婚外子差別 是正の機会を逃すな

朝日新聞 2013年07月11日

婚外子差別 是正の機会を逃すな

生まれついた巡り合わせによる差別をこれ以上、放っておいてはいけない。

結婚していない男女間の子の相続分を、結婚した夫婦の子の半分にする民法の規定は憲法にかなうのか。最高裁がきのう、大法廷で弁論を開いた。

違憲の判断や、判例を変えるときは大法廷でしかできない。最高裁はこの規定について、18年前に合憲とする決定を出したが、今回はその判断を改める可能性が大きくなっている。

理不尽な差別をただす機会を逃してはならない。

この規定は「家」制度をとる明治時代の旧民法から引き継がれた。法律婚の尊重と婚外子の保護のバランスを図ったものだと説明されてきた。

しかし、出自は本人の意思や努力で変えられず、それを理由に差別するのは筋違いだ。家族のあり方や価値観が多様になった現代社会には通用しない。

問題は、経済的な相続だけにとどまらない。婚外子が婚内子より社会の立場上、劣っているかのような差別の土壌をつくってきた面もある。

相続はこの規定通りにしなくてはならないわけではなく、実際には家族ごとの意思で配分されている。だとしても、法律が当事者の判断に先んじて子どもを区別する必要はない。

同様の規定をもっていたドイツやフランスなども法改正しており、先進国では日本だけが残った。国連の人権機関は、国際基準に反するとして政府に繰り返し勧告してきた。

改めて問われるのは、問題を放置してきた国会の怠慢だ。

法務省は96年、相続差別をなくす民法改正の要綱案をまとめた。だが一部国会議員が「男女の婚外関係を促すことになる」などと反対した。法案提出もされず棚上げされてきた。

95年の最高裁の合憲判断には15人の裁判官のうち10人が賛成した。だが、その10人のうち4人は補足意見で、立法による解決への期待を述べた。その後の判断でも、小法廷が補足意見で法改正を促してきた。

国会のだらしなさは、一票の格差をめぐる問題でも見飽きた光景だ。裁判所に違憲と言われないと動けない、言われても動きが鈍い。そんな国会では、正義を実現できる代表機関とは言いがたい。

最高裁が法令を違憲としたのは戦後8件しかない。だが、少数者である婚外子の声は小さくとも、法の下の平等という重い価値が問われている。

もはや司法による救済しかないのではないか。

毎日新聞 2013年07月12日

婚外子差別 違憲判断の機は熟した

結婚していない男女間の子(婚外子)の遺産相続分を、結婚した男女間の子の半分とした民法の規定の是非を争う裁判で、最高裁大法廷が当事者から意見を聞く弁論を開いた。「法の下の平等」を保障する憲法に違反するか否かが最大の焦点だ。

婚外子側は「選択の余地のない出生によって子どもが差別を受けるべきではない」「自分の価値が半分だと言われた気がした」と、規定によって差別が助長され、劣等感を抱いてきたことを切々と訴えた。

もっともな意見だ。最高裁大法廷は1995年、法律婚尊重の観点から規定を合憲と判断したが、事実婚やシングルマザーの増加など家族の形は多様化し、社会の価値観も変わった。明らかな不平等を放置する合理性はもはや見つけられない。

最高裁は秋にも合憲判断を見直す可能性がある。差別される人たちを救済するため、時代に即した明快な違憲判断を示してもらいたい。

この規定が作られたのは120年前の明治時代だ。国連自由権規約委員会は93年、規定の改正を日本政府に勧告し、その後も国連の人権機関が何回も勧告を繰り返した。

法相の諮問機関、法制審議会は96年、相続の平等を盛り込んだ民法改正案を答申した。だが、伝統的な法律婚重視を主張する国会議員の反対が強く法案は提出されないまま、議論は棚上げされ続けてきた。

一方、かつては婚外子差別があった欧米諸国は相続の平等が実現し、残された日本への目は厳しい。

最高裁大法廷の95年の決定の際も、裁判官15人中5人が反対意見を述べた。その後小法廷が5回合憲判断を示した際も常に1~2人が反対意見を述べてきた。

一昨年違憲判断を示した大阪高裁は「国内的、国際的な環境の変化が著しく、相続平等化を促す事情が多く生じている」と、指摘した。司法による救済の機が熟したということではないか。

婚外子の出生割合は95年の1.2%から2011年は2.2%に増え、2万人を超す。それでも全体から見れば、少数派だ。世論を大きく動かしにくい状況の中で、少数者の声をすくい上げ、社会が差別撤廃に向き合うか否かが問われてもいる。

議員間の意見の隔たりが大きいからと、議論を放棄してきた国会の姿勢をまず変えねばならない。違憲判断が出れば是正は待ったなしだ。

その場合、いつの時点で違憲の効力が生じたかによって、過去に決着したケースも含めて、相続実務に大きな影響が出るとみられる。混乱を避けるためには速やかな立法措置が必要だ。政府も国会も正面から取り組む覚悟を決めてもらいたい。

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