北の「拉致は解決」 いつまで虚言を弄するか

読売新聞 2013年07月04日

ARF閣僚会議 国際的に孤立が極まる北朝鮮

国際社会の制裁下で孤立を極める現実を、北朝鮮の金正恩第1書記は厳粛に受け止めて、核放棄へ転換を図るべきだ。

日本、米国、中国など27か国・機構をメンバーとする東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議がブルネイで開かれ、議長声明を採択した。

声明は、北朝鮮に対し、国連安全保障理事会の決議や2005年9月の6か国協議共同声明の「義務を順守するよう大多数の閣僚が求めた」と明記し、核放棄に向けて行動するよう促した。

北朝鮮の朴宜春外相は、「朝鮮半島情勢の悪化は、米国の敵視政策による」などと反論した。

しかし、そうした北朝鮮の主張が声明に盛り込まれなかった意味は重い。擁護してくれる国もない北朝鮮の現状を象徴している。

今回の声明は、6月の米中首脳会談や主要8か国首脳会議(G8サミット)に続く、北朝鮮への国際的な圧力の一環だ。

北朝鮮は昨年来、長距離弾道ミサイル発射と3回目の核実験を強行し、その都度、安保理は制裁強化決議を全会一致で採択した。

議長声明は、制裁決議の「全面的な履行」を大多数の閣僚が再確認したことも併記した。北朝鮮への締め付けを緩めはしない、という決意の表明と言える。

北朝鮮が最近、挑発的な言動で危機を作り出す瀬戸際戦術から対話路線に転換したのも、制裁圧力で経済立て直しが進まない窮状からの出口を、何とか見いだそうと模索している証しだろう。

北朝鮮は米国に、前提条件なく対話に応じるよう求めている。

核実験やミサイル発射を繰り返した北朝鮮の身勝手な振る舞いを不問に付して対話に応じれば、同じことの繰り返しだ。まず非核化への「具体的な行動」を北朝鮮に求める日米韓の対応は妥当だ。

拉致問題を巡り、朴外相は「完全に解決ずみ」と詭弁(きべん)を弄した。岸田外相が、再調査を北朝鮮が約束した過去の経緯などを踏まえて「事実に反する」と一蹴し、日本以外にも被害者がいると国際連帯を呼びかけたのは適切だった。

議長声明は、「国際社会の人道上の懸念事項に対処する重要性」をうたった。拉致問題の解決を強く求める日本の主張が、間接的に反映されたものだ。

核とミサイル、拉致の包括的解決なしに日朝正常化はない。政府はこの立場を堅持し、北朝鮮包囲網を狭めつつ、金第1書記に拉致問題の前進を迫る必要がある。

産経新聞 2013年07月03日

北の「拉致は解決」 いつまで虚言を弄するか

北朝鮮はいつまでウソを言い続けるのか。

東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)の閣僚会議で、北の朴宜春(パクウィチュン)外相は「日本人拉致問題は完全に解決済みだ」と主張した。

岸田文雄外相は「過去の実務者協議のいきさつなどを踏まえれば事実に反する」とし、約束した拉致問題の再調査を行っていないことなどを挙げ反論した。当然である。

拉致問題への取り組みは主要8カ国(G8)の首脳宣言に毎回、明記され、国連人権理事会でも調査委設置の決議が採択された。

ARFは、アジア太平洋地域の政治・安保を話し合う場で、地域の信頼醸成促進を第一の目的とする。北の主張はその機能に逆行するものと言わざるを得ない。

会議では、参加国の多くが、北朝鮮による核・ミサイル開発や挑発行動で揺れる朝鮮半島情勢に懸念を示したうえで、北に非核化を迫り、挑発の自制を求めた。

ARFは、6カ国協議当事国である北と日米韓、中国、ロシアを含む26カ国と欧州連合(EU)が参加している。多数のメンバーの会議での発言を国際社会の総意として重く受け止めるべきだ。

だが、朴外相は「朝鮮半島の緊張は米国の敵視政策が原因だ」と反発し、米国と平和協定を結ぶことが先決だと唱えた。

国際社会を恫喝(どうかつ)する瀬戸際戦術から対話攻勢へ転じても、詭弁(きべん)を弄する体質は変わっていない。

北との対話は「非核化に向けた具体的行動」が大前提である。まず、検証可能な形で核放棄に着手させなければならない。

その意味で、日米韓で連携して「行動」を要求していくことを改めて確認した1日の3カ国外相会談を、評価したい。

気がかりなのは、中国の王毅外相が、6カ国協議当事国との対話に前向きな姿勢を示す最近の北朝鮮の動向に理解を見せて、対話促進を求めたことだ。

対話の出発点での足並みの乱れは、北につけ込むスキを与える。日米韓は、北に最大の影響力を持つ中国の動きを注視し、同一歩調を求めていかねばならない。

北は過去、核放棄を受け入れると偽って時間を稼ぎ、制裁の一部解除や食糧、エネルギー支援を得て、再び恫喝に転じた。同じ過ちを繰り返さぬよう、対話に際しては最大限、慎重になるべきだ。

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