G8とシリア 依然見つからない内戦の出口

朝日新聞 2013年06月20日

G8と世界 課題を並べるだけでは

世界の難題をショーケースに並べてみせた。でも、その処方箋(せん)は示せなかった。

英国・北アイルランドであった主要国首脳会議(G8サミット)である。今年も指導者らの頭を悩ませたのは、グローバル化とどう向きあうかだった。

議長国である英国は、多国籍企業による「税逃れ」を提起した。その具体策は、銀行口座の情報交換をめぐるルールづくりの促進などにとどまった。

貿易や投資の自由化では、日本が7月に加わる環太平洋経済連携協定(TPP)を含め、米欧日の3極間などの自由化交渉を進めることをうたった。

これまで旗振り役だった世界貿易機関(WTO)が先進国と新興国の対立などで行き詰まっているため、地域間協定に力を入れるしかない。そんな現状を追認したにすぎない。

政治面の焦点だったシリア問題では、米欧は化学兵器を使ったとしてアサド政権の退陣を求め、ロシアは抵抗した。

その対立軸は、主要国が人権を盾に他国に干渉することを認めるかどうかの是非であり、論争の出口は見えない。

G8の存在意義が問われて久しい。とりわけ08年のリーマン・ショック以降、その傾向に拍車がかかった。経済でも政治でも、新興国の比重が増し、旧来の先進国だけで世界の潮流を決められる時代ではなくなった。

だとしても、単に課題を毎年大々的に提示することだけが、G8の役回りと割り切っていいはずはない。

グローバル経済が生みだすひずみ、勃興する中国と周辺国とのあつれきやトルコの混乱、アフリカの不安定さ……。世界を見渡せば、力は陰ったとしても、G8以外に世界共通の議題設定や指針の提案ができる存在は少ない。

国際NGOや財界会合など、国の枠組みを超えたフォーラムは近年多く育った。金融危機後は新たに20カ国・地域に広げた首脳会合の枠組みもできた。

だが、参加国が多様すぎるとかえって論議が進まない限界も浮かぶ。地球規模の安定をめぐる構想力と実行力を兼ね備えているのは、主要国の対話の場としてのG8と、国連であることは間違いない。

今回、ささやかな試みもあった。税逃れの論議では、多国籍企業が活動しながら大した税収が得られないアフリカの首脳も招かれた。先進国の財政問題と南北問題を融合させる新たな取りくみとして注目される。

先進国クラブ自体も、変化を迫られている。

毎日新聞 2013年06月19日

G8と世界経済 先進国が混乱招いては

世界が安定して発展するようリードするのが、本来先進国に課せられた役目のはずだ。ところが、どうだろう。主導どころか不安定の種をまいているのが現状ではないか。

今年も主要8カ国(G8)の首脳会議が開かれ、世界経済が主要議題の一つになった。経済規模が合わせて世界全体の約半分を占める大国の指導者の集まりだ。

にもかかわらず市場の関心は、G8ではなく、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が次に何を言うかに集中している。経済安定化の道具であるべき金融政策が市場の主役と化した証しだ。FRBがいつ大規模な量的緩和の縮小を始めるかが、巨大なマネーの流れを左右する一大イベントになってしまったのである。

その影響は最近の先進国における株価乱高下だけでなく、新興国からの投資資金流出やそれに伴う為替の急落といった形で、世界経済を揺さぶり始めている。憂うべき事態だ。

先進国は、今のいびつな金融緩和頼みから早期に脱し、構造改革にこそ本腰を入れなければならない。株価上昇など短期的成果は得にくいだろうが、地道な取り組みこそ自国経済にも世界経済にも、安定した成長をもたらすことになる。

しかし、G8の首脳宣言から、そうした転換への強い意志は伝わらない。金融緩和についても、「いくつかの中央銀行が量的緩和など異例の手段を通じて非常に緩和的な政策を続けている」との指摘にとどめた。

