毎日新聞 2013年07月14日
熱中症予防 過度の我慢は禁物だ
7月に入り、猛烈な暑さが日本列島を襲った。気象庁によると、7月上旬の平均気温(速報値)は北日本で過去最高となり、東日本で平年より2.2度、西日本で同1.8度高かった。今年は、関東甲信や九州~東海地方で平年より6~15日早く梅雨が明けた。梅雨明け直後は、体が暑さに慣れていないので、熱中症になりやすい。こまめな水分補給や塩分の摂取で、予防に努めたい。
気象庁の3カ月予報によれば、7~9月は太平洋高気圧が平年より強く張り出し、北日本から西日本にかけて高温傾向が続く見込みという。
熱中症予防には、気温が高い時間帯は激しい運動や作業を避け、冷房を適切に使うことが大切だ。暑さを過度に我慢するのは禁物である。
東日本大震災から3年目の夏を迎え、政府は7~9月の平日午前9時から午後8時まで、企業や家庭に自主的な節電を要請している。
不要な電気の使用は控えるべきだが、電力不足が心配だからと冷房を使わず、熱中症になってしまっては元も子もない。政府によれば、猛暑だった2010年並みの暑さとなっても、今夏は大手電力各社の電力供給能力に余力があるという。
もちろん、冷房の利いた公共施設や飲食店などで涼しさを共有し、自宅の電気代も節約する「クールシェア」などの取り組みは大歓迎だ。
熱中症は、暑さで体内の水分や塩分のバランスが崩れることなどで起き、体温上昇やけいれん、意識障害などの症状が表れる。重症化すると命にかかわる。症状が出たら涼しい場所に移動し、扇風機や水を使って体を冷やす。自力で水が飲めないようなら、救急搬送が必要だ。
特に注意が必要なのは高齢者だ。体温調節機能が低下し、暑さやのどの渇きも感じにくくなっている。東京都観察医務院によると、6~10日に東京23区で熱中症で亡くなった11人は全員60歳以上。10人は屋内にいたが、冷房を使っていなかった。高齢者だけで暮らす世帯では、熱中症に気づかないままに体調を崩しかねない。どうやって見守るのか。地域や自治体の取り組みも問われる。
乳幼児も要注意だ。体温調節機能が発達していないうえ、背が低いので、地面からの熱を受けやすい。
熱中症は弱者を直撃するのだ。
政府は今年、7月を「熱中症予防強化月間」と定めた。環境省は全国841地点で熱中症の危険度を予測し、ホームページで公表している。こうした情報も上手に活用しよう。
地球温暖化や都市部のヒートアイランド現象の進展、高齢化に伴い、熱中症の危険性は今後一層高まるはずだ。熱中症に備える知恵を、社会全体で蓄積していきたい。
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読売新聞 2013年07月11日
熱中症予防 過度に節電せず冷房の活用を
日本列島は連日、猛暑に見舞われている。
熱中症に十分注意し、夏を乗り切りたい。
10日も各地で最高気温が35度以上の猛暑日となった。山梨県甲州市では、今年になって全国で最も高い39・2度を記録した。今月に入り、熱中症で病院に搬送される人が相次ぎ、死者も出ている。
連日の猛暑は、太平洋高気圧と、中国大陸から押し出されたチベット高気圧が日本上空で重なる「ダブル高気圧」が原因だ。この暑さは今週末まで続くという。
気象庁は、この夏の気温は全国的に平年より高めになると予想している。ダブル高気圧が去っても、警戒は怠れない。
熱中症は、高温多湿の状態で、体温の調節機能が働かなくなって起きる。吐き気、だるさが表れ、重症になると意識が薄れる。
猛暑日が多かった2010年には1700人余が死亡した。
熱中症の予防で重要なのは、水分と塩分をこまめに補給することだ。暑さや渇きを感じにくくなる高齢者は、特に注意が要る。のどが渇いていなくても、頻繁に水分をとってほしい。
体温調節機能が未発達な乳幼児も、リスクが高い。外出時は吸水性のある素材の帽子をかぶらせ、ぬれたタオルで首回りなどをふくとよい。家族が子供の状態をよく観察することが必要だ。
学校の部活動などでの発症も多い。運動の際は30分程度ごとに休息し、猛暑日には激しい運動を控えるべきだ。指導者には、この点の留意が求められる。
室内でも油断はできない。熱中症の半数程度は住宅内で起きている。室温が28度を超えると危険が高まるという。
「節電のため」と、エアコンの使用を控え、暑さを我慢するのは禁物である。上手に活用し、室温を調整することが大切だ。
就寝中の熱中症にも用心しなければならない。夜間は電力の需要が低下することから、過度に節電する必要はない。
電力各社も「無理のない範囲で節電を」と呼びかけている。
エアコンに扇風機を併用することで、冷房効果は高まる。日中、すだれやよしずを使えば、室温の上昇を抑えられる。
暑さを和らげる様々な工夫を生活に取り入れたい。
環境省は地域ごとに、熱中症の発症危険度をホームページで公表している。新聞、テレビの気温予想など、様々な情報を活用して、熱中症を防いでほしい。
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産経新聞 2013年07月10日
熱中症予防 適切な冷房に遠慮は無用
列島各地で猛烈な暑さが続いている。9日に観測史上最高の39・1度を記録した山梨県甲州市(勝沼)をはじめ、関東甲信、東海地方などでは連日の「猛暑日」(最高気温が35度以上)となり、熱中症で病院に搬送される人も相次いだ。
この暑さは12日ごろまで続く見通しという。さらに気象庁の3カ月予報でも、今夏は全国的に気温が高めになる傾向が強い。「暑く長い夏」を乗り切るため、節電よりもまず健康に留意して、熱中症予防に万全を期したい。
今年は関東甲信から九州地方までの梅雨明けが平年より6~15日早かったうえ、大陸側から張り出したチベット高気圧が日本の上空で太平洋高気圧と重なり、気温上昇に拍車をかけているという。
今はまだ、体が暑さに慣れていない。とくに高齢者や乳幼児のいる家庭では、こまめな水分、塩分の補給と冷房の使用などで、熱中症を未然に防ぐことが大切だ。
熱中症は、高温多湿の環境で体の熱を十分に放出できず、水分と塩分のバランスが崩れて体温調節機能がなくなったときに起きやすい。めまいや吐き気、脱力感などの症状があり、重い場合は意識障害や命を落とす危険もある。
炎天下の外出や運動を避け、十分な睡眠と休養をとるなど体調管理が予防の基本だが、気象庁や厚生労働省は、冷房の「適切な利用」を呼びかけている。
「適切な」というのは「控えめに」という意味ではない。高齢になると発汗などの体温調節機能が低下し、暑さに対する感受性も鈍くなる。
ふだんから節電を心がけているお年寄りが「このぐらいの暑さは大丈夫」と思って冷房の使用を控え、体に大きな負担がかかることの方が心配だ。
福島第1原発の事故以降、夏の電力供給への不安と「節電を求める空気」が恒常化しつつある。冷房の効いた公共施設や大型店舗などで日中を過ごすなど、節電と暑さ対策を兼ねた「クールシェア」の取り組みも広がっている。
しかし節電は、熱中症対策の前提条件ではない。体調を崩してまで節電に留意することはない。
高齢者や乳幼児のいる家庭が遠慮なく冷房を使えるくらいの電力は、国と電力会社が責任をもって確保すべきだ。節電が命を危険にさらすようでは本末転倒だ。
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