離島・ミサイル防衛の強化、サイバー攻撃や大規模災害への対処――。日本の平和と安全を確保するため、こうした様々な課題に確かな解と道筋を示さなければならない。
防衛省が、年末に策定する新防衛大綱の中間報告を発表した。離島防衛について、航空・海上優勢の維持と、陸上自衛隊の機動展開能力や水陸両用機能(海兵隊的機能)の整備が重要と指摘した。
冷戦終結後、「量から質へ」の発想と防衛費削減の流れの中、海上自衛隊の護衛艦や哨戒機、航空自衛隊の戦闘機などが減らされてきたが、もう限界と言える。
中国軍艦船の日本一周や、沖縄本島と宮古島の第1列島線を越えた中国軍機の飛行が初めて確認された。最近の中国軍の装備増強と活動の活発化を踏まえれば、海空自の護衛艦や戦闘機の減少を増加に転じさせる必要がある。
警戒監視能力向上のため、無人偵察機グローバルホークを前倒しで導入することが重要だ。
陸自も、離島防衛の専門部隊の拡充や米海兵隊との共同訓練の強化によって抑止力を高めたい。
自民党が先に「検討」を提言した敵基地攻撃能力の保有について中間報告は言及せず、ミサイル攻撃への「総合的な対応能力を充実させる」との表現にとどめた。
自衛隊が巡航ミサイルなどを導入することには、日米両政府内に賛否両論があるためだ。
米軍の打撃力を補完し、日本の抑止力を高めるとの積極論と、そうした予算は他の優先分野に回した方が良いとの慎重論である。
肝心なのは、日米同盟を強化する方向で自衛隊と米軍の役割分担を見直すことだ。どの攻撃手段をどんな形で保有するのが目的に適うのか、検討を進めるべきだ。
中間報告は、サイバー攻撃対策として、米国や民間企業との連携強化や専門家の育成を挙げた。
1月のアルジェリアでの邦人人質事件を踏まえて、在外大使館の防衛駐在官の増員など人的情報収集機能も強化するとしている。
いずれも重要な課題であり、着実に実施することが大切だ。
懸念されるのは、報告が言及した防衛省改革の行方である。
部隊運用を担当する内局の運用企画局を廃止し、自衛隊の統合幕僚監部に一元化するなどの急進的な案が検討されている。自衛官が主体の組織が国会対応や他省庁との調整まで行うのは非合理的で、混乱や士気の低下を招こう。
組織改革は今の優先課題ではない。慎重な対応が求められる。
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