毎日新聞 2009年12月11日
遼くん賞金王 夢のドラマ現在進行中
男子ゴルフ界の星、18歳の石川遼選手が史上最年少の賞金王に輝いた。ツアー4勝を含め獲得賞金は1億8352万余円。プロ転向2年目の高校生ゴルファーが名実ともに日本ゴルフ界を代表する「顔」になった。
今年は石川選手にとって海外デビューの年でもあった。2月のノーザントラスト・オープンで米ツアーに初参戦。その後もマスターズ、全英、全米プロとメジャー大会に出場し、世界選抜の一員にも選ばれた。国内では経験できない大舞台を肌で知ることができ、その後の急成長への手がかりをつかんだ。
世界のトップ選手の技術を貪欲(どんよく)に吸収し、自分の新たな武器に変えて国内ツアーの実戦の中で生かしていく。この学習能力の高さこそが石川選手の最大の強みなのだろう。
驚かされるのは技術面の成長だけではない。注目度が高まるにつれ、取り囲む報道陣の数が増す中、インタビューでは謙虚に折り目正しく、周囲への気配りも忘れない。そこが石川選手の人気の源泉でもある。
石川選手の出場試合はファンであふれ、テレビの視聴率も好調。関連グッズの売れ行きも伸びたという。半面、トラブルも相次いだ。観戦マナーを知らないファンのシャッター音がしばしばプレーを中断させた。テレビクルーのカートがギャラリーにつっこみ、けが人が出る事故も起きた。石川人気は社会現象になりつつある。
石川選手の急成長で思い浮かべるのはタイガー・ウッズ選手だ。鳴り物入りでプロ転向したウッズ選手は21歳で世界最高峰の米ツアー賞金王になり、以来10年余にわたって世界のゴルフ界に君臨している。
そのウッズ選手が今、女性問題などプライベート面でつまずき、サクセスストーリーに暗い影を落としている。プロ選手の栄光と称賛は、大金が絡むだけに、ささいなことで崩れかねないもろさも併せ持つ。
願わくは石川選手には、ウッズ選手のプラス・マイナス両面から多くを学び取り、今後も多くの人から愛され、尊敬される大スターに育ってほしい。
今年は新たな夢舞台も用意された。東京が落選した16年五輪からゴルフが正式競技となる。石川選手が順調に成長すれば金メダルの有力候補になる。
来年以降も石川選手の活躍はワールドワイドに広がっていくことだろう。行く手に壁も立ちはだかってくるはずだ。そこに石川選手がどう立ち向かっていくのか。そのドラマを現在進行形で目撃できることの幸せを思わずにいられない。
|
読売新聞 2009年12月08日
遼君賞金王 さらに高く羽ばたいてほしい
男子ゴルフで、18歳の石川遼選手が史上最年少の賞金王に輝いた。プロ入りして2シーズン目の快挙だ。目覚ましい成長に拍手を送りたい。
賞金王のタイトルは、名実ともに日本のゴルフ界の「顔」となったことを意味する。これまでの記録は、尾崎将司選手が1973年に達成した26歳だった。それを大幅に更新した。世界の主要ツアーの中でも最年少の記録である。
石川選手は今季、4勝を挙げ、獲得賞金は計1億8352万円に達した。1ラウンド当たりのバーディー獲得数などでもトップの成績を残した。
「ハニカミ王子」というニックネームが、もはや似つかわしくないほど、プロとしてのたくましさも感じられるようになった。
感心するのは、インタビューなどで実にきちんとした受け答えをすることだ。賞金王確定後にも「ゴルフというスポーツが存在していることに感謝したい」と語った。気持ちを素直に表現する姿が好感度を高めているのだろう。
最終戦だった日本シリーズJTカップは、4日間で約3万3000人のギャラリーを集めた。従来は1万人台前半だったが、石川選手が出場するようになった一昨年から大幅増が続いている。
会場には女性の姿が目立った。石川選手の登場は、トーナメント会場に足を運ぶファンの層を確実に広げた。
ゴルフは、他の競技以上にマナーが重んじられるスポーツだ。ペナルティーも基本的に自己申告によって科せられ、選手には何よりフェアプレーが求められる。
一流選手に対しては、ファンの目も厳しい。米国では、タイガー・ウッズ選手の私生活のスキャンダルが話題になっている。模範的ゴルファーというイメージが損なわれたからだろう。
石川選手は今後も自らを律し、海外の主要大会制覇など、より高いレベルを目指してほしい。
ゴルフは2016年のリオデジャネイロ五輪で正式種目になる。石川選手のほか、賞金王を最後まで争った23歳の池田勇太選手、さらに女子プロでも若手の成長が著しい。心強い限りだ。
石川選手にあこがれるジュニアゴルファーが増えれば、ゴルフ界全体の底上げにもつながる。
スポンサーの撤退などで、スポーツ界を取り巻く状況は厳しい。その中で、男子ゴルフの盛り上がりは、実力と人気を兼ね備えた選手の育成がいかに大切か、ということを教えてくれている。
|
この記事へのコメントはありません。