安倍政権の課題 国力の向上へ経済に集中せよ

毎日新聞 2013年07月25日

ASEAN外交 きめ細かい協力蓄積を

安倍晋三首相がマレーシア、シンガポール、フィリピンの3カ国を訪問する。今年は日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)との交流40周年に当たる。成長が期待されるASEANの国々と幅広い分野で関係を深め、東アジア全体の協調ムードを高めることにつなげてほしい。

ASEANは日本にとって、中国、米国と並ぶ貿易相手であり、日本企業の投資先としても重要性を増している。2015年末を目標に、加盟10カ国が経済統合するASEAN共同体を構築する計画だ。実現すれば人口6億人を超える大市場として存在感を増す。

日本とASEANの関係は社会的な分野でも深まってきた。日本のアニメやファッションなど文化輸出に加え、中産層が育ってきたため日本への観光客数が急増している。日本は今月からビザ発給を緩和し、2016年には東南アジアからの旅行者を現在の2・5倍に当たる200万人に増やす目標を掲げている。

安倍首相のASEAN訪問は1月のベトナム、タイ、インドネシア、5月のミャンマーに続き、今年3回目で計7カ国となる。

今回の訪問では、地震や台風の被害を受けやすいフィリピンに災害復旧対応の円借款枠を設け、同じ災害多発国である日本の技術やノウハウを生かしやすくする。マレーシアでは上下水道や高速道路などインフラ整備で日本の技術を売り込む。

日本はASEAN諸国と多国間の国際会議の場で同席する機会が多いが、2国間関係を強化するには、首脳が個別の国を訪問してきめ細かい協力を重ねていくことが不可欠だ。

尖閣諸島を巡って中国と対立が続く日本では、ASEANやインドと連携を強めることで中国をけん制すべきだという考え方が一部にある。南シナ海にある南沙諸島近海でも最近、中国が艦船を派遣して実効支配を進め、フィリピンやベトナムとの間で領有権争いが生じている。

ASEANは緊張の高まりを避けるため、中国との間で、同海域での活動を法的に制約する「行動規範」の策定に向けた協議開始に合意するなど外交努力を重ねている。経済成長を続けたいASEANが地域の平和と安定の維持を外交の最優先に置いていることを日本もしっかり認識しておく必要がある。

東アジアではASEANが主導する形で、ASEANプラス3(日中韓)や東アジアサミットなど幅広い協力の枠組みが定着している。16カ国で貿易・投資の自由化などを目指す東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉も始まった。日本はこうした枠組みを生かし、アジアの関係発展に貢献していくべきだ。

読売新聞 2013年07月27日

首相アジア演説 ASEAN重視戦略の表明だ

経済・安全保障の重要なパートナーである東南アジア諸国連合(ASEAN)に対する強いメッセージだ。

東南アジア歴訪中の安倍首相が、シンガポールで日本とASEANの関係をテーマに政策演説を行った。

急成長している東南アジア地域の経済圏を飛行機に例え、「日本とASEANは、左右両翼のツイン・エンジンだ」と述べた。

首相は、日本とASEANの輸出入額がこの10年間でそれぞれ倍増したとし、経済政策「アベノミクス」の効果はASEANにも及ぶと語った。さらに関係を強化する決意と言える。

今回訪れたマレーシア、シンガポール両国は、日本が参加した環太平洋経済連携協定(TPP)交渉のメンバーでもある。今後の大詰め交渉で、連携を模索することも課題となろう。

一方、首相は、今年で「友好協力40周年」を迎えたASEANとの関係は今や、経済にとどまらず、「地域の安全保障、とりわけ航海の自由に責任を持つ間柄」であることも強調した。

東・南シナ海への強引な海洋進出を図る中国を念頭に置いたものだ。中国、韓国との関係が不安定だけにASEANとの連携を深めるのは戦略的に有意義である。

首相がアジア歴訪中のバイデン米副大統領と会談したことも、この地域の平和と繁栄に寄与する日米同盟の存在をアピールするうえで効果的だったといえよう。

首相は、27日にはマニラで、フィリピンのアキノ大統領と会談する。政府開発援助(ODA)を活用し、巡視船を供与する考えを表明する見通しだ。

フィリピンは、南シナ海のスカボロー礁などの領有権をめぐって中国と対立している。その海上保安能力の向上を日本が後押しすることは、ASEAN全体に対する日本の意思表示にもなる。

首相の東南アジア訪問は、就任以来早くも3回目だ。訪ねた国は加盟10か国のうち七つに上る。

ASEANの中には、カンボジアやラオスのように中国寄りとされる国もある。首相はこうした国も訪問し、各国の事情に配慮して、きめ細かに日本への理解を拡大していくべきだ。

