13参院選 あす投票 参院の意義と役割も考えたい

朝日新聞 2013年07月20日

参院選あす投票 迷っている人たちへ

参院選の投票日があすに迫った。それなのに、まだだれに投票するか決まらない。そんな人は少なくないだろう。

朝日新聞社が16、17日に実施した参院選の情勢調査によると、まだ投票態度を明らかにしない人が選挙区で5割、比例区で4割にのぼった。

投票所へ行くかどうかを迷っている人もいる。

朝日新聞デジタルの特集「♯投票する?」には、数百件の声が寄せられている。

「投票しない」という人たちの、こんな書き込みがある。

「政治には非常に関心があるが、この人、この政党に託して良かったと思ったことはない」

「少数派(若者)である自分が投票したところで、何も変わらないから」

「投票を拒否して新しい民主主義の仕組みを模索しよう」

たしかに、最近の政治の体たらくは目に余る。幻滅する気持ちは分からないではない。

投票を棄権することで、政治に「ノー」の意思表示をするという考え方もあるだろう。

だが、そんな人たちはもう一度、考えてみてほしい。

消費税率の引き上げや社会保障の充実をどう進めるか。この選挙で当選した議員たちが、深く関わることになる。生活と将来に直結する問題を、丸投げしていいのだろうか。

幸い、この参院選からネット選挙が解禁になり、候補者の情報はふんだんにある。街頭演説を動画で見ることもできる。判断材料には事欠かない。

選挙は取っつきにくいという人には、新聞社などがインターネット上に開設している「ボートマッチ」がお薦めだ。

憲法改正、アベノミクス、原発再稼働など政策ごとに簡単な質問に答えるだけで、自分の考えがどの政党や候補者の主張に近いかが分かる。

重要なのは結果ではない。質問に答える過程で、自分の考えが整理できることだ。興味が出てきたら、改めてそれぞれの主張を読み比べ、候補者を絞り込んでいけばいい。

選挙期間中、身を入れて論戦を聞いてこなかったという人も慌てる必要はない。

新聞は、投票日が近づくと各政党や候補者の主張をまとめて掲載する。それに目を通すだけでも判断の助けになる。

ある政党や候補者の政策が自分の考えと百%一致することはまずない。そんなときは、最も関心のあるテーマに絞って投票してもいい。

まだ1日ある。ここはじっくり考えたい。

読売新聞 2013年07月21日

13参院選 きょう投票 日本の「針路」見据えた選択を

◆政治と経済を再活性化させよう

山積する内外の政策課題に取り組むための確かな処方箋と能力を持つ政党はどこか、候補者はだれか。各党・候補者の訴えや実績を吟味し、大切な1票を託す相手を選びたい。

第23回参院選がきょう、投票日を迎えた。

世界とアジアの情勢が激動する中で、日本の誤りなき針路を見つけなければならない。

◆ねじれの解消が焦点だ

民間活力を引き出し、景気を安定した回復軌道に乗せる。人口減社会を乗り切れる社会保障制度を再設計する。国益を追求する外交戦略を練り、実行に移す。

そのためには、日本政治を再活性化させることが欠かせない。

参院選は、自民、公明両党が衆参ねじれ状況を解消できるかどうかが最大の焦点である。

ねじれ国会では、野党の協力なしでは、重要法案を成立させることが難しい。与党がねじれ解消を最優先するのは理解できる。

民主党は「ねじれの解消は与党の暴走につながる」と主張した。確かに、2010年参院選で衆参ねじれが生じたことは、当時の民主党政権の暴走に「歯止め」をかけることにつながった。

今回、ねじれが解消されるとしたら、民主党など野党が参院でかけてきた安倍政権に対する「歯止め」が有権者に評価されなかったことが一因と言えよう。

民主党は、衆院選、東京都議選と続けて大敗し、参院選は「党存亡をかけた戦い」となる。だが、依然として、政権担当時の失政による逆風を受けている。

第3極の日本維新の会、みんなの党や、共産、社民両党などを含む、各党の参院選での消長は、国会での野党連携のあり方や、将来の政界再編にも影響しよう。

投票の判断材料とすべきは、まず安倍政権の実績への評価だ。

◆責任ある原発政策は

経済政策「アベノミクス」による金融緩和や財政出動の結果、円高是正、株価上昇に加え、企業の景況感も改善してきた。

環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加も決断した。出遅れをどう挽回するかは、今後の政府の交渉力にかかっている。

