株価が大きく上下するなかで迎えた今年の3月期決算企業の株主総会では、株主の関心が例年になく企業の成長戦略に集まった。
米国ではファンドなどの「もの言う株主」が復活している。日本企業にも、リストラで業績と株価を高めるよう突きつける動きが目についた。経営側との応酬もあった。
人件費などのコスト削減頼みではなく、再編を含む事業変革や技術・人材への投資をどう進めるか。膨らんだ内部留保をどう生かすか。株主が投げかけた問いかけを、新たな成長モデルへの脱皮につなげたい。
ソニーでは、筆頭株主の米ファンドが映画・音楽部門を分離して上場し、得られた資金でテレビなどエレクトロニクス部門をリストラするよう求めた。約1万人が出席した総会でも議論になり、今後、経営陣が本腰を入れて検討する。
ファンドが投げたウォール街ならではの際どいボールに、経営側が応じるにせよ、説得力ある対案を示すにせよ、株主との緊張関係が日本企業に変革を促すなら歓迎したい。
かたや対立がこじれたのは、株式上場を目指す西武ホールディングスだ。
大株主の米ファンドがライオンズ球団の売却や赤字路線の廃止に言及。株式買い増しで優位に立とうとしたが失敗し、総会に取締役を入れ替える提案を出しても否決された。
公共交通機関、ファンが支えるプロ野球ビジネスを擁する西武は利害関係者の幅が広い。ウォール街の流儀はなじみにくいだろう。ただ、それで経営側が大株主の譲歩を引き出す成長シナリオを示す責任から逃れられるわけではない。
多様な利害関係者に目を配って、それぞれのパワーを結集するのが日本的経営の本来の強みだった。しかし、伝統ある大企業では利害を調整しきれず、変革が滞る懸念がある。
これが極端な形で表れたのが川崎重工業の社長解任劇だろう。総会でも事情説明が不十分で、株主の不満が募った。
濃淡はあれ、複雑な利害の調整は、多角化で成功してきた大企業の多くが抱える問題だ。
克服の近道は、単なる株主の代弁者ではなく、会社の内外で絡み合う利害を仲裁できる独立性の高い社外取締役を増やすことではないか。
今年はトヨタ自動車も初めて社外取締役を起用した。適格な人材を増やし、新たな日本的経営への脱皮を加速する切り札としていくべきだ。
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