参院選スタート 経済再生への具体策競え 成長戦略の覚悟を聞きたい

朝日新聞 2013年07月05日

経済論戦 将来世代への責任は

参院選が公示された。

論戦の中心は安倍政権の経済政策、アベノミクスだ。

与党が円高の是正や株価の上昇、企業業績の好転を背景に、その「実績」を強調するのに対し、野党は食料品の値上がりといった国民生活への副作用を批判する。

こうした舌戦はもちろん大切だ。しかし、私たち有権者は政治家が語りたがらないことに目を向ける必要がある。

膨らみ続ける借金にどう歯止めをかけ、将来世代へのつけ回しを改めていくか、という問題である。

財政再建をめぐっては昨年、民主党政権と野党だった自民、公明両党が「社会保障と税の一体改革」を成立させ、2段階の消費増税を決めた。

だが、国の借金総額は国内総生産(GDP)の2倍、1千兆円を超えて、なお増え続ける。消費増税で事足れりという甘い状況にはない。

経済成長による税収増に、増税を中心とする負担増と、歳出の削減をあわせた「3本の矢」こそが必要だ。

そうした苦い薬を示して、初めて責任ある政党と言えるはずだが、安倍政権は、今後の財政収支の見通しや再建計画づくりを参院選後の8月に先送りし、「消費増税の可否は秋に判断する」と繰り返す。

自民党の公約には、「一体改革」や「消費増税」が出てこない。一方で、国土強靱(きょうじん)化の推進や交通ネットワークの整備、農業分野の公共事業など、歳出増につながる項目が並ぶ。

アベノミクスも、3本柱のうち「異次元の金融緩和」と大型の財政出動は、痛みを先送りする政策でもある。核となるべき成長戦略が既得権層への切り込み不足のままなら、財政赤字を拡大させただけで終わり、となりかねない。

負担増に口をつぐむのは、野党も同じだ。民主党は財政健全化責任法の制定をうたったものの、社会保障など個々の政策では「充実」や「引き上げ」が目立ち、本気度に疑問符がつく。

他の党の大半は消費増税への反対を叫び、どう財政を再建するのか、説得力のある対案を示せていない。

経済の活性化と負担増の両立は確かに難しい。だが、持続可能な社会をつくるために、ギリギリの経済運営を迫られているのがいまの日本だ。

負担増を嫌い、給付充実を訴える政党の姿は、私たち自身の写し鏡でもある。

将来世代への責任という視点を忘れないようにしたい。

産経新聞 2013年07月05日

参院選スタート 経済再生への具体策競え 成長戦略の覚悟を聞きたい

参院選の本格的な論戦が始まった。デフレ脱却と経済再生を目指す安倍晋三政権の「アベノミクス」が最大の争点だ。

首相は福島市内での第一声で「覆っていた空気が大きく変わった」と円高是正をはじめ半年間の実績を強調した。一方、民主党の海江田万里代表は輸入品の値上がりなどアベノミクスの「副作用」を批判した。看板政策一点張りの自慢と、それをけなすだけでは、論戦の深まりは望めない。

≪目標は脱デフレ実現だ≫

国民がもっと聞きたいのは、脱デフレを確かなものとし、成長戦略が真に効果をもたらすよう、政策をどう肉付けしていくかの具体論だ。与野党には説得力のある国家再生策を競ってほしい。

金融緩和方針などアベノミクスの方向性を支持したうえで、第3の矢となる成長戦略について「もっと規制改革に踏み込むべきだ」と厳しい注文をつける日本維新の会やみんなの党に注目したい。

アベノミクスは、すでに放たれた2本の矢により一定の成果を上げている。2%の物価上昇目標を掲げた日銀による大規模な金融緩和と、公共事業を中心にした10兆円規模の大型補正予算だ。

日経平均株価は昨年11月に総選挙が決まってから6割上がった。1ドル80円程度という歴史的な円高も是正され、輸出企業の採算は大きく改善した。金融市場で見られた混乱も収束しつつある。

維新などはこれらの一定の成果は認めたうえで、政府の成長戦略について新市場の開拓につながる規制改革の不十分さを指摘する。実際、維新は医療、福祉分野の規制緩和を公約で強く打ち出し、自民党との違いを強調している。

自民党は農業など、既存の支持団体との関係を重視して改革に踏み切れないとの指摘にはうなずける点も多い。

企業活力を引き出し、成長を促す規制緩和の実現は欠かせない。安倍首相の改革への覚悟が問われる点といえるだろう。

民主党は脱デフレの代案を示さず、雇用や賃金引き上げを重視するとしながら具体論を出していない。企業収益が安定して増えなければ従業員に配分する賃金の原資も増加を見込めない。

生活の党や社民党と同様に「国民生活の破壊」などと政権批判ばかりを展開しているのは、受け皿を目指す責任ある政党の姿勢といえるだろうか。

各党は原発・エネルギー政策も主要な争点と位置付けている。何よりも具体的に論じなければならないのは電力供給だ。生活と産業を守るには、安価で安定的な電力供給が欠かせない。

自民党を除く各党は「脱原発」の姿勢を示すが、その代替電源を確保する道筋を示さなければ具体的な政策とは言いがたい。

来年4月に税率を5%から8%に引き上げる消費税増税も正面から論じねばならない。安倍首相は3日の9党首討論会で「税収が伸びなければ元も子もない」として、4~6月期の国内総生産(GDP)などの経済指標をみながら慎重に判断する考えを示した。

≪国の将来像を説明せよ≫

消費税増税は、社会保障と税の一体改革を目的として自民、公明、民主の3党が主導した。安定した財源の確保が狙いだが、社会保障制度の見直しが前提だ。

みんなや生活などは増税反対を唱えるが、安定財源をどう確保するのか。財政再建に道筋をつけ、増加の一途をたどる社会保障費をどう抑制するのかなどについて、論戦を通じて国民に将来像をわかりやすく説明する必要がある。

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)をめぐっては、維新やみんなも「国益を勝ち取る交渉を目指す」と参加を前提とした主張を掲げる。自民、民主には交渉脱退に余地を残し、支持団体に配慮する姿勢もうかがえる。

通商自由化を通じた成長力確保は不可欠だ。農業改革も待ったなしの課題だ。農地集約化など競争力のある農業を構築するための議論を望みたい。

経団連の米倉弘昌会長は「政策を迅速かつ着実に実行できる環境」を政治に求めた。第1次安倍内閣以降、毎年首相が交代してきた。政治の混乱が日本経済の信認を損ねてきた。

安定した政権を築き、本格的に経済を再生させるために何が必要か。有権者も重い判断を迫られている。

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