選挙に表れた民意にどう応えるのか。政権交代を機に、まずは対外関係の修復を期待したい。
核開発で国際的孤立を深めているイランで大統領選挙が行われ、米欧との関係改善を掲げた保守穏健派のロハニ師が当選した。
50%を超える得票率で、有力と目された保守強硬派の候補に大差をつけての勝利である。
ロハニ師は「過激主義に対する知恵の勝利だ」と宣言した。現政権とは一線を画す立場だ。
イスラエルを「地図から消し去るべきだ」など挑発的言動が目立ったアフマディネジャド大統領の強硬な外交路線を転換するなら、国際社会にとっても望ましい。
ロハニ師大勝の背景には、イラン社会に広がる閉塞感がある。
現大統領の2期8年の在任中、改革派の政治家や言論は封じ込められた。核開発継続を理由に米欧から科せられた制裁で、原油輸出が落ち込み、物価も高騰して、国民生活は困窮している。
有権者は、事態打開をロハニ師に託したと言える。
焦点は、核問題での対応だ。
イランは、国連安全保障理事会の決議を無視してウラン濃縮活動を続けている。濃縮度も原子力発電所の核燃料に使われる3・5%を上回る20%にまで高めた。核兵器開発を狙っているのでは、と疑われても仕方あるまい。
安保理常任理事国とドイツの6か国は、濃縮度20%ウランの生産停止を最優先で求めている。
選挙後、米欧諸国が核問題の迅速な外交的解決を改めてイランに呼びかけたのは、当然だ。
ロハニ師は、改革派のハタミ前政権下で英仏独との核交渉の責任者を務め、柔軟姿勢を示した経歴があるが、楽観はできない。
イランでは、外交決定権を含め実権は最高指導者ハメネイ師にある。政教一致体制の下、ハメネイ師の同意抜きに核政策の変更はあり得ない。カギを握るハメネイ師が政策転換できるのかどうか。
イスラエルは、イランの核兵器保有を阻止するために、攻撃も辞さない構えだ。イランの核開発が続けば、軍事的緊張は高まる。
菅官房長官は、イランの大統領交代が、核問題の解決に向けて「具体的な進展」をもたらすことに期待感を表明した。日本としても、「伝統的な友好関係」をテコに働きかける考えだ。
原油の輸入を中東地域に依存する日本にとって、地域の安定は死活的に重要だ。イラン情勢から目を離すわけにはいかない。
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