日本は、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉にどのように対応すべきか。
参院選で各党の姿勢が問われている。
安倍首相の参加表明を受けて、米国議会の承認手続きが近く終了する。米国、豪州など11か国は15~25日にマレーシアで交渉を行う。その最後の数日間、日本はようやく、交渉のテーブルに着くことができる見通しだ。
人口が減る日本は、自由貿易推進でアジアの活力を取り込み、成長に弾みを付ける必要がある。
11か国は年内の大筋合意を目指し、交渉を本格化させる。出遅れた日本は通商ルール作りで巻き返す道を探らねばならない。
そうした厳しい状況にもかかわらず、各党の公約は危機感に乏しく、TPPへの対応は大きな争点になっていない。
自民党はTPPについて、「交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることにより、国益にかなう最善の道を追求する」と強調している。
しかし、総合政策集ではコメ、麦などを念頭に、「重要5品目の聖域を最優先し、それが確保できない場合は脱退も辞さない」と主張した。北海道連は「聖域なき関税撤廃は認めず、北海道の立場を主張する」とさらに強硬だ。
首相が「国益を確保する決意で交渉していく」と述べたように、日本にはしたたかな交渉力の発揮が求められる。
自民党は公明党とともに、政府を後押しし、TPPに国益を反映させる方針を示すべきだ。
一層の市場開放に備えた「強い農業」の実現へ、現実的な方策を訴えることも重要な課題だ。
TPP推進を主張する日本維新の会とみんなの党は、減反政策の見直しや農協改革などを掲げる。活発な論戦を期待したい。
民主党は公約で、「高いレベルの経済連携を推進し、世界のルール作りを主導する」としながら、「TPPは脱退も辞さない姿勢で臨む」と主張している。農業の強化策は抽象的である。
共産党、生活の党、社民党、みどりの風は、そろってTPP反対を主張している。だが、「貿易立国」として発展した日本が、アジアの自由貿易圏から外れる道を選べば、将来展望は開けまい。
TPP交渉は関税撤廃だけでなく、投資ルールや知的財産権保護など幅広い分野に及ぶ。競争力強化にどうつなげるのか。有権者は各党の訴えを見極めてほしい。
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