優れた人材をどのように育成するのか。日本の将来を左右する重要なテーマである。参院選では各党の教育政策をしっかりと見極めたい。
昨年末に発足した安倍政権は、教育再生を経済再生と並ぶ重点課題に位置づけてきた。首相直属の教育再生実行会議は、いじめ対策や教育委員会改革など、3次にわたる提言をまとめた。
民主党政権下で抽出方式に縮小された全国学力テストを再度、全員参加方式に戻した。学校週5日制を見直し、自治体の判断で土曜日に授業を行いやすくするよう省令を改正する方針も示した。
政権交代後、半年間で推進した政策の是非が、参院選ではまず、問われることになるだろう。
自民党は参院選の公約の柱として、「世界で勝てる人材の育成」を掲げ、英語教育の強化や理数教育の充実をうたっている。
国際社会で活躍したり、新たな科学技術を創造したりする力を育むことが、成長戦略を下支えするという考えが背景にある。
世界大学ランキングで100位以内に入る日本の大学は、現在2校しかない。それを今後10年間で10校以上に増やす、といった目標も示した。ただ、高等教育の質をどう底上げして実現させるのか、具体策は見えてこない。
自民党は、民主党政権が導入した高校授業料の無償化の対象に、所得制限を設ける方針だ。
その一方で、自民、公明両党は3歳から小学校入学までの幼児教育の無償化に取り組むことを公約に盛り込んだ。実施するには、年約7900億円もの予算が必要だと見込まれている。
民主党と生活の党は、高校無償化について、現行のまま継続すべきだと主張する。
大学生を対象とした、返済する必要のない給付型奨学金制度の創設を多くの党が訴えている。
確かに、日本は他の先進国と比べ、幼稚園と大学における私費負担の割合が特に高い。家計の教育費の軽減が課題になっている。
だが、政府の財政状況は厳しい。多額の予算を要する政策を打ち出すのなら、各党は、財源についても具体的に示す必要がある。
参院選後には、教育再生実行会議で、大学入試改革や「6・3・3・4制」の見直しに関する審議が控えている。いずれも教育現場に大きな影響を与える中長期的なテーマである。与野党の論議を深めてもらいたい。
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