民主の参院選公約 党再生へ道筋がみえない

朝日新聞 2013年06月26日

民主党の公約 挑戦者が逃げるな

来月の参院選は、民主党にとって後のない戦いになる。

ところが、民主がきのう発表した参院選マニフェスト(政権公約)を読む限り、そうした危機感が伝わってこない。

総選挙、都議選と、たてつづけに惨敗を喫した。参院選で踏みとどまり、党再生の足がかりを得ることができるか。まさに正念場である。

マニフェストに工夫をこらしたあとは見える。

漫画を使って、わかりやすくしたのは、そのひとつだ。給料も年金も上がらないのに物価が上がる国民の苦労を描き、「今の政府の経済政策には強い副作用がある」と指摘した。

では、アベノミクスに代わる経済再生の道筋とは何か。それがはっきりしない。財政再建にしても成長戦略にしても、説得力ある対案を示さなければ、政権に批判的な有権者の受け皿となることはできまい。

原発政策では「30年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入する」とした。昨年の衆院選公約と同じ表現だ。

だが、自民党は公約に休止中の原発の再稼働推進を明記するなど、民主党政権が決めた脱原発路線からのあからさまな転換を図っている。なぜ正面から「待った」をかけないのか。

環太平洋経済連携協定(TPP)についても「推進」をうたいながら、「国益を確保するために、脱退も辞さない厳しい姿勢で臨む」と、どっちつかずである。

政権与党時代、民主党は消費税率引き上げなどをめぐって内紛を繰り返し、国民の信頼を損なった。原発やTPPで踏み込めないのは、主要政策でいまだに党内をまとめきれない現状を物語っている。

憲法改正への対応にしてもそうだ。改正の発議要件をゆるめる96条の先行改正にこそ、明確に反対する方針を掲げた。

しかし、改正そのものについては「未来志向の憲法を国民とともに構想」とするなど、ここでも党内の護憲、改憲両派に配慮したためか、抽象的でわかりにくい表現になった。

海江田代表は、マニフェストの冒頭、手書きで「生活者、働く者の立場という原点に立ち返る」と書いた。

それを有権者に納得してもらうためには、これからの論戦を通じてマニフェストに肉付けし、政策の方向性を明確にしていくしかない。

野党に転じ、挑戦者として臨む参院選だ。民主党は逃げてはならない。

読売新聞 2013年06月26日

民主参院選公約 この政策では説得力に欠ける

非現実的な数値目標の失敗に懲りて、臆病になりすぎたのか、政策が抽象的で、「攻め」の姿勢があまりに乏しい。

民主党が参院選公約を発表した。「暮らしを守る力になる」をキャッチフレーズに掲げ、くらし(経済)、いのち(社会保障)、みらい(女性・子育て・教育)など、7項目の重点政策を示している。

経済政策について、公約は、安倍政権の経済政策「アベノミクス」に関し、物価上昇、金利乱高下などの副作用に懸念を示すにとどめた。草案段階では、副作用への批判をより強く打ち出していたが、争点があいまいになった。

最も肝心な税財政・金融政策と成長戦略に関する民主党の対案もほとんど盛り込まれていない。これでは経済論争が深まらない。

原発について、2012年衆院選の政権公約と同様、「30年代の稼働ゼロ」を明記したが、代替エネルギーの確保策など、目標を実現する道筋は示せていない。

社会保障も、全額公費による最低保障年金の創設、年金一元化など従来案の再掲にとどまった。

09年政権公約は最低保障年金を「月額7万円」としたが、財源不足で実現不可能なことが露呈したため、12年政権公約では金額を削り、今回も踏襲した。

不可能な数値目標を除外するのは当然としても、具体性を欠く政策を並べるだけでは、有権者の信頼を取り戻せるはずがない。

過去の公約の失敗を反省し、財源面も含め、説得力を持つ政策に練り直すべきだ。そのハードルを克服し、与党に論争を挑まなければ、参院選を反転攻勢の機会にすることは難しいだろう。

外交・防衛では、日米同盟を基軸とし、領土・領海を断固守る姿勢を強調している。総論に問題はないが、自民党と比べると、同盟深化や領土防衛の各論の記述が少なく、踏み込み不足が目立つ。

憲法では、改正の発議要件を衆参各院の3分の2以上とする96条は合理性があるとして、96条の先行改正に反対した。国民と「憲法対話」を進め、「未来志向の憲法を構想する」とも主張した。

党内の改正推進派と慎重・反対派の双方に配慮した結果、玉虫色の表現に落ち着く、という相変わらずのパターンだ。既に具体的な改正内容を示している他党よりも2、3周遅れの状況にある。

参院選後には、憲法改正問題が大きな焦点となる。民主党も、独自の改正案をまとめる方向で意見集約を急ぐべきだ。

産経新聞 2013年06月26日

民主の参院選公約 党再生へ道筋がみえない

再び政権を目指す政党として再生できるのか。民主党にとって夏の参院選はその試金石となる。だからこそ、どのような国家像を提示するのか注目されていた。だが、発表された公約からはその気概が伝わらない。

公約の特徴は「暮らしを守る力になる」とスローガンを掲げ、国民生活を重視し、とくに中間層に手厚い政策をとったことだ。

安倍晋三政権のアベノミクスに対抗しようとしているが、民主党がどうやって経済を立て直すか、具体的な代案は見当たらない。成長を実現しなければ、暮らしを守ることもできない。

社会保障では、最低保障年金の創設など実現が困難な政策を再び掲げた。マニフェスト(政権公約)の破綻で国政を迷走させ、国民の支持を失った反省が生かされていない。

年金の一元化や最低保障年金の創設を改めて持ち出したのは、国民の関心が高いテーマで改革姿勢をアピールしたいからだろう。だが巨額の財源を要する最低保障年金は実現性に疑問があり、政府の社会保障制度改革国民会議でも議論のテーマから外された。

具体的な財源の捻出方法も示さずに非現実的な政策に固執する。政権交代を果たした平成21年のマニフェストから、いまだに脱却できていない。

政府内で議論されている高齢者の医療費窓口負担の引き上げや年金支給開始年齢のさらなる引き上げといった改革案にも否定的で、むしろ社会保障サービスの拡充を目指している。それでは消費税の再増税など新たな負担増が避けられない。急速な高齢化で伸び続ける社会保障費をどう抑制するか、具体策を語ってほしい。

政権当時にまとめた「2030年代に原発ゼロを目指す」エネルギー政策も再掲した。だが、代替となる太陽光など再生可能エネルギーを普及させる道筋は示されていない。ほとんどの原発が稼働を停止する中で電力不足が続き、電気料金も上昇している。代替電源を確保しないまま、国民受けを狙ったように「原発ゼロ」を唱えることは許されない。

都議選惨敗でも続投する海江田万里代表は「イバラの道はまだまだ続く」と語った。実のある論戦を自民党に挑んで、政権の受け皿としての存在を示すしか道はないはずだ。

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