民主党は、物価上昇などアベノミクスの「副作用」批判を強めた。維新の会やみんなの党は、アベノミクスを支持しつつ、より大胆な規制緩和の必要性を強調した。

野党の主張にも一理あるが、具体策に関する経済論戦が深まらなかったのは残念である。

それは経済政策に限らない。

民主党の非現実的な09年政権公約(マニフェスト)の失敗を踏まえ、各党が公約に数値目標や財源の明示を避けたことが論争を物足りなくした面がある。

公約自体が重視されなくなっている。自公両党が連立政権の共通公約を見送ったのは象徴的だ。

エネルギー政策でも、空疎な脱原発論が横行した。

自民党だけは、安全が確認された原発の再稼働について、関係自治体の理解を得るよう政府が「最大限努力する」と踏み込んだ。

民主党と維新の会は「2030年代」の原発稼働ゼロを掲げた。共産、生活、社民の各党は再稼働を一切認めないという。

脱原発を唱えるなら、代替エネルギーの確保策や火力発電の燃料コスト大幅増の問題と合わせて論じなければ、無責任だろう。

外交面で安倍政権は、米軍普天間飛行場の辺野古移設の手続きを進め、日米関係を立て直した。一方、中国、韓国と首脳会談が開けず、野党の批判を受けている。

日本の安全保障環境が厳しくなる中で、どの党の主張が適切なのか、しっかりと見極めたい。

◆憲法改正も判断材料に

憲法改正も論点となった。改正の発議要件の緩和や、自衛隊の存在の明記、環境権など新たな権利の追加、道州制の導入といった統治機構の見直しなどである。

集団的自衛権の憲法解釈の見直しと合わせて、参院選後に重要な政治課題となるのは確実だ。

各党がどんな「新しい国のかたち」を描いているかを比較することも、投票の参考になろう。

今回、インターネットを利用した選挙運動が解禁された。政党・候補者の情報発信手段が増え、若者などの関心を高めるうえで一定の効果があったのではないか。

過去5回の参院選の投票率は、50%台後半にとどまっている。

政党や政治家を批判するだけでは政治は変わらない。投票所に足を運び、自らの選挙権を行使する。それが有権者の責任である。

産経新聞 2013年07月21日

参院選きょう投票 「強い国」へ確かな選択を

■憲法改正への姿勢見極めたい

参院選の投票日を迎えた。今世紀前半の日本の政治動向にもかかわる選挙の重みを感じながら、有権者は棄権することなく、投票所に足を運んでほしい。

最大の注目点は、衆参のねじれが解消され、「政権の安定化」が図られるかどうかだ。忘れてならないのは、日本が繁栄と安全を確保していけるかどうかの岐路に立たされていることである。

デフレから脱却して景気を回復軌道に乗せられるのか、中国が力ずくで奪取を図ろうとする尖閣諸島を守り抜けるのか。これがかなわなければ、国家再生を望むことは難しい。

≪日本の岐路を直視せよ≫

安倍晋三首相が進めるアベノミクスの評価や憲法改正への取り組みなど各党は一定の方向性を示した。内外の危機を克服できるのはどの政党なのかを十二分に見極めることが求められる。

どの程度の時間が割かれたかはともかく、最大の争点の一つは国民の間でも支持が拡大している憲法改正だった。

自民党や日本維新の会は、憲法改正の発議要件を緩和するため96条改正を主張した。安倍首相は終盤戦で「憲法9条を改正し、(自衛隊の)存在と役割を明記していくのが正しい姿だ」と語った。

与党の公明党が、自衛隊の存在や国際貢献を書き加えるなど「加憲」の立場から9条論議に応じる姿勢を示したのも注目点だ。

民主党は「未来志向の憲法を構想する」との抽象論にとどまり、96条の先行改正に反対する一方、9条への明確な見解を示さなかった。共産党などは「平和憲法を守れ」と改正反対を主張した。

とりわけ9条を変えなければならないのは、今の9条の下では自衛権が強く制約され、抑止力が働かないためだ。憲法改正を通じて「強い日本」を取り戻そうと腐心しているのは誰かも、重要な選択肢としなければならない。

首相が大胆な金融緩和と機動的な財政出動、企業の投資を喚起する成長戦略を「三本の矢」として打ち出したアベノミクスに対する評価も大きな論点だった。

与党は年率2%の物価上昇目標を掲げ、今年1~3月期の国内総生産(GDP)は個人消費を中心に年率換算で実質4・1%の高い伸びを示した。6月の日銀短観でも大企業の景況感が改善し、設備投資を増やす姿勢が示された。順調な滑り出しといえる。

