ガス田と中国 背信行為に対抗措置とれ

朝日新聞 2013年07月07日

ガス田開発 中国は合意に立ち返れ

東シナ海の日本と中国の中間線の近くで、中国が新たなガス田開発の施設をつくり始めたことが明らかになった。

これは「共同開発をできるだけ早く実現する」とした08年6月の日中政府間合意に反する行動である。中国側はただちに作業をやめるべきだ。

東シナ海の排他的経済水域をめぐり日中間には争いがある。日本は両国海岸から等距離の線を唱え、中国はより東側の大陸棚沿いまでを主張してきた。

一方で中国はガス田については、日本が主張する中間線よりも中国寄りの海域で開発してきた。今回はさらに中国寄りの場所だ。完全に自国の管轄で、問題ないと言いたいようだ。

だが、日本のいう中間線とは「最低でもそこまでは日本に権利があるのが当然」という仮の線引きにすぎない。中間線から中国寄りの部分での権利を放棄したわけではない。

要するに合意のない海域なのである。だからこそ、経済水域の境界線は棚上げし、線引きが済むまで互いに配慮しながら共同開発を進める、との趣旨で合意したはずだった。

今回、日本政府の抗議に対して中国外務省の報道官は「非難されることではない」と反論した。合意を忘れたとしか思えない、残念な発言だ。

10年5月にはこの問題で条約を結ぶ交渉に入ると決めたが、第2回交渉の直前、中国漁船が日本の巡視船にぶつかる事件が起き、交渉は止まった。

それでも11年末の日中首脳会談では「東シナ海を平和・協力・友好の海にする」ことが再確認された。昨年から尖閣諸島問題がこじれたものの、共同開発の合意は破棄されていない。

この海域で中国はなぜガス田開発を続けるのか。経済的な理由もあるだろうが、境界線が未確定なのをいいことに、施設をつくって既成事実を積み重ねているとしか見えない。海洋進出を強める軍の動向と歩調を合わせているようにも見える。

日本に強くあたることが支持されやすい空気が中国の政府内や世論にあることは容易に想像できる。尖閣問題で譲らぬ日本に圧力をかける狙いもあろう。だが、今回の行動は、関係改善の糸口をさがす日本側関係者も失望させている。

事態をいっそう悪化させるのは両国の利益にならない。厄介な問題を脇に置いて協力しあう08年の合意は、もめごとへの対処法として国際的な常識にかなっている。合意の精神に立ち返り、日中関係を立て直すきっかけを探らねばならない。

読売新聞 2013年07月09日

中国とガス田 一方的な開発は認められない

沖縄県・尖閣諸島を巡って対立している日本と中国の関係を一層緊張させる重大な事態だ。

日中の境界が画定していない東シナ海の中間線付近で、中国が新たなガス田開発に着手したことが発覚した。

既成事実を積み重ね、力ずくで海洋権益を得ようとする中国の習近平政権の強硬姿勢が一段と鮮明になったと言えよう。

日中両国は2008年6月、両国から等距離の中間線に隣接する白樺ガス田を共同開発し、中間線をまたぐ特定海域を共同開発区域にすること、さらに、その他の海域での共同開発に向けた協議を継続することで合意した。

海底資源に主権的権利が及ぶ排他的経済水域(EEZ)の境界線を巡って、中間線を主張する日本と、沖縄トラフまでとする中国の見解の溝が埋まらないためだ。

今回、中国の掘削施設の新設作業が確認されたのは、中間線から中国寄り西側約26キロの海上だ。日中間に合意がないまま一方的に開発する行為は容認できない。

安倍首相が「合意にはしっかり従ってもらいたい」と中国を批判したのは当然である。菅官房長官も中国に抗議の意を表明した。

ところが、中国外務省報道官は、「中国が管轄する海域での開発活動で、非難される点はない」と開き直っている。中間線より中国側の海域のため、全く問題がないとでも言うのだろうか。

新たなガス田開発は、「海洋強国」化を加速する習政権が、南シナ海同様、東シナ海でも資源開発を推進しようとする表れだ。

尖閣諸島周辺では、監視船による日本領海への侵入を繰り返すばかりか、最近は海洋調査船まで投入した。沖ノ鳥島から北へ約85キロの日本のEEZ内にも、別の調査船を派遣した。触手を西太平洋にまで伸ばそうという勢いだ。

海洋での一連の動きは、安倍政権に対する圧力を強める習政権の狙いもあるのだろう。日本としては中国の圧迫に動じることなく、08年の合意に基づき、東シナ海の共同開発交渉を進めるべきだ。

そもそも、ガス田合意を実現するための条約締結交渉を、10年に尖閣諸島沖で発生した中国漁船衝突事件を機に一方的に中断したのは中国である。その後も、日本の交渉再開要請に応じていない。

これでは、政府間合意さえ簡単に反故(ほご)にする「異質の大国」としてのイメージが、国際社会で定着するだけではないか。

習政権はガス田開発を中止し、交渉再開に応じねばならない。

産経新聞 2013年07月06日

ガス田と中国 背信行為に対抗措置とれ

東シナ海のガス田「樫」付近で、中国が掘削のための海洋プラットホーム建設に着手するなど、一方的に開発を進めている。尖閣周辺での度重なる領海侵犯に加え、重大な背信行為だ。

外務省が駐日中国大使に抗議したのは当然である。中国は「自国が管轄する海域だ」として、抗議を受け入れない意向だ。

中国が開発する海域は、日本が主張する排他的経済水域(EEZ)の境界線「日中中間線」より中国側にあるが、中国の主張は通らない。

平成20年6月、日中両国はガス田の共同開発などで合意した。中間線をまたぐ4つのガス田のうち「白樺」には日本も出資し、「翌檜」付近も共同開発海域を設定すると決めた。「樫」「楠」の2つのガス田については、継続協議とされた。

「樫」付近では現状維持が求められているのだ。中国は21年1月にも掘削を行い、生産段階に入ろうとした。今回の行為も明確な合意違反であり、ただちに開発をやめるべきだ。中国の無断開発は許されない。

日本は中国に対抗するため17年、当時の中川昭一経済産業相が中間線の日本側海域に鉱業権を申請していた石油会社に試掘権を付与した。しかし、後任の二階俊博経産相が「私は試掘の道をとらない」とストップをかけたままになっている。

中国にこれ以上の既成事実を積み重ねさせないためにも、安倍晋三政権はガス田付近の試掘を再検討してほしい。日本側にも対抗措置が必要だ。

最近はガス田以外でも、中国による日本のEEZの管轄権への侵害行為が相次いでいる。

日本最南端の沖ノ鳥島周辺のEEZでは今月初め、中国科学院所属の海洋調査船の航行が確認された。調査に必要な日本の同意を得ておらず、海上保安庁の巡視船が無線で呼びかけたが、応答はなかった。中国は沖ノ鳥島を「岩」と主張し、日本のEEZ設定を一方的に批判している。

尖閣周辺のEEZでは、中国の石油会社所属の海洋調査船が先月から無通告で航行している。

中国の挑発行為は、参院選を意識したものとも考えられる。各党はこれに臆せず、日本の領土と海洋権益をいかに守るかについても熱い論戦を期待したい。

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