沖縄慰霊の日 負担軽減は待ったなし

朝日新聞 2013年06月24日

沖縄慰霊の日 戦争の教訓共有しよう

本土の目に映る沖縄は、沖縄の人々が真に見てほしい姿だろうか。それとも、本土が自分の都合で描く沖縄だろうか。

きのう「慰霊の日」を迎えた沖縄と本土との間に最近、ひときわ意識のずれが目立つ。

たとえば普天間飛行場問題。県外移設を訴える沖縄の声に、本土はもはや聞く耳をもたぬかのようだ。参院選の公約で自民党本部は、県連の反対を押し切り、辺野古移設を明記した。

4月に政府が催した「主権回復の日」式典をめぐっては、沖縄は米施政下に置き去りにされた「屈辱の日」と抗議した。一方、オスプレイ配備の本土分散は遅々として進んでいない。

沖縄から見る本土への心の距離は開くばかりだ。ところが皮肉にも、人々が国家主権を語るとき、沖縄はがぜん、本土の意識の中で重い存在感を担う。

中国共産党の機関紙が、沖縄における日本の主権は未解決とする論文を掲載すると、日本政府はただちに抗議した。中国への国民の憤りは当然だ。

だが、「領土」「安保」の文脈では日本人の自尊心を映す国土であるのに、沖縄県民の目線に立つ「地元」の声は本土に届かない。そんな本土と沖縄を分かつ溝の原点を、わたしたちは常に熟考する必要がある。

最大の悲劇は太平洋戦争末期の沖縄戦だった。68年前、本土防衛を前に、戦略上の捨て石とされた沖縄は、地上戦の修羅場と化した。

「鉄の暴風」といわれた米軍の砲撃や空襲。日本兵に殺されたり、集団死を強いられたりした地元民もいた。死者20万。県民の4人に1人が落命した。

あの戦場をくぐった高齢者の4割が今も、心にストレス障害を患っている可能性が高いとの調査結果を、沖縄の研究者たちが今春まとめた。不発弾や遺骨は今も日常的に見つかり、米兵の犯罪もあとを絶たない。

「戦争」は沖縄の人々の中では、今も終わっていないのだ。なのに、本土はその思いを共有しないどころか、軍事基地の重荷を沖縄に過剰に背負わせたまま、憲法改正による「国防軍」創設まで語り始めている。

きのうの追悼式で、沖縄県の仲井真弘多知事は、癒えることのない痛みにふれつつ、「私たちは沖縄戦の教訓を継承する」と誓った。日本の戦後の安定と繁栄は何を犠牲にして築かれたのか。その教訓を沖縄だけのものにしてはならない。

「慰霊の日」を機に、いま一度、沖縄戦の記憶を直視しよう。沖縄と本土の意識のずれを少しでも修正するために。

毎日新聞 2013年06月24日

沖縄慰霊の日 負担軽減は待ったなし

今から68年前、太平洋戦争末期の沖縄で一般住民を巻き込んだ地上戦が行われ、住民約9万人を含む約20万人が犠牲になった。本土決戦の時間稼ぎのための「捨て石」とされた戦いだった。その沖縄戦で旧日本軍の組織的戦闘が終わった日にあたる23日の「慰霊の日」、沖縄県主催の追悼式が、最後の激戦地となった糸満市摩文仁(まぶに)で今年も行われた。

沖縄県・米軍普天間飛行場の移設問題が鳩山政権のもとで迷走して以降、米軍基地の過重な負担に対する沖縄の怒りは、かつてなく高まっている。慰霊の日を機に、政府はもちろん、国民一人一人が、沖縄の基地負担と痛みを軽減するために何ができるのか、改めて問い直したい。

追悼式には、安倍晋三首相らのほか、今年初めて外相、防衛相が出席した。米国のルース駐日大使や、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長も出席した。

仲井真弘多知事は平和宣言で普天間の県外移設、日米地位協定の抜本的な見直しを求めた。しかし政府は、普天間の沖縄県名護市辺野古への移設を推進し、地位協定は改定しない立場を貫く。安倍首相はあいさつで、政策面では沖縄振興と基地負担軽減への決意を語るにとどめた。

