参院選きょう公示 投票こそが政治参加だ

朝日新聞 2013年07月04日

参院選きょう公示 争点は経済にとどまらぬ

参院選がきょう公示される。

昨年12月の衆院選で政権を奪還した安倍政権の、半年間の評価が問われる選挙である。

「アベノミクス」と呼ばれる経済政策、震災復興、原発、近隣外交、環太平洋経済連携協定(TPP)、憲法改正……。争点は盛りだくさんだ。

その結果、自民、公明の与党が、衆院に続き参院でも過半数を得るのか。それとも野党が押し返すのか。

これから数年の国会のありようにとどまらず、日本の針路を左右する選択になることは間違いない。

朝日新聞が5~6月に実施した世論調査では、投票先を決める時に重視する政策は「景気・雇用」が圧倒的に多い。

各党とも、経済論戦に力点を置くのもこのためだ。

きのうの日本記者クラブでの党首討論で、安倍首相は「3本の矢の経済政策で、昨年のマイナス成長からプラスへ大きく変わった」と強調した。

確かに、この半年間に急速に進んだ株高・円安で、輸出関連を中心に企業業績が回復するなど一定の成果をあげた。

ただ、賃金の上昇や雇用の増加になかなか結びつかない。円安に伴う食料品などの値上がりは、人々の生活をじわりと圧迫し始めている。

民主党などが、アベノミクスの「副作用」を指摘するのは当然だろう。だが、批判だけでは有権者の支持は得られない。野党は対案を掲げ、突っ込んだ論戦を挑んでほしい。

一方で、この半年間で目につくのが、自民党の「先祖返り」ともいえる動きだ。

例えば、大盤振る舞いの公共事業だ。首相は矢の1本で大規模な財政出動に踏み切った。「国土強靱(きょうじん)化」の旗のもと、公共事業を求める党内の圧力が収まる気配はない。

原発政策も同様だ。

昨年の自民党の公約には「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指す」と明記された。今回、このくだりは消え、停止中の原発の再稼働や原発輸出への前のめりの姿勢ばかりが目立つ。