リーマン・ショック後、世界経済を下支えした新興国は発言力を強め、G20(主要20カ国・地域)の台頭につながった。先進国が今後、新興国を巻き込む新たな危機を引き起こすことになれば、G8は世界でますます指導力を低下させるだろう。民主化や安全保障、環境など経済以外の分野で国際協力を推進するうえでも、マイナスになりかねない。

一方、安倍晋三首相は「日本の経済政策は評価された」と成果を強調した。しかし胸を張れるだろうか。「信頼できる中期的な財政再建計画を明確に示す必要がある」(首脳宣言)と注文が付いたことを、真剣に受け止め行動する必要がある。

米国が量的緩和の収束を示唆しただけで、世界の市場が混乱したことは、“出口”の難しさを印象づけた。日本は先進国一の借金大国であるだけに、金利上昇を伴う出口でより困難に直面しかねない。

デフレから脱却し再び世界経済に貢献したいという発想はよい。だが、手段を間違えると貢献どころか大迷惑をかけてしまう。G8で2番目の経済大国である日本は、そのことを十分認識する時だ。

読売新聞 2013年06月20日

G8首脳宣言 日本経済が久々に示す存在感

久しぶりに日本の首相が存在感を示した。公約となった日本経済の再生に向け、政策の着実な実行が求められよう。

英国の北アイルランドで行われた日米独など主要8か国首脳会議(G8サミット)は、首脳宣言を採択し、閉幕した。

宣言は「世界経済の成長見通しは弱い」との認識を示した上で、「持続可能な回復へ断固たる行動が必要」と強調した。

ユーロ圏はマイナス成長が続き、牽引(けんいん)役だった中国など新興国の景気減速も目立つ。G8が結束を再確認したのは適切である。

今回、焦点の一つになったのが安倍政権の経済政策「アベノミクス」だ。安倍首相は会議で、「日本経済の発展が世界経済の発展に貢献する」と説明した。

宣言が大胆な金融緩和、財政刺激策、成長戦略という「3本の矢」に言及し、「日本の成長を支える」と評価した意味は重い。

日本は期待に応え、世界の成長に寄与できるよう、デフレ脱却と経済再生を急がねばならない。

先進国最悪の財政状況にある日本には、厳しい注文も付いた。宣言が「信頼できる中期的な財政計画」を求めたことだ。

政府は、今夏策定する中期財政計画で、成長と財政再建の両立への具体的な道筋を示し、その実現を図ることが肝要である。

世界が成長するための原動力は自由貿易推進だとして、宣言は、日本が参加する環太平洋経済連携協定(TPP)交渉などについて「可能な限り速やかな完結を目指す」と明記した。日本は、農業自由化への対応を急ぐべきだ。

グローバル企業が税率の低い国の制度を利用して節税している問題に関し、G8首脳が、課税逃れ防止の国際ルール作りを急ぐことで合意したのは前進だろう。日本などが主導し、適正に徴税できる仕組みを整えてもらいたい。

一方、1月のアルジェリア人質事件を受け、北アフリカ諸国でのテロ対策にG8が協調することで一致したのは評価できる。

宣言は、北朝鮮に核・弾道ミサイル計画の放棄を要求し、挑発行為の自制を促した。懸案の拉致問題を巡っても、人権侵害に関する懸念の解消に取り組むことを北朝鮮に強く求めた。

首相が日本の立場を主張し、理解を得た成果と言える。

G8は中国とも連携し、北朝鮮に対し、国連安全保障理事会の決議や、核問題に関する6か国協議の共同声明にある義務を履行するよう、強く働きかけるべきだ。

産経新聞 2013年06月21日

G8と拉致 国際圧力をさらに強めよ

主要8カ国(G8)首脳会議(ロックアーン・サミット)で採択された首脳宣言に、北朝鮮の核・ミサイル計画の放棄に加え、「拉致問題への取り組み」が明記された。北朝鮮の工作員により、相当数の日本人が拉致されたこの問題は、日本の主権が侵害されたテロ行為だ。国際社会の圧力と支援が問題解決に必要であり、日本の外交努力を評価したい。

