来月の参院選は、民主党にとって後のない戦いになる。
ところが、民主がきのう発表した参院選マニフェスト(政権公約)を読む限り、そうした危機感が伝わってこない。
総選挙、都議選と、たてつづけに惨敗を喫した。参院選で踏みとどまり、党再生の足がかりを得ることができるか。まさに正念場である。
マニフェストに工夫をこらしたあとは見える。
漫画を使って、わかりやすくしたのは、そのひとつだ。給料も年金も上がらないのに物価が上がる国民の苦労を描き、「今の政府の経済政策には強い副作用がある」と指摘した。
では、アベノミクスに代わる経済再生の道筋とは何か。それがはっきりしない。財政再建にしても成長戦略にしても、説得力ある対案を示さなければ、政権に批判的な有権者の受け皿となることはできまい。
原発政策では「30年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」とした。昨年の衆院選公約と同じ表現だ。
だが、自民党は公約に休止中の原発の再稼働推進を明記するなど、民主党政権が決めた脱原発路線からのあからさまな転換を図っている。なぜ正面から「待った」をかけないのか。
環太平洋経済連携協定(TPP)についても「推進」をうたいながら、「国益を確保するために、脱退も辞さない厳しい姿勢で臨む」と、どっちつかずである。
政権与党時代、民主党は消費税率引き上げなどをめぐって内紛を繰り返し、国民の信頼を損なった。原発やTPPで踏み込めないのは、主要政策でいまだに党内をまとめきれない現状を物語っている。
憲法改正への対応にしてもそうだ。改正の発議要件をゆるめる96条の先行改正にこそ、明確に反対する方針を掲げた。
しかし、改正そのものについては「未来志向の憲法を国民とともに構想」とするなど、ここでも党内の護憲、改憲両派に配慮したためか、抽象的でわかりにくい表現になった。
海江田代表は、マニフェストの冒頭、手書きで「生活者、働く者の立場という原点に立ち返る」と書いた。
それを有権者に納得してもらうためには、これからの論戦を通じてマニフェストに肉付けし、政策の方向性を明確にしていくしかない。
野党に転じ、挑戦者として臨む参院選だ。民主党は逃げてはならない。
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