通常国会閉幕 首相問責で野党は何を得たか

毎日新聞 2013年06月27日

国会閉幕・参院選へ 「論戦不在」まず猛省を

与野党の駆け引きばかりが横行してまともな論戦が行われず、揚げ句の果てに重要法案も投げ出して選挙戦に突入する。こんな異常な国会は過去、ほとんど例がないだろう。

通常国会が26日閉幕し、7月4日公示、21日投開票予定の参院選に向けて事実上の選挙戦がスタートすることになった。結果によっては今後数年の政治の方向を決定づけることになる大事な選挙である。無論、問われるべき課題は多い。

だが、何より与野党は「責任放棄国会」というべき今回の結末を深く反省することだ。それが先だ。

あきれ果てるような国会最終日だった。野党は先の参院予算委に安倍晋三首相が欠席したのは「憲法違反だ」と主張し、首相に対する問責決議を参院本会議で可決。そのあおりで、電力システム改革を目指す電気事業法改正案や生活保護の不正受給に対する罰則を強化する生活保護法改正案など、衆院を通過していた法案は参院で採決されず、廃案になってしまった。

政府・与党が首相や閣僚の予算委出席を拒否したのは「与党が提出した参院議長に対する不信任決議案が処理されていない」という理由だった。これも政局の駆け引き優先の対応であり、批判されても仕方がない。ただし、電事法改正案などは民主党も「問責と関係なく成立させたい」と言っていたはずだ。政策がないがしろにされ、「論戦不在」となった国会を象徴する会期末だった。

通常国会を振り返ってみれば、1月の開会当初は確かに衆院予算委の集中審議などが頻繁に開かれた。しかし、質疑の実情は安倍政権発足以降の株高と内閣支持率の高さに野党各党がひるんだ印象が強かった。

後に株価が不安定になると野党はアベノミクス批判を強めた。ところが今度は国会論戦の場が設定されなくなった。大きな要因は経済政策とは無縁な、衆院小選挙区の「1票の格差」を是正する「0増5減」策をめぐる駆け引きだ。

この改正公職選挙法は最終盤、やっと成立したものの、なぜ私たちがかねて主張していたように、最低限の策である「0増5減」を早急に成立させたうえで次の抜本改革に議論を進めようとしなかったのか。

「0増5減」が早期に実現すると司法から違憲と判断された昨年暮れの衆院選をこの際、やり直せとの声が強まる可能性があった。その場合、安倍首相は衆院解散=衆参同日選を決断するのではないか。野党側はそれを恐れたとしか思えない。

読売新聞 2013年06月27日

通常国会閉幕 首相問責で野党は何を得たか

あまりにお粗末な通常国会の幕切れである。

参院が安倍首相の問責決議を民主党、みんなの党など野党の賛成多数で可決した。

参院で野党は、当然のように法案審議を拒み、電気事業法改正案、生活保護法改正案や、水源地を守るための水循環基本法案など議員提出法案が廃案になった。

問責決議は、生活の党、みどりの風、社民党の3党が提出したもので、参院予算委員会の審議に首相が出席しなかったことを「憲法違反」だと主張していた。

参院選を前に、自民党批判の材料にしたいのが見え見えだ。こうした姿勢が国民に評価されると考えるのなら勘違いも甚だしい。

そもそも首相を問責するほどの事態だったのか。参院予算委は民主党の石井一委員長が職権で開会を決め、与党は参院議長不信任案の処理が先だとして欠席した。

菅官房長官が、首相が出席しないことに「正当な理由がある」と抗弁したのも一理ある。

理解できないのは、問責決議に賛成した参院民主党である。

民主党は25日、重要法案の処理を優先し、問責決議案は採決しない方針を与党と確認していた。

ところが、26日午前になると、みんなの党など他党に同調し、対応が一変した。民主党が採決反対を貫いていれば何の問題もなく、重要法案は成立しただろう。

民主党は与党を経験し、法的な効力のない問責決議の理不尽さを十分痛感したはずだ。細野幹事長は「自民党に法案を仕上げる熱意が全くない」と自民党を非難したが、責任転嫁にほかならない。

今国会での最大の政治課題だった衆院選挙制度改革に関しては、与野党が、定数削減を含む抜本的な見直しについて「参院選後、速やかに各党間の協議を再開し、結論を得る」と文書で確認した。

だが、各党が定数削減にこだわり、党利党略の主張を繰り返すだけであれば、こんな約束を何度交わしても意味がない。

膠着(こうちゃく)状態を打破するために、首相は国会閉会後の記者会見で、「民間の有識者による第三者機関を国会に設けることを提案する」と言明した。妥当な判断だ。

各党が有識者の出した結論を尊重するよう、拘束力をもつ機関とすべきである。

今国会では、衆参の憲法審査会が、具体的な憲法改正内容にも踏み込んで論議を重ねた。参院選では憲法改正が大きな争点となる。有権者が判断しやすいよう、具体的な論戦を望みたい。

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