拉致問題は2008(平成20)年の北海道洞爺湖サミット以降、毎年首脳宣言に明記されている。今年は、ワーキングディナーで、シリアでの人権侵害が論議された際、安倍晋三首相が「拉致も人権の侵害だ」と切り出し、首脳宣言に盛り込む流れをつくった。

安倍首相は先のオバマ米大統領との電話会談でも、拉致問題を取り上げ、オバマ氏はすべての拉致被害者の帰国と真相究明などを求める日本の立場を支持した。

サミットに先立ちポーランドで行われた、チェコ、スロバキア、ハンガリーを加えた東欧4カ国(V4)首脳との会談でも、首相は拉致問題への協力を求め、共同声明に「拉致問題解決」が盛り込まれた。

機会あるごとに、各国首脳に拉致問題を訴えようとする首相の熱意がうかがえる。拉致問題は日本が主体的に動かない限り、置き去りにされてしまいかねない。今後も、安倍政権の積極的な海外発信に期待したい。

先月、飯島勲内閣官房参与が訪朝し、拉致被害者の即時帰国や実行犯の引き渡しを北朝鮮に求めた上で、懸案の解決がない限り「日本は(国交正常化などに)動かない」との首相の意向を伝えた。

その後、終戦前後に朝鮮半島の38度線以北で死亡した日本人の遺骨収集を目指す遺族らの団体が、北朝鮮を訪問した。北が日本との対話を模索しているのか、揺さぶりか、狙いがまだ分からない。

遺骨返還や墓参は大事な問題だが、日本にとり最重要課題は拉致問題である。北朝鮮はまず、5年前に約束した拉致被害者の再調査を実行すべきだ。

最近、中国も北の非核化に向けて動き出したとされる。一方、米国では、北の米朝高官会談提案など対話攻勢をめぐる日本、米国、韓国の3カ国会合が開かれた。拉致、核、ミサイル問題の包括的な解決には、日米韓3カ国のいっそう強い連携も必要である。

毎日新聞 2013年06月19日

シリア情勢 米国の「本気」が必要だ

約160万人とされるシリア難民は、どんな思いで主要8カ国首脳会議(G8サミット)を見守っているだろう。内戦の死者が10万人に迫るシリア情勢について、米露首脳会談では意見の相違が目立ち、見るべき進展はなかった。国連安保理もG8も、シリアの人道危機に有効な手立てを打てない。それが世界の現状であることを残念に思う。

疑問の目は、米欧よりロシアや中国に向けられるべきだろう。露中はシリア情勢に関する安保理決議案を拒否権で葬り去ってきた。では両国に名案があるかと言えば、それもない。安保理の機能停止の主たる原因は露中にあると言わざるを得ない。

米国も慎重だった。だが、かねて化学兵器の使用を警戒していたオバマ政権はG8の直前、シリアのアサド政権による化学兵器使用が確認されたとして、反体制派に軍事支援を行うと発表した。ロシアは、米国の武器支援やシリアでの飛行禁止空域の設定構想に強く反対している。

確かに、米国の軍事支援が奏功する100%の保証はあるまい。2年前、欧州諸国と米国は安保理決議を得てリビアへの武力行使に踏み切り、飛行禁止空域も設定した。その結果、カダフィ独裁政権は崩壊したが、リビアはいまだ安定にはほど遠い。欧米はこの教訓を大切にして、シリアを安定に導くシナリオを慎重に描いておくべきだろう。

だが、より大きな問題は、ロシアと中国があまりに神経質に、利己的に、シリア情勢を自国のイスラム政策と結び付ける点にあるのではないか。両国には多くのイスラム教徒がいる。アサド政権が崩壊すれば、シリアで多数派のスンニ派が主導権を握り、その衝撃はロシアや中国にも及ぶだろう。両国が民衆運動「アラブの春」に、あまりいい顔をしないのも同じ理由からだ。

もちろん露中の国益はあろうが、アサド政権は国内外で正統性を失っている。露中は欧米と協力して「アサド後」の政権の枠組みを作り、新時代へのソフトランディングを図るのが現実的だろう。反体制派への武器支援に反対するなら、ロシアもアサド政権への軍事支援をやめるべきだ。そうでないと、同政権は国際会議構想も真剣に検討しないだろう。

