東アジア情勢が不安定化する中、日韓協力は一段と重要になっている。両国関係の正常化へ、双方が歩み寄るべきだ。
岸田外相と韓国の尹炳世外交相がブルネイで会談し、「未来志向の日韓関係」を安定的に発展させる方針で一致した。
日韓外相会談の開催は約9か月ぶりだ。2月の朴政権発足後、隣国間で首脳・外相会談が一度もなかったのは異常な事態だった。
北朝鮮の核・ミサイル問題や中国の軍事、経済両面での台頭など、日韓が連携して対処すべき課題は多い。自由貿易協定(FTA)交渉中断の長期化など、経済分野の停滞も看過できない。
米国が日韓関係の改善を側面支援するのも、両国の関係悪化は東アジアの平和と繁栄の障害だとの問題意識があるためだろう。
中国は、尖閣諸島の領土問題の存在を認めることを日中首脳会談の条件にしているとされる。今回も外相会談は見送られた。日中高官が会談できない状態が長く続く事態も想定すれば、日韓関係を再構築する必要性は一段と高い。
日韓間には、竹島、いわゆる従軍慰安婦問題など領土や歴史認識をめぐる対立がある。尹外相は、歴史認識の重要性を強調し、「歴史問題を細心に扱えない場合、民族の魂を傷つける」と述べた。
だが、両国が意見の相違を最小限に抑えつつ、北朝鮮問題などで実質的に協力することこそが、外交本来の役割のはずである。
そもそも現在の日韓関係の悪化は、昨年夏の李明博前大統領の竹島訪問と天皇陛下「謝罪」要求発言が発端となっている。
韓国は、米中両国との首脳会談などで日本との歴史認識の問題を持ち出すのは自制する。日本も、閣僚の靖国神社参拝で一定の配慮を行う。双方が、対立する分野でも粘り強く対話と努力を重ね、接点を探ることが欠かせない。
今回の日韓外相会談を足がかりに、今年後半には、首脳会談が実現するよう調整を急ぎたい。
日韓外相会談に先立つ日米韓外相会談では、北朝鮮の核保有を容認せず、非核化への「具体的な行動」を求める方針を確認した。
北朝鮮は最近、関係国との対話に前向きの姿勢を示している。しかし、肝心なのは、6か国協議などの対話の再開ではなく、核放棄を具体化することである。
非核化に向けて実質的な行動を取るよう、中国を通じて北朝鮮に圧力をかけ続けるためにも、日米韓が協議を重ね、現在の結束を維持しなければならない。
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