こうした動きを後押しするのか、待ったをかけるのか。有権者の選択にかかっている。

手つかずの懸案もある。

民主党政権時代に悪化した中国や韓国との関係は、安倍政権下でも改善が見えない。それどころか、閣僚の靖国参拝や首相の歴史認識発言で、かえってこじれた面もある。

目先の経済指標に目が向きがちだが、内政・外交全般にわたって厳しく点検したい。

この選挙の結果は、国会での与野党の力関係に重大な影響をおよぼす。

与党がまず目標としているのが、自民、公明両党で63議席以上を得ることだ。そうなれば非改選とあわせて与党が参院でも過半数を回復し、衆参の「ねじれ」は解消する。

ねじれの解消で、国会運営はスムーズに運ぶようになるかもしれない。半面、与党が暴走しても、これを止めるのは難しくなる。

しかも、この与党優位の態勢が少なくとも3年続くという見方もある。文字どおり野党の存亡がかかっている。

ところが、その野党陣営の足元は実に心もとない。

野党第1党の民主党は先月の都議選で惨敗。党勢回復の足がかりがつかめない。日本維新の会は、共同代表の橋下徹・大阪市長の慰安婦発言以来、支持率が低迷している。

野党が乱立していては与党を利するだけなのに、選挙協力もほとんどできないまま選挙戦に突入する。

民主党の海江田万里代表は「政権選択の選挙ではない」という。しかし、ここで敗れたら野党に後はない。そんな危機感をもって臨んでほしい。

気がかりなのは、最近の選挙における投票率の低下だ。

昨年の衆院選の投票率は、59・32%と戦後最低だった。先月の都議選も過去2番目に低い43・50%だった。

今回の参院選も、世論調査を見る限り、有権者の関心は盛り上がりに欠ける。

05年の「郵政解散」以来、過去5回の国政選挙は、いずれも政治の風景を一変させた。一方で、そのたびに与野党が政争を演じ、有権者はうんざりしているのかもしれない。

だが、ここは正念場である。

これから数年、日本政治には次々と難題が押し寄せる。TPP交渉が本格化し、来年には消費税率引き上げが予定されている。社会保障改革や財政再建も待ったなしだ。

安倍首相が持論とする憲法改正も、いずれ大きな焦点に浮上する可能性がある。

私たちのくらしと未来に深くかかわる参院選だ。無関心ではすまされない。

毎日新聞 2013年07月04日

参院選きょう公示 投票こそが政治参加だ

参院選がきょう公示される。第2次安倍内閣半年の評価が問われるとともに、今後数年の政治の方向や枠組みを決める可能性がある位置づけの重い選挙だ。

安倍晋三首相の掲げる経済政策などが争点で、インターネットによる選挙運動の解禁が注目されている。だが、最近の低投票率傾向の下、国民をひきつける舌戦が展開されるか現状では心もとない。

与野党は対立点をぼやかさず、内外の課題を直視した論戦を果敢に挑むべきだ。有権者も各党の訴えを吟味し、その選択を21日の投票日に示す責任がある。選挙のスタートにあたり、あえてこの点を強調したい。

公示に先立ち行われた9党首討論会では安倍首相に質問が集中した。さきの国会は終盤になるほど論戦に乏しかったが、消費増税をめぐるスタンスや規制改革、憲法問題など幅広い論点が提示された。

今参院選は与党の自民、公明両党が63議席以上を得て非改選と合わせ参院で過半数を確保できるかが焦点となる。

衆参の「ねじれ」が解消されれば衆院が解散されない限り与党は約3年政治を主導する安定基盤を得る。自公政権の強化と野党による監視のどちらを優先するかが問われる。

さきの衆院選以来加速する自民「1強」状況への審判でもある。同党は先月の東京都議選でも圧勝、各種世論調査の支持率も高水準にある。仮に参院で単独過半数に迫るような勢いを示せば内外の政策に加え、憲法問題など自民党色を意識した議論を進める足がかりとなろう。

一方、衆院選で惨敗し野党に転落した民主党は2大政党の座にとどまれるかの瀬戸際での戦いとなる。

衆院選で健闘した日本維新の会、みんなの党など第三極勢はその勢いが持続しているかが試される。共産党、生活の党、社民党、みどりの風など他の野党も存在感を発揮する足場を固められるかの正念場である。

政権そのものを決める衆院選と異なるものの、影響は極めて大きい選挙だ。にもかかわらず、心配なのは国民の政治への関心にかげりがみられることだ。

昨年12月の衆院選は戦後最低の投票率を更新、さきの都議選も過去2番目の低投票率だった。

民主党政権の迷走など政権交代可能な2大政党型システムがうまく機能せず、さきの国会も成立寸前の重要法案が廃案になる醜態を演じた。7年続きの首相交代や対立軸のあいまいさなどが有権者の失望、政治離れを生んでいるのではないか。

かつてわが国は昭和初期に政友会、民政党による2大政党制が混乱し政党政治への不信が強まり、やがて戦争への道を転げ落ちた。この教訓を胸に刻みたい。

読売新聞 2013年07月05日

参院選公示 政治の「復権」へ論争を深めよ

◆経済再生の具体策を吟味したい◆

国力を取り戻すことができるのか。日本の針路を左右する重要な選択の機会である。各政党と候補者の訴えに真摯(しんし)に耳を傾け、その政策と能力をしっかりと見極めたい。

第23回参院選が公示された。

日本は今、多くの深刻かつ困難な課題に直面している。

長年のデフレ経済から脱却し、経済成長と財政健全化を両立させる。少子高齢社会でも持続可能な社会保障制度を構築する。世界・アジア情勢が不安定化する中、日本外交を再建し、国益を守る。いずれも簡単には実現できない。

