日本がようやく、米国など11か国が進める環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加した。
安倍首相は、「交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻め、国益にかなう最善の道を追求する」と強調している。
政府は、出遅れ挽回へ、攻守両にらみの戦略を強化すべきだ。
TPP交渉会合がマレーシアで開かれ、日本は12番目のメンバーとして2日半だけ合流した。
関税撤廃、知的財産権、投資など29章に及ぶTPP交渉をまとめた文書が、初めて日本に開示された。全体像を把握できるようになった意味は大きい。
次回会合は8月末にブルネイで開かれ、日米協議も8月以降、並行して行われる。政府は各国の主張を分析し、加速する交渉への対応を急がねばならない。
米国などは、10月の基本合意と年内妥結を目標に掲げている。マレーシアの代表も25日の記者会見で、「妥結期限に間に合うよう精力的に議論する」と強調した。
ただし、最大の焦点の関税撤廃を巡っては各国が対立し、交渉が停滞している模様だ。
今のペースでは年内決着は難しく、交渉が越年する可能性がある。日本の立場は依然厳しいが、出遅れを取り戻す余地は広がろう。
自民党は参院選で、コメ、麦など「農産物5品目の聖域を最優先する」と主張した。
全国農業協同組合中央会(JA全中)出身の山田俊男参院議員が比例選の上位で再選され、国益を守り抜くよう求めている。TPP反対を掲げた鹿児島選挙区の尾辻秀久参院議員も5選された。
党内にはなおTPP反対論がくすぶるものの、政府・自民党が急ぐべきは、一層の市場開放に備えて、農業の競争力を強化する具体策を推進することである。
TPPは高水準の自由化が目標で、コメなど全てを関税撤廃の例外扱いとして守ることが日本の国益に資するとは限らない。バランスの取れた戦略が必要だ。
自動車、電機などの関税撤廃による輸出拡大や、外資規制撤廃といったビジネス環境整備での「攻め」がむしろ重要と言える。
TPPは世界の国内総生産(GDP)の約4割を占める巨大な自由貿易圏である。日本はTPPでアジアの活力を取り込み、成長に弾みを付けねばならない。
日本がアジアの貿易・投資ルール作りをどう主導するのか。安倍政権が重視する成長戦略の行方をも左右する正念場になる。
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