国際社会の制裁下で孤立を極める現実を、北朝鮮の金正恩第1書記は厳粛に受け止めて、核放棄へ転換を図るべきだ。
日本、米国、中国など27か国・機構をメンバーとする東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議がブルネイで開かれ、議長声明を採択した。
声明は、北朝鮮に対し、国連安全保障理事会の決議や2005年9月の6か国協議共同声明の「義務を順守するよう大多数の閣僚が求めた」と明記し、核放棄に向けて行動するよう促した。
北朝鮮の朴宜春外相は、「朝鮮半島情勢の悪化は、米国の敵視政策による」などと反論した。
しかし、そうした北朝鮮の主張が声明に盛り込まれなかった意味は重い。擁護してくれる国もない北朝鮮の現状を象徴している。
今回の声明は、6月の米中首脳会談や主要8か国首脳会議(G8サミット)に続く、北朝鮮への国際的な圧力の一環だ。
北朝鮮は昨年来、長距離弾道ミサイル発射と3回目の核実験を強行し、その都度、安保理は制裁強化決議を全会一致で採択した。
議長声明は、制裁決議の「全面的な履行」を大多数の閣僚が再確認したことも併記した。北朝鮮への締め付けを緩めはしない、という決意の表明と言える。
北朝鮮が最近、挑発的な言動で危機を作り出す瀬戸際戦術から対話路線に転換したのも、制裁圧力で経済立て直しが進まない窮状からの出口を、何とか見いだそうと模索している証しだろう。
北朝鮮は米国に、前提条件なく対話に応じるよう求めている。
核実験やミサイル発射を繰り返した北朝鮮の身勝手な振る舞いを不問に付して対話に応じれば、同じことの繰り返しだ。まず非核化への「具体的な行動」を北朝鮮に求める日米韓の対応は妥当だ。
拉致問題を巡り、朴外相は「完全に解決ずみ」と詭弁を弄した。岸田外相が、再調査を北朝鮮が約束した過去の経緯などを踏まえて「事実に反する」と一蹴し、日本以外にも被害者がいると国際連帯を呼びかけたのは適切だった。
議長声明は、「国際社会の人道上の懸念事項に対処する重要性」をうたった。拉致問題の解決を強く求める日本の主張が、間接的に反映されたものだ。
核とミサイル、拉致の包括的解決なしに日朝正常化はない。政府はこの立場を堅持し、北朝鮮包囲網を狭めつつ、金第1書記に拉致問題の前進を迫る必要がある。
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