中国側にも、安倍外交を意識して、ASEAN各国を分断しようとする動きが見える。

日本は、軍事的緊張を高めないよう、米国などと連携し、国際法と法の支配にのっとった地域の安定を目指すことが肝要だ。

産経新聞 2013年07月24日

東南アジア外交 「開かれた海」での連携を

安倍晋三首相がマレーシア、シンガポール、フィリピンを歴訪する。安倍外交の柱の一つである「海洋アジアとの連携」の進展を期待したい。

日中、日韓関係は冷え込んでいるが、東南アジア諸国との関係は極めて良好だ。歴訪中、首相はバイデン米副大統領とも会談する。その機会に日本がアジアで孤立していないことをしっかり伝える必要がある。

首相は今年1月、就任後初の外遊として、ベトナム、タイ、インドネシアを歴訪した。その際、政権の外交原則を提示し、「法が支配する開かれた海」の重要性を強調した。「日米同盟」とインドや豪州を含む「海洋アジアとの連携」も挙げた。5月にはミャンマーを訪問した。

成長著しい東南アジア諸国はインフラ輸出など政府の成長戦略にも欠かせないパートナーだ。積極的な首脳外交の展開は当然だ。

「法の支配」を強調したのは、中国の力ずくの海洋進出を意識してのことだ。中国の膨張を脅威とみるのは海洋アジアの共通認識といえる。各国と「法の支配」の原則を改めて確認してほしい。

尖閣諸島をめぐる対立があっても、日本は中国に対して「ドアを常に開いている」(首相)が、安倍政権発足後、首脳会談は実現していない。韓国は4月、閣僚の靖国神社参拝を理由に外相が訪日を中止したが、今月初めにようやく日韓外相会談にこぎつけた。

米調査機関、ピュー・リサーチ・センターは、中国人の9割、韓国人の8割近くが日本に好ましくない印象を抱いているとの調査結果を発表した。同じ調査でマレーシア人、インドネシア人、フィリピン人は約8割が好意的印象を持っていることも指摘したい。

バイデン副大統領との会談はシンガポールで行われる。バイデン氏は上院外交委員長も務めた外交通で、オバマ政権の実力者だ。日米首脳会談は2月の首相訪米時に行われたが、6月の英国での主要8カ国(G8)首脳会議では見送られた。

米国内には専ら中韓との関係を見て日本の孤立化を指摘する声もある。首相は首脳レベルでの対話で日本の立場をよく説明し、誤解を解くよう努めてほしい。

東南アジアとの関係を進展させるためにも、外交・安全保障の基軸である日米同盟の強化は欠かせないのである。

毎日新聞 2013年07月23日

靖国と安倍外交 参拝は控え基盤強化を

安倍政権は、参院選の大勝で安定的な政権基盤を手に入れ、外交・安全保障などの政策課題に腰をすえて取り組む環境を整えた。毎年のように首相が交代し、国際社会でまともに相手にされてこなかった日本外交を転換する好機だ。安倍晋三首相は歴史認識問題を再燃させるような言動を慎み、外交基盤の強化に全力を注いでほしい。そのためには8月の終戦記念日と、10月の秋季例大祭の靖国神社への参拝は見送るべきだ。

4月の春季例大祭に麻生太郎副総理兼財務相らが参拝し、安倍首相が「侵略の定義は定まっていない」と先の大戦での侵略を否定したと受け取られかねない発言をしたことは、中国、韓国だけでなく、米国からも懸念を持たれる結果を招いた。その後、安倍政権は軌道修正したが、政権が歴史認識を見直そうとしているのではないかという、一度広まった疑念を払拭(ふっしょく)するのは、そんなに簡単ではない。

もちろん本来は国の指導者が戦没者を追悼するのは、人としても国のあり方としても当然のことだ。だが、それには環境整備が必要になる。最大の問題は、極東国際軍事裁判(東京裁判)のA級戦犯のうち14人が靖国神社に合祀(ごうし)されていることだ。

現状のまま首相らが参拝すれば、日本は先の大戦について反省していないという誤解を生みかねない。日本は1952年発効のサンフランシスコ講和条約で東京裁判を受諾して国際社会に復帰したが、東京裁判の否定につながる動きと受け取られる可能性もある。

また昭和天皇が75年を最後に靖国神社に参拝しなくなったのは、78年のA級戦犯合祀に不快感を持っていたからだとされる。昭和天皇が「だから私はあれ以来参拝していない。それが私の心だ」と語ったことを記録した当時の富田朝彦宮内庁長官のメモも明らかになっている。

靖国参拝問題の解決策を巡っては小泉政権末期、A級戦犯の分祀(ぶんし)論、無宗教の国立追悼施設の建設案などが検討されたが、沙汰やみになった。国内外の誰もがわだかまりなく戦没者を追悼できるようにするため、安倍首相は異なる立場の人々の声を広く聞き、答えを出すべきだ。