維新やみんなの党は、規制改革への大胆な取り組みなどアベノミクスの成長戦略の不十分さを指摘したが、民主党など多くの野党は、物価上昇や金利上昇などアベノミクスの「副作用」を批判し、安定雇用の確保や賃金の引き上げに重点を置く政策を提示した。雇用や賃上げにも企業収益の向上が不可欠だ。その道筋を明確に示せたといえるだろうか。

≪「一票」が政策を変える≫

国民生活や産業に直結するエネルギー政策でも、自民党と野党との姿勢の違いが鮮明となった。自民党は、安全性を確保した原発の早期再稼働について、政府が地元の説得にあたるとした。

民主党などは「脱原発」を進めるという。太陽光、風力など再生可能エネルギーの拡大を強調するが、原発の代替電源をどの程度確保できるかは不透明のままだ。

火力発電の大幅増が電気料金の引き上げにつながり、中小企業などに重い負担を強いている。毎年夏と冬に節電を求められる状況も変わらず、電力の安定供給が果たされているとはいえない。資源の少ない日本にとっての原発の必要性について、改めて冷静に考えることが重要だ。

先送りが許されない社会保障制度改革では、サービス抑制や負担増など有権者に不人気な政策について、与野党とも議論を逃げる姿勢が目立ったのは残念だ。政権当時に税と社会保障の一体改革を自民、公明と進めた民主党が「社会保障切り捨て」と抑制策の批判を始めたのは無責任だ。

懸念されるのは低投票率だ。昨年暮れの衆院選は59・2%で過去最低となり、6月の東京都議選も43・5%と低迷した。選挙後には個々の有権者にとって恩恵を被るもの、新たな負担を迫られるものなど多くの政策が実施される。自分の投票で政治は変わらない、などという他人任せの態度では現状を変えることはできない。

より多くの人が自ら一票を投じることを望みたい。

読売新聞 2013年07月20日

13参院選 あす投票 参院の意義と役割も考えたい

第23回参院選は、あす21日に投開票される。

参院には本来「良識の府」として、衆院に対する抑制や補完の役割が期待されている。

だが、近年、とくに衆参ねじれ国会の下で、与野党が激しく対立し、参院は政治を停滞、混乱させる「政局の府」と化してきた。

選挙戦で、参院の在り方についての議論がほとんど聞かれないのはどうしたことか。仮に、自公両党が参院で過半数を制し、ねじれを解消できたとしても、衆院とほぼ対等の権限を持つ「強すぎる参院」の問題は残る。

民主党の輿石参院議員会長はNHKの討論番組で、ねじれについて「決められない政治の元凶というが、(それにより)かろうじて政治に緊張感が保てているのも事実だ」と、“効用”を説いた。

しかし、2008年の通常国会で輿石氏が主導して日銀総裁人事を葬ったような政争まで「緊張感」と言えるのだろうか。

先の国会でも混乱が生じた。衆院の小選挙区を「0増5減」する区割り法は衆院通過後、参院で60日以上、審議されなかった。憲法の規定で否決とみなされ、衆院の再可決により成立した。

参院の存在意義を自ら否定する「自殺行為」にほかならない。

加えて、参院野党は首相問責決議を可決し、審議を拒否した。与野党で成立に合意していた法案さえ廃案になった。

自民党も、野党時代は問責決議を乱発した。参院の権威を(おとし)めた点では、同罪である。

参院の在り方を見直す必要がある。衆院と似通っている参院の選挙制度を抜本的に改革することが一つのきっかけになろう。

「1票の格差」の緊急是正のために、選挙区定数を「4増4減」した改正公職選挙法は、16年の参院選までに抜本改革の結論を得ると明記している。

衆院の選挙制度改革を進めようと、首相は有識者による第三者機関を設置することを提案した。参院でも、制度改革を検討すべきだ。ねじれが生まれにくい選挙制度にする視点が欠かせない。

参院改革は古くて新しいテーマだ。政党の影響力を弱めるため党議拘束を外すといった処方箋は出そろっている。参院の首相指名権を廃止し、憲法の定める衆院の優越規定を拡大するなど、憲法改正に踏み込む議論も必要だろう。

参院選後は、与野党が参院改革の協議につくことを求めたい。

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