大阪・北浜の証券取引所で134年続いてきた現物株の市場が、きのう東京証券取引所に編入された。
東証の上場企業は3400社を超え、企業数と時価総額で世界3位になった。
両取引所の経営を統合した日本取引所グループが誕生したのは今年1月。今回の現物株に続き、来春には大阪が力を入れてきた先物などデリバティブ部門を大阪に集約する。
海外マネーを取り込むにも、海外の証券市場と提携を図るにも、日本の経済力をフルに代表する証券市場でなければ、優位に立てない。高速取引に対応するシステム投資を東阪バラバラでやる余裕もない。統合の背景にはそんな危機感がある。
企業活動や取引所そのものがグローバル化するなか、日本の証券市場にとっての切り札は、1500兆円に及ぶ個人金融資産だろう。
この潤沢な国内マネーと企業とをきちんと結びつけ、投機マネーに翻弄(ほんろう)されない土台をつくらなければならない。
だが、証券業界は手数料を稼ぎやすい投資信託に力を入れ、個々の企業の魅力を発掘する力は低下している。証券会社のアナリストが分析対象としないため、機関投資家のマネーが向かわない企業も多い。
折しも、年100万円までの投資を優遇する少額投資非課税制度が来年から始まる。じっくり投資したい人たちを呼び込めなければ、市場の持続的な成長にはつながらない。
かつて国内の取引所が新興企業向け市場の開設を競った際、未熟なまま上場して行き詰まる企業が相次ぎ、投資家の信頼を裏切った苦い教訓もある。
問題は、証券業界だけではない。銀行など間接金融を含めた産業金融全体が衰弱していないだろうか。
本来、優良企業の揺りかごとなるべきは地域の銀行など間接金融機関だ。だが、不良債権問題に懲りてリスクを避け、取引先の実力も把握できない。超低金利で融資意欲はなえ、国債運用に流れる。産業インフラの責任を果たせていない。
企業の育成といえば、新規起業の促進に目が行きがちだが、日本には下請けなどに甘んじながらも実力ある隠れた優良企業が多い。経営者の若返りなどで面目を一新することもある。
ここを日々の資金繰りなどでつながりのある銀行が支援し、さらなる飛躍を目指す企業が株式上場する。そんな金融機能が再生してこそ、証券市場も活性化していくはずだ。
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