核軍縮の機運の高まりを生かし、アジアの安全保障環境の改善へつなげることが重要である。
オバマ米大統領がドイツの首都ベルリンで演説し、ロシアに新たな核軍縮交渉を提案した。
戦略核弾頭の配備数の上限を、現在の米露の新戦略兵器削減条約(新START)が規定する1550個から3分の1減らして、1000個程度にしたいという。
比較的威力が小さい戦術核兵器も、削減対象に加える方針だ。
オバマ氏は、任期1期目で達成した新STARTに続く核軍縮の成果を、2期目でも引き続き追求する意欲を表明したと言える。
ロシア側は、ロゴジン副首相が「真剣に受け止めることはできない」と述べるなど、提案の受け入れには否定的だ。米国が欧州で進めるミサイル防衛(MD)計画によって自らの核抑止力が弱まることを強く警戒しているためだ。
軍縮交渉の行方は不透明だ。それでも核大国の米露両国には、世界の安定に特別の責任がある。
世界には1万を超す核兵器がある。その95%を保有する両国が、自らの核を削減せずに、いくら他国に核を持つな、核を減らせ、と言っても、説得力は持つまい。その点を自覚して、核軍縮に真摯に取り組んでもらいたい。
今回の核軍縮提案に際し、オバマ氏は、戦術核の削減へ向け、北大西洋条約機構(NATO)の同盟国とも協力すると述べた。
「核兵器のない世界」の理念を掲げてノーベル平和賞を受賞したオバマ氏の真価が問われているのは、核を巡る環境が悪化しているアジアでの取り組みだ。
中国の核弾頭は250個に達している。その中国やインド、パキスタンは核兵器を増強し、北朝鮮は核実験を3度強行して核ミサイル武装化にひた走っている。
米国の“核の傘”に抑止力を頼っている日本としては、こうした状況で米国が核軍縮を進めれば、かえって地域の安定が損われはしまいか、とも懸念される。
オバマ氏が、今回提案の核削減を実行しても、「米国と同盟国の安全は確保でき、抑止力を維持できる」と述べたことは心強い。
中国には、米露に協調して核削減を進めるよう、強く求めたい。中国の習近平国家主席はオバマ氏と、北朝鮮の非核化で一致した。北朝鮮に核放棄を迫るためにも自らの核軍縮が求められよう。
核実験全面禁止条約(CTBT)の早期発効へ、条約批准を急ぐ点でも米中は協調すべきである。
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