首相は秋以降、集団的自衛権の行使容認のための憲法解釈変更など日米同盟強化の安全保障政策に取り組む。全体像はまだよく見えないが、こうした政策を進めるとすれば、国内議論、米国との調整、近隣諸国の理解が欠かせない。

歴史認識を巡る首相の言動が今後も続き、「右傾化」「ナショナリズム」批判を招けば、政権の外交基盤は損なわれ、安倍外交は思ったような成果をあげられなくなるだろう。

読売新聞 2013年07月23日

安倍政権の課題 国力の向上へ経済に集中せよ

◆真価が問われるのはこれからだ

日本経済の再生に全力を挙げ、国力を高めることに集中して取り組まねばならない。

参院選での自民、公明両党の圧勝を受け、安倍政権が再始動した。

安倍首相は、連立を組む公明党の山口代表と会談し、連携を強化する方針を確認した。両党は参院選では共通公約を掲げられなかったが、今後は様々な政策調整を着実に進める必要がある。

◆消費増税の判断が焦点

首相は22日の記者会見で、「15年間にわたるデフレからの脱却は歴史的事業だ」と述べ、経済政策を最優先する意向を表明した。

「強い経済」を回復し、国力を取り戻さなければ、社会保障や外交・安全保障の基盤を強化できない。日本経済を再生することが、参院選で示された多くの国民の支持に応える道でもある。

当面の最大の焦点は、来年4月に予定通り消費税率を5%から8%に引き上げるかどうかだ。

首相は、8月12日に発表される4~6月期の実質国内総生産(GDP)成長率などを踏まえて、秋までに慎重に判断するとしている。

安倍政権の経済政策「アベノミクス」の効果で、経済は着実に上向いてきた。だが、本格的な回復前に消費増税を行うと、景気を腰折れさせかねない。首相の経済ブレーンの間には、消費増税の先送り論も出ている。

一方、日本の財政状況は、先進国で最悪であり、中期的な財政再建は国際公約になっている。消費増税を先送りした場合に国債市場に及ぼす悪影響も心配だ。

麻生財務相は、モスクワでの主要20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、予定通り増税する方針を示した。経済成長と財政再建の両立をどう図るか。首相は厳しい決断を迫られる。

社会保障制度改革を進める上でも、消費増税の議論は避けられない。政府は、国民会議が8月にまとめる結論を踏まえ、高齢化で増え続ける医療費と年金給付の抑制策や、少子化対応の具体策を打ち出す必要がある。

アベノミクスでは、大胆な金融緩和、財政出動に続く「第3の矢」となる成長戦略をどう具体化するかが問われている。

首相は、秋の臨時国会を「成長戦略実現国会」と位置づけ、企業に設備投資を促す投資減税などを盛り込んだ産業競争力強化法案の早期成立を目指している。

企業活力をさらに引き出し、賃金上昇や雇用拡大などの好循環を実現したい。

成長戦略を推進する上で不可欠なのは、電力の安定供給だ。

◆TPP交渉も本番に

原子力規制委員会は、原発の再稼働に向けて、新規制基準に基づく原発の安全審査を始めた。多岐にわたる審査を効率的に進めるには、規制委の審査体制を強化・改善すべきではないか。

原発再稼働に地元の理解を得るため、首相の指導力も必要だ。

経済や雇用、地球環境への影響なども考慮し、政府は現実的なエネルギー政策を推進すべきだ。

23日から日本が初参加する環太平洋経済連携協定(TPP)交渉も重要である。自由貿易推進によりアジアの活力を取り込む好機としたい。

自由化に備えた農業の競争力強化も急がねばならない。

外交では、対中関係の改善が最大の課題だ。首相は「お互いが胸襟を開いて話すことが大切」と、対話の必要性を強調している。日中双方の粘り強い外交努力が求められる。

中国は依然として沖縄・尖閣諸島周辺に海洋監視船を送り込み、挑発的な行動をとっている。中国による東シナ海でのガス田開発問題も新たに発覚しており、日中間の摩擦は高まる一方だ。

一連の中国の示威活動や軍備増強、さらに北朝鮮の核・ミサイルの脅威など、日本の安全保障環境は悪化している。

◆集団的自衛権を見直せ

政府が、長年の懸案である集団的自衛権行使に関する憲法解釈の変更に取り組むのは当然だ。日米同盟の強化にもつながろう。

政府の有識者会議は、10月前半にも新たな報告書をまとめ、集団的自衛権の行使を可能にするよう提言する。政府はこれを受け、解釈変更を進めるべきだ。

国家安全保障会議(日本版NSC)創設や、米軍普天間飛行場の辺野古移設の推進、新たな防衛大綱の策定と合わせ、安全保障体制を強化しなければならない。

次の国政選までは、最大3年ある。首相は、経済政策とともに外交・安保の課題も段階を踏んで進めていくことが肝要だ。

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