安倍政権の発足以降、中国の軍拡を背景に日米同盟強化を目指す政府と、沖縄の溝はさらに深まっているようにみえる。

政府は今年3月、沖縄の反対を押し切って普天間の辺野古移設に向けた沿岸部の埋め立て許可を知事に申請した。サンフランシスコ講和条約が発効した1952年4月28日は、沖縄にとって日本から切り離された「屈辱の日」だが、政府はこの日にちなんで主権回復記念式典を開いた。オスプレイ配備を巡っては、今夏の追加配備で米政府と合意した。沖縄の負担軽減策として政府が強調する県中南部の6米軍基地の返還計画は、約8割は県内移設が条件だ。

沖縄戦で大田実・海軍中将が自決前に海軍次官に送った電文に「沖縄県民斯く戦えり。県民に対し、後世特別の御高配を賜らんことを」との有名な言葉がある。しかし、沖縄の人たちにとって、最近の動きは「御高配」どころか、全く逆のものに映っているのではないか。

普天間の辺野古移設は、このままでは知事の許可を得られる見通しは立たない。計画見直しも含めた再検討が必要だ。米軍の訓練移転も進める必要がある。

米兵による事故や犯罪が続く中、在日米軍に捜査権などで特権を認めた日米地位協定の抜本改定を米側に提起することも真剣に検討すべきだ。沖縄のさらなる負担軽減を待ったなしで進めねばならない。

読売新聞 2013年06月24日

首相沖縄訪問 政府一丸で基地負担を減らせ

沖縄の過重な米軍基地負担を軽減するため、政府は一丸となって努力する必要がある。

太平洋戦争の沖縄戦で組織的戦闘が終結したとされる「慰霊の日」の23日、安倍首相が沖縄県を訪問し、沖縄全戦没者追悼式に出席した。

式典には、岸田外相、小野寺防衛相、山本沖縄相も同席した。外相、防衛相の出席は初めてだ。沖縄問題に取り組むには、関係府省の緊密な連携と、地元との重層的な調整が欠かせない。

首相は式典後、基地負担軽減について「目に見える形で実施したい」と語った。米軍普天間飛行場に関しては、「固定化はあってはならない。一日も早い移設に努力を重ねたい」と強調した。

日米両政府は4月上旬、県南部の米軍6施設について10~16年間程度で計1000ヘクタール以上の広大な土地を返還する計画を発表した。この計画の着実な実行こそが沖縄の負担を減らす最大の近道だ。

特に普天間飛行場の辺野古移設を実現することが重要である。

日米両政府は今月13日、来年度に予定していたキャンプ瑞慶覧の西普天間住宅地区の返還を年内にも前倒しすることで合意した。

普天間飛行場の辺野古移設に伴う公有水面埋め立てを、仲井真弘多知事が承認しやすくするための環境整備の一環と評価できる。

大切なのは、基地返還後の跡地について、政府と地元自治体などが協議し、より効率的な利用策を検討することだ。様々な沖縄振興策とも連動させたい。それが基地返還の価値を高めよう。

首相は式典後、沖縄振興策について知事と意見交換した。信頼関係を醸成しつつ、辺野古移設への知事の理解を広げるべきだ。

一方で、基地負担の軽減はあくまで、在沖縄米軍の抑止力の維持と両立させなければならない。

北朝鮮の核・ミサイル開発や、中国の急速な軍備増強と示威活動の拡大を踏まえれば、自衛隊と米軍の即応・機動力の重要性が今、一段と増しているからだ。

沖縄県与那国町議会は20日、与那国島への陸上自衛隊沿岸監視部隊の配備に伴う町有地の国への賃貸を承認した。防衛省と町は一時、陸自配備に関する町への協力費支払いをめぐって対立したが、週内にも賃貸契約を結ぶ運びだ。

自衛隊や米軍が効果的な活動を行うには、地元関係者と安定的で良好な関係を築くことが前提となる。防衛省は引き続き、様々な機会をとらえ、沖縄との関係を深めることが求められる。

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