少子高齢化が急速に進む中、年金、医療、介護などの社会保障費は増え続けている。
持続可能な社会保障制度をどう築いていくか。参院選の重要な争点である。
自民党が、価格の安い後発医薬品の使用拡大や、複数の医療機関での重複診療抑制を打ち出したのは、危機感の表れと言えよう。
だが、自民を含め、各党の公約を見ると、国民に負担増を求めることには及び腰だ。
例えば、高齢者医療の自己負担率を引き上げる問題である。
健康保険法などは70~74歳の医療費の窓口負担を2割と定めている。それにもかかわらず、2008年以降、歴代政権は特例措置として1割に抑えてきた。高齢者の反発を恐れてのことだろう。
公費の支出削減のため、法定の2割への引き上げは必要だ。
しかし、この問題について、自民、公明、民主各党は公約で言及していない。共産、社民両党は引き上げに反対している。
田村厚生労働相は9日の記者会見で、特例措置を見直す意向を示したものの、廃止する時期については言明しなかった。
医療費の増加をどう抑えるのか。財源をどう確保するのか。各党は議論を深めてもらいたい。
民主、共産、社民各党が、財源を示さずに、医療費増大につながる診療報酬の引き上げを主張しているのは無責任に過ぎよう。
日本維新の会は「高齢者向け給付の適正化」を提起している。年齢によって異なる現行の医療費の自己負担割合を一律にし、「所得に応じた負担」にする内容だ。
年金の支給開始年齢の引き上げもうたっている。いずれも検討すべき課題だろう。
少子化対策も重要だ。
わが国の出生数は昨年、過去最少の103万7000人にとどまった。高齢者を支える現役世代の減少が続けば、社会保障制度の根幹を危うくする。
働きながら子育てできる環境整備が欠かせない。待機児童の解消が求められる中、保育の充実では各党の足並みはそろっている。
自民党は、17年度までに40万人の保育の受け皿確保を掲げた。ただ、自治体とどう連携するかなど、懸案は多い。実現への具体策を示すことが大切である。
日本の少子化対策予算は、欧米に比べて少ない。高齢者に手厚く、現役・子育て世代に薄い社会保障給付を是正することが必要だ。
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