米国も一足飛びの武力行使は考えていまい。オバマ大統領が言うように、シリアはイラクではない。だが、イラクのフセイン政権による使用から25年ぶりに化学兵器が使われたことは重大である。米国の影響力が強い中東でオバマ政権が事実上、不介入の姿勢を取り続け、それがアサド政権を増長させた側面は否定できまい。平和的解決を図るにも米国の本格的な取り組みが必要だ。

読売新聞 2013年06月19日

G8とシリア 依然見つからない内戦の出口

シリアの内戦をいかに終結させるか。各国首脳は、今回の合意実現へ、最大限努力すべきだ。

英国・北アイルランドで開かれた主要8か国首脳会議(G8サミット)で、安倍首相ら参加国首脳は、焦点のシリア情勢について、流血の惨事を終わらせるため国際会議の早期開催を目指すことで合意した。

オバマ米大統領とプーチン露大統領が個別に会談し、一致したことを踏まえたものだ。

国際会議が重要だという認識を改めて共有したとは言え、米露首脳の見解の差は依然、大きい。

米露首脳会談では、「アサド大統領抜き」の「シリア移行政府」作りを会議の目的とするオバマ氏と、アサド氏排除に反対するプーチン氏の対立は解けなかった。

内戦は泥沼化し、厳しさを増している。アサド退陣を求めるデモの発生から2年余りで死者数は9万人を超した。深刻な事態だ。

国際社会はアサド政権の擁護派と反対派に割れている。

アサド政権の人権弾圧を批判する欧州連合(EU)は、シリアへの武器禁輸を解除し、反体制派への武器供与に道を開いた。

米国も、「アサド政権が化学兵器を使用したことを確認した」として、反体制派への軍事支援を決めた。近く弾薬などの供与に踏み切るのでは、と見られる。

これに対して、シリア政府の後ろ盾となってきたロシアは、米側の主張には根拠がないと反発し、地対空ミサイルの供与でアサド政権を支える方針だ。

政府軍には最近、レバノンに拠点を置きイランの支援を受ける武装組織ヒズボラも加勢した。戦火が収まる気配は見えない。

米露の相互不信の一因になっている化学兵器問題では、事実関係を検証する必要がある。

和平協議が軌道に乗らねば、内戦は長期化して、周辺諸国まで不安定化する事態が懸念される。

国際テロ組織アル・カーイダとつながるイスラム過激派も、内戦に乗じて勢力を拡大している。大量に出回る武器が、テロ組織に拡散する恐れはないのか。

一方、ヨルダンなど周辺諸国に逃れた難民は、150万人を超えた。受け入れ国の負担は重い。

安倍首相はG8サミットで、国内避難民や難民を支援する1000万ドルの緊急無償資金協力や、ヨルダンに対する1億2000万ドル相当の円借款供与を表明した。

政治的な解決を図るとともに、各国が可能な限りの人道支援を進めることも必要だ。

産経新聞 2013年06月19日

日本経済とG8 再び「機関車役」目指そう

主要8カ国(G8)首脳会議で、アベノミクスを歓迎する発言が相次いだ。経済に関する首脳宣言では、米欧と並んで世界経済の下振れリスクを減少させた、「政策努力」だと評価された。

安倍晋三政権が進める金融緩和、財政出動、さらに直前にまとまった成長戦略と「骨太の方針」などアベノミクスがG8の“お墨付き”を得た。安倍首相は株価、金利、円相場など市場の混乱に惑わされず、自信を持って政策を推進してほしい。

サミットでの認知はデフレ脱却と経済再生でこれまで以上に重い責務を負ったことを意味する。

今回、一部首脳が日銀の金融緩和や通貨安競争への懸念を示したにもかかわらず、G8としてアベノミクスを評価したのは、そうした副作用以上に日本の再生こそが世界経済には重要との認識で一致したからにほかならない。

