◆政治と経済を再活性化させよう
山積する内外の政策課題に取り組むための確かな処方箋と能力を持つ政党はどこか、候補者はだれか。各党・候補者の訴えや実績を吟味し、大切な1票を託す相手を選びたい。
第23回参院選がきょう、投票日を迎えた。
世界とアジアの情勢が激動する中で、日本の誤りなき針路を見つけなければならない。
◆ねじれの解消が焦点だ
民間活力を引き出し、景気を安定した回復軌道に乗せる。人口減社会を乗り切れる社会保障制度を再設計する。国益を追求する外交戦略を練り、実行に移す。
そのためには、日本政治を再活性化させることが欠かせない。
参院選は、自民、公明両党が衆参ねじれ状況を解消できるかどうかが最大の焦点である。
ねじれ国会では、野党の協力なしでは、重要法案を成立させることが難しい。与党がねじれ解消を最優先するのは理解できる。
民主党は「ねじれの解消は与党の暴走につながる」と主張した。確かに、2010年参院選で衆参ねじれが生じたことは、当時の民主党政権の暴走に「歯止め」をかけることにつながった。
今回、ねじれが解消されるとしたら、民主党など野党が参院でかけてきた安倍政権に対する「歯止め」が有権者に評価されなかったことが一因と言えよう。
民主党は、衆院選、東京都議選と続けて大敗し、参院選は「党存亡をかけた戦い」となる。だが、依然として、政権担当時の失政による逆風を受けている。
第3極の日本維新の会、みんなの党や、共産、社民両党などを含む、各党の参院選での消長は、国会での野党連携のあり方や、将来の政界再編にも影響しよう。
投票の判断材料とすべきは、まず安倍政権の実績への評価だ。
◆責任ある原発政策は
経済政策「アベノミクス」による金融緩和や財政出動の結果、円高是正、株価上昇に加え、企業の景況感も改善してきた。
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加も決断した。出遅れをどう挽回するかは、今後の政府の交渉力にかかっている。
民主党は、物価上昇などアベノミクスの「副作用」批判を強めた。維新の会やみんなの党は、アベノミクスを支持しつつ、より大胆な規制緩和の必要性を強調した。
野党の主張にも一理あるが、具体策に関する経済論戦が深まらなかったのは残念である。
それは経済政策に限らない。
民主党の非現実的な09年政権公約(マニフェスト)の失敗を踏まえ、各党が公約に数値目標や財源の明示を避けたことが論争を物足りなくした面がある。
公約自体が重視されなくなっている。自公両党が連立政権の共通公約を見送ったのは象徴的だ。
エネルギー政策でも、空疎な脱原発論が横行した。
自民党だけは、安全が確認された原発の再稼働について、関係自治体の理解を得るよう政府が「最大限努力する」と踏み込んだ。
民主党と維新の会は「2030年代」の原発稼働ゼロを掲げた。共産、生活、社民の各党は再稼働を一切認めないという。
脱原発を唱えるなら、代替エネルギーの確保策や火力発電の燃料コスト大幅増の問題と合わせて論じなければ、無責任だろう。
外交面で安倍政権は、米軍普天間飛行場の辺野古移設の手続きを進め、日米関係を立て直した。一方、中国、韓国と首脳会談が開けず、野党の批判を受けている。
日本の安全保障環境が厳しくなる中で、どの党の主張が適切なのか、しっかりと見極めたい。
◆憲法改正も判断材料に
憲法改正も論点となった。改正の発議要件の緩和や、自衛隊の存在の明記、環境権など新たな権利の追加、道州制の導入といった統治機構の見直しなどである。
集団的自衛権の憲法解釈の見直しと合わせて、参院選後に重要な政治課題となるのは確実だ。
各党がどんな「新しい国のかたち」を描いているかを比較することも、投票の参考になろう。
今回、インターネットを利用した選挙運動が解禁された。政党・候補者の情報発信手段が増え、若者などの関心を高めるうえで一定の効果があったのではないか。
過去5回の参院選の投票率は、50%台後半にとどまっている。
政党や政治家を批判するだけでは政治は変わらない。投票所に足を運び、自らの選挙権を行使する。それが有権者の責任である。
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