あまりにお粗末な通常国会の幕切れである。
参院が安倍首相の問責決議を民主党、みんなの党など野党の賛成多数で可決した。
参院で野党は、当然のように法案審議を拒み、電気事業法改正案、生活保護法改正案や、水源地を守るための水循環基本法案など議員提出法案が廃案になった。
問責決議は、生活の党、みどりの風、社民党の3党が提出したもので、参院予算委員会の審議に首相が出席しなかったことを「憲法違反」だと主張していた。
参院選を前に、自民党批判の材料にしたいのが見え見えだ。こうした姿勢が国民に評価されると考えるのなら勘違いも甚だしい。
そもそも首相を問責するほどの事態だったのか。参院予算委は民主党の石井一委員長が職権で開会を決め、与党は参院議長不信任案の処理が先だとして欠席した。
菅官房長官が、首相が出席しないことに「正当な理由がある」と抗弁したのも一理ある。
理解できないのは、問責決議に賛成した参院民主党である。
民主党は25日、重要法案の処理を優先し、問責決議案は採決しない方針を与党と確認していた。
ところが、26日午前になると、みんなの党など他党に同調し、対応が一変した。民主党が採決反対を貫いていれば何の問題もなく、重要法案は成立しただろう。
民主党は与党を経験し、法的な効力のない問責決議の理不尽さを十分痛感したはずだ。細野幹事長は「自民党に法案を仕上げる熱意が全くない」と自民党を非難したが、責任転嫁にほかならない。
今国会での最大の政治課題だった衆院選挙制度改革に関しては、与野党が、定数削減を含む抜本的な見直しについて「参院選後、速やかに各党間の協議を再開し、結論を得る」と文書で確認した。
だが、各党が定数削減にこだわり、党利党略の主張を繰り返すだけであれば、こんな約束を何度交わしても意味がない。
膠着状態を打破するために、首相は国会閉会後の記者会見で、「民間の有識者による第三者機関を国会に設けることを提案する」と言明した。妥当な判断だ。
各党が有識者の出した結論を尊重するよう、拘束力をもつ機関とすべきである。
今国会では、衆参の憲法審査会が、具体的な憲法改正内容にも踏み込んで論議を重ねた。参院選では憲法改正が大きな争点となる。有権者が判断しやすいよう、具体的な論戦を望みたい。
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