1980年代、日本は当時の西ドイツとともに貿易などの外需中心の成長から内需主導型に転換したうえで、世界経済の機関車役を果たすことを求められた。

現在の日本は米国、中国に次ぐ経済大国でありながら、15年余に及ぶデフレと低成長に苦しんでいる。この間、世界経済の牽引(けんいん)役も果たせなかった。ドイツは法人税率引き下げ、社会保障給付額の削減、雇用ルールの変更などを断行して競争力を強化し、債務危機に陥った欧州を支えている。

規制改革による新産業創出を軸に競争力を強め、日本経済復活を図るアベノミクスの方向性は、ドイツの構造改革と重なる。個々の規制緩和や減税項目などでなお踏み込み不足もあるが、世界経済を引っ張る機関車役に日本は返り咲くという気構えで、ぜひともアベノミクスを成功させてほしい。

指摘しておかねばならないのは、首脳宣言で、日本が名指しで財政健全化の道筋を示す中期財政計画の策定を求められたことだ。国と地方の借金残高が国内総生産(GDP)の約2倍という日本の財政赤字は、世界経済の波乱要因として警戒されているのだ。

これに対し、安倍首相は首脳会議で、経済再生と財政再建の両立を強調し、景気回復などの環境が整えば、消費税の税率を引き上げると表明した。

日本は経済再生だけでなく、財政再建でも責任を果たさねばならないことを銘記すべきだ。

毎日新聞 2013年06月16日

安倍政権の原発政策 逆戻りは許されない

原発政策が、「3・11」前に逆戻りし始めたのではないか。安倍政権の姿勢に、そんな懸念を持たざるを得ない。

経済政策「アベノミクス」の第三の矢として閣議決定した成長戦略に、原発再稼働への決意と原発輸出への強い意欲が盛り込まれた。それを先取りするように、安倍晋三首相は原発輸出の「トップセールス」にまい進している。

東京電力福島第1原発の過酷事故を踏まえて自民党は、昨年末の総選挙で「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立」を公約に掲げたはずだ。なし崩しの方向転換は、とうてい認められない。

成長戦略には、原子力規制委員会の規制基準で安全性が確認された原発の再稼働を進めると明記された。原発を含めたインフラの輸出については、2020年に今の3倍の約30兆円にするという目標を掲げた。そのために、首相・閣僚レベルが毎年10件以上をトップセールスし、官民一体で売り込んでいくという。

安倍首相は4~5月の外遊で、トルコやアラブ首長国連邦、サウジアラビアに原発や関連技術を売り込んだ。インドのシン首相とは、原発輸出の前提になる原子力協定の締結交渉を促進することで合意した。

そして今度は、ポーランドを訪問してチェコ、スロバキア、ハンガリーを加えた東欧4カ国の首脳に日本からの原発輸出を働きかける。

「アベノミクス」を看板にする首相にとって、成長戦略は政権浮揚のカギを握る大事な一手だ。ところが、盛り込まれた政策の多くは即効性に乏しく、市場の評価も厳しい。

その中にあって、原発輸出は1基数千億円の巨大ビジネスだ。国内での原発の新増設は極めて難しいだけに、原発需要が高まっている新興国は、垂涎(すいぜん)の市場に映るのだろう。原発関連の技術を維持・承継するためにも輸出は必要という議論もある。

しかし、そうした理由を重ねても、首相が先頭を切って輸出にまい進することは、正当化できない。

安倍首相は「日本は世界一安全な原発の技術を提供できる」と言い切る。しかし、2年前の3月11日に起きた原発事故の原因究明は、終わっていない。「世界一安全」という根拠はどこにあるのか。

事故の現場では、放射能の脅威にさらされながら、出口の見えない収束作業が続いている。毎日400トンずつ増える汚染水の処理もままならない。そして、今なお多くの被災者が故郷を離れた生活を余儀なくされている。原発事故がもたらす犠牲の大きさは、計り知れない。このままでは、ビジネス上の利益を優先させて過酷事故のリスクを輸出することになりかねない。

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