◆閉塞感を打破できるか◆

さらに2006年以降、首相が毎年交代する異常事態にある。

昨年の衆院選まで、首相や閣僚が短期間で交代し続けたため、官僚は「守り」に陥りがちだった。他国の首脳と信頼関係を築けず、本格的な外交が展開できない。

衆参ねじれ国会で、重要法案が成立しない。政治の停滞が常態化し、国民に閉塞感が漂う。

この状況を打破できるかどうかが参院選の最大の焦点だ。

安倍首相は第一声で、「ねじれを解消したい。大きな力を与えてほしい」と訴え、自民、公明両党で参院の過半数の議席を獲得したい考えを強調した。確かに、政権基盤が安定しなければ、大きな政策課題に取り組むのは難しい。

民主党の海江田代表は、「国民の生活を破壊する安倍政権に対峙(たいじ)しなければならない」と力説した。野党は、「与党の過半数阻止」を目指し、政権の暴走をチェックする役割の重要性を主張する。

◆安倍政権をどう評価◆

衆院選が政権選択選挙なのに対し、参院選は与党の中間評価の意味を持つ。07年、10年参院選では、衆院選で勝ちすぎた与党に対し、有権者が「揺り戻し」で厳しい審判を下し、ねじれを招いた。

安倍政権が今回、この前例を覆し、衆参ねじれを解消できれば、次の国政選までの間、迅速かつ大胆な政策決定ができる体制を築くことができる。政治の復権につながる可能性があろう。

有権者が投票の判断材料とすべきは、安倍政権の実績の評価と、各政党・候補者の政策である。

安倍政権の経済政策「アベノミクス」に関して、自民党は公約に名目3%程度の経済成長目標を掲げ、投資減税と法人税の大胆な引き下げを打ち出した。

安倍政権が円高是正や株価上昇などの成果を上げ、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加を実現したことは評価できる。

反面、その恩恵は国民の一部にとどまっていると指摘される。

民主党は、物価上昇や金利の乱高下などアベノミクスの「副作用」を批判し、生活者や中間層の所得を増やすと主張する。

だが、その成長戦略は具体性を欠く。東京都議選で惨敗し、参院選は2大政党にとどまれるかどうかの瀬戸際なのに物足りない。

日本維新の会は競争力強化や所得・法人税の減税を訴える。みんなの党は大胆な規制改革で名目4%以上の成長を目指すという。

どんなに魅力的な政策も、財源や実現への道筋が伴わないと、説得力を持たない。各党は経済論戦を深めてもらいたい。

原子力政策について、自民党は、安全と判断された原発の再稼働や原発輸出に前向きだ。成長重視の姿勢と一貫する。

野党は、民主党の「2030年代の原発稼働ゼロ」など、「原発ゼロ」で足並みをそろえた。ただ、代替エネルギーの確保策や経済成長との整合性はあいまいだ。

民主党が非現実的な09年衆院選政権公約(マニフェスト)で失敗したためか、各党の公約はスローガン的で抽象的内容が目立つ。社会保障改革や外交・安全保障ではもっと具体策を論じるべきだ。

◆憲法改正の積極論議を◆

憲法も重要な論点である。

96条が定める改正の発議要件について自民、維新の会、みんなは緩和を主張する。公明は「改正内容とともに議論する」とし、民主も「先行改正」に反対だが、ともに緩和への余地も残している。

参院選の結果次第で憲法改正が現実味を帯びる展開もあろう。

自衛隊の位置づけや二院制、地方分権など、新しい「国のかたち」のあり方をめぐり、各党・候補には積極的な論争が求められる。

民主主義の根幹である選挙は、政党・候補者と有権者の共同作業だ。ムードに惑わされず、各党・候補者の主張をじっくり吟味し、貴重な1票を行使することが、有権者の重要な責任である。

