民主党国会議員が大挙して中国を訪問し、胡錦濤・国家主席と次々に握手をして、ツーショット写真に納まる。そんな光景に首をかしげた人は少なくないだろう。
小沢幹事長を名誉団長とする訪中団の参加者は、先の衆院選で当選した新人をはじめ、衆参国会議員143人。各議員の支持者らを含めると600人を超えた。
今回の訪中は、小沢氏が自民党時代から進めてきた日中交流「長城計画」の一環だ。
同時に、民主党と中国共産党との定期協議の場「交流協議機構」の政治家交流も兼ねている。これは、小沢氏が党代表を務めていた2006年7月、胡主席との会談で提案し、設置が決まった。
日中の政治家同士のパイプが細くなる中で、政党間交流を活発化させる意義は大きい。
しかし、新政権にとって初の予算編成が本格化しているこの時期に、これほど多数の与党・民主党議員が一斉に訪問する必要性はあったのか。
小沢氏は10日、胡主席と会談した。しかし、日中2国間の懸案は素通りしたという。
中国製の冷凍ギョーザ事件は依然、未解決のままだ。東シナ海のガス田開発問題で、中国側は、日本との条約交渉を拒むとともに、「白樺」ガス田では一方的に掘削開始の態勢を整えつつある。
読売新聞などが11月に実施した日中共同世論調査によると、日本では中国を「信頼できない」と答えた人が7割に上った。これらの問題が中国への信頼感に大きな影を落としているのは確実だ。
小沢氏は、胡主席との会談の中で、「政府間では、どうしても形式的な議論に陥る。党と党のレベルでは、あらゆる問題を話し合えるように」と語っている。
小沢氏には早速、自ら実践し、胡主席と率直な意見交換をしてほしかった。ただ、11日の梁光烈国防相との会談では、中国の軍事力増強に懸念を示した。こんな忌憚のない対話が必要だろう。
鳩山内閣は、普天間問題の混乱で日米首脳会談も実現できず、日米関係は危機的な状況にある。
心配なのは、小沢訪中団が、民主党政権の「対中傾斜」を内外に印象づけ、対米関係に悪影響をもたらしかねないことだ。
むろん、日中の友好関係は大切だ。だが、両国間には友好だけでは解決できない複雑な問題が多数存在する。政党間交流は、その点を踏まえ、もっと少人数の相互訪問で実務的に進めるべきだ。
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