帯電話の位置情報をもとに地域や時間帯ごとの人口分布を推計し、街づくりや災害対策に役立てている。多くの企業がビッグデータの利用価値に注目し始めたと言える。
総務省の今年の情報通信白書は、ビッグデータを最大限活用すれば、商品開発や経費削減などで年間7兆円超の経済効果が生まれる、という試算を示している。
様々な分野に活用が広がる可能性に期待したい。官民連携で、IT化が遅れている分野での利用を拡大することも求められよう。
豊作時の土壌や農薬の情報を分析し、農業の生産性向上に生かす事業なども有望だろう。
ただ、データの活用は、個人情報の保護が前提となる。
JR東日本は、ICカード乗車券の乗降履歴を、市場調査などに使いたい企業に売却していた。事前に説明を受けていなかった一部の利用者が反発した。
名前や住所を削除して本人を特定できなくした匿名情報は原則、個人情報保護法の対象にならず、第三者に提供する際も本人の同意は要らないと考えられてきた。
だが、最近の分析技術の向上に伴い、匿名情報でも、位置情報など他のデータと突き合わせると本人を特定できる可能性がある。
匿名化した情報を活用する場合でも、情報提供側への事前説明の徹底などの配慮が欠かせない。
JR東は要望があった人のデータは販売しないことにした。データ活用を計画する企業はJR東のケースを教訓とすべきだ。
企業が情報を適切に扱うことも大事である。監視のあり方も将来的な課題となろう。
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