産経新聞 2013年07月04日

参院選きょう公示 憲法改正を堂々と論じよ 国家再生の好機生かしたい

与野党9党首による討論会で、安倍晋三首相は「憲法改正がリアリティーをもって議論されたのは初めてだ」と語った。

4日に公示される参院選は、ねじれ解消による政権安定化が焦点と位置付けられている。同時に、主要な争点として憲法改正が浮上している。

だが、討論会での論議が発議要件を定める96条改正の是非など入り口論にとどまり、低調に終わったのは残念だ。

日本が危機を乗り切り、前進していくために憲法改正は不可欠なものだ。問題がどこにあり、どう改めるべきか。改正への具体的な道筋について国民の前で論じ合ってほしい。

≪国民の7割が「争点に」≫

改正の必要性を唱える自民党や日本維新の会のほか、共産党など「護憲」政党も憲法を重要な論点と位置付けている。国民の関心もこれまでになく高い。

各党に認識してほしいのは、産経新聞社とFNNの5月の合同世論調査で72%の人が「憲法改正は参院選の重要な争点になる」と回答するなど、国民の間に憲法改正の議論を求める機運が高まっているということだ。それに応えられる具体的な議論が必要だ。

また、本社の国会議員に対するアンケートで、回答者の84%が憲法改正が必要だと答えたことも指摘しておきたい。

衆参各院の総議員の「3分の2以上の賛成」という厳しい発議要件がそのままでは「憲法を国民の手に取り戻す」ことは難しい。

改正要件を変更する憲法改正は、2002年のインドネシア、1958年のフランスなど諸外国にも例はある。96条改正は国民と憲法の関係を身近なものにし、憲法改正を通じて日本を立て直していくのに欠かせない最重要の課題である。

96条改正をめぐる安倍首相の姿勢に揺れもあった。昨年12月の衆院選で、憲法改正を志向する政党の議員が衆院で初めて「3分の2以上」を占めたことを受け、先行改正を唱えた。

だが、連立を組む公明党から先行改正への慎重論が出され、国民の間にも96条改正への理解がまだ広がっていないとの判断から、主張を抑制した。自民党公約も先行改正の明記を見送った。

一方、維新は公約に96条先行改正を躊躇(ちゅうちょ)せずに明記した。首相や自民党も、96条改正の必要性を正面から国民に説く必要がある。

改正の核心となるのは、自衛権を強く制約し、抑止力が十分働かない状況をもたらしている9条である。日本を取り巻く安全保障環境は激変した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で、中国公船が日本の領海に侵入したのは昨年9月以来、50回を数えた。

≪96条先行をためらうな≫

経済成長を背景に軍事力を増強し、尖閣奪取を企図する中国、核実験と弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮といった現在進行形の脅威が存在する。現実離れした9条の下で、日本の平和と安全を守れるだろうか。

公明党の山口那津男代表は討論会で、集団的自衛権の行使を禁ずる政府解釈について「変えるなら国民の理解を得なければならない」と語った。

安倍首相は集団的自衛権の行使容認は、日米同盟の維持に不可欠なものだと主張してきた。容認に前向きな提言が秋にも政府の有識者懇談会から出される予定だ。参院選で論じておくのは当然だ。

民主党は96条改正について「改正の中身の議論が欠かせない」と自民党を批判してきた。だが、自民党は「国防軍の保持」「緊急事態条項の創設」など具体的な「憲法改正草案」を示しているのであり、中身を示すべきなのは民主党なのである。

海江田万里代表は「9条はじめ(96条以外の)他の項目は、過去に何度も議論して、今集約する作業に入っている」と語ったが、これでは論争に耐えられず、無責任ではないか。

各党とも震災復興を公約の主要な部分に挙げている。東日本大震災では、現憲法に緊急事態の政府の対応がきちんと定められていないという欠陥が明らかになった。緊急事態条項の創設が求められてきたのもそのためだ。

有事や大規模災害から国民の生命と安全を守るために、各党は憲法問題に答えを出す重大な責務を負っている。

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