社会保障と参院選 不人気な議論も逃げるな

読売新聞 2013年07月10日

13参院選 社会保障 負担増の論議は避けられない

少子高齢化が急速に進む中、年金、医療、介護などの社会保障費は増え続けている。

持続可能な社会保障制度をどう築いていくか。参院選の重要な争点である。

自民党が、価格の安い後発医薬品の使用拡大や、複数の医療機関での重複診療抑制を打ち出したのは、危機感の表れと言えよう。

だが、自民を含め、各党の公約を見ると、国民に負担増を求めることには及び腰だ。

例えば、高齢者医療の自己負担率を引き上げる問題である。

健康保険法などは70~74歳の医療費の窓口負担を2割と定めている。それにもかかわらず、2008年以降、歴代政権は特例措置として1割に抑えてきた。高齢者の反発を恐れてのことだろう。

公費の支出削減のため、法定の2割への引き上げは必要だ。

しかし、この問題について、自民、公明、民主各党は公約で言及していない。共産、社民両党は引き上げに反対している。

田村厚生労働相は9日の記者会見で、特例措置を見直す意向を示したものの、廃止する時期については言明しなかった。

医療費の増加をどう抑えるのか。財源をどう確保するのか。各党は議論を深めてもらいたい。

民主、共産、社民各党が、財源を示さずに、医療費増大につながる診療報酬の引き上げを主張しているのは無責任に過ぎよう。

日本維新の会は「高齢者向け給付の適正化」を提起している。年齢によって異なる現行の医療費の自己負担割合を一律にし、「所得に応じた負担」にする内容だ。

年金の支給開始年齢の引き上げもうたっている。いずれも検討すべき課題だろう。

少子化対策も重要だ。

わが国の出生数は昨年、過去最少の103万7000人にとどまった。高齢者を支える現役世代の減少が続けば、社会保障制度の根幹を危うくする。

働きながら子育てできる環境整備が欠かせない。待機児童の解消が求められる中、保育の充実では各党の足並みはそろっている。

自民党は、17年度までに40万人の保育の受け皿確保を掲げた。ただ、自治体とどう連携するかなど、懸案は多い。実現への具体策を示すことが大切である。

日本の少子化対策予算は、欧米に比べて少ない。高齢者に手厚く、現役・子育て世代に薄い社会保障給付を是正することが必要だ。

産経新聞 2013年07月08日

社会保障と参院選 不人気な議論も逃げるな

これ以上の先送りが許されない社会保障制度改革は、参院選で論じ合うべき最重要課題だ。

経済成長や行政改革だけでは、膨張する社会保障費をまかなっていくにはとても追いつかない。急速に進む少子高齢化にはどう対応するのか。

立ち止まっていては日本そのものが立ちゆかなくなるという危機感を持って、改革の全体像を明示すべきだ。それなしには国民の将来に対する不安は拭えない。

各党には論戦を通じて、「逃げられない課題」を解決するための選択肢を示してほしい。

政府の「社会保障制度改革国民会議」が近く最終報告書の素案を示す予定だ。しかし、自民、民主、公明の3党の公約には、社会保障・税一体改革で棚上げされた70~74歳の医療費窓口負担の2割への引き上げや、年金の支給開始年齢引き上げなど国民に痛みを求める改革項目は見当たらない。

自民党は「国民会議の審議の結果等を踏まえて必要な見直しを行う」と公約でうたっている。国民会議を隠れみのにして、サービスの抑制や負担増など有権者に不人気な政策だからと議論を避けていることは許されない。

改革の大きな方向性やビジョンを示すことこそ、政党の役割だろう。一体改革を進めた3党には、より大きな責任があることをもっと認識してもらいたい。

年金や医療・介護費用の抑制は緊急の課題だ。社会保障費は医療技術の革新もあって毎年1兆円規模で膨らむ。消費税増税で当面の財源確保にめどが立つとはいえ、支払い能力に応じて負担する仕組みに改めなければ早晩、制度は行き詰まる。

ところが、各党の公約は細かな政策課題は列挙しているものの制度全体をどう抑制し、どこに重点配分しようとしているのかはっきりしない。それどころか、高額医療の限度額引き下げや低所得者の年金加算など拡充策が目立つ。

民主党は、財源確保策を示すことなく、巨額の財源を必要とする最低保障年金の創設をまたもや持ち出した。日本維新の会やみんなの党は年金の「積立方式」を掲げているが、移行期における現行制度との二重負担の懸念をどう解決するのだろうか。

国民受けしそうなアイデアを並べ立てているだけでは、問題は解決しない。

この記事へのコメントはありません。

この社説へのコメントをどうぞ。
お名前
URL
コメント

この記事へのトラックバックはありません。

トラックバックはこちら
http://shasetsu.ps.land.to/trackback.cgi/event/1463/