朝日新聞 2013年06月07日
米中首脳会談 争いより共存の思考を
19世紀末の「眠れる獅子」が近代化に目ざめて約100年。「巨大な竜」に成長した中国の首脳が、20世紀を制した米国とひざ詰めで世界を語りあう。
7、8日に米カリフォルニアである米中会談は、両国の綱引きがアジア太平洋の行方を左右する時代を告げている。
異例ずくめの設定だ。習近平(シーチンピン)国家主席は就任から3カ月。多国間会合は別にして、初訪米までに3、4年をかけた江沢民、胡錦濤両氏にはなかった積極的な対米アプローチである。
前任者らの形式ばった外交と違い、オバマ大統領とノータイ半袖で保養地に1泊する。国際的な地位に自信をたくわえ、米国と屈託なく渡りあう指導者像を印象づけたいのだろう。
オバマ氏は08年の就任当初から対中外交を重んじ、「21世紀を形作る関係」と位置づけた。安保経済すべてを話し合う対話の枠組みを通じて、意思疎通のパイプを広げようとした。だが、やがて期待はしぼんだ。
中国は近隣との領土問題で強引なふるまいを続けたほか、北朝鮮寄りの姿勢をとってきたからだ。シリアなど人権問題でも米欧との対立の構図が続く。中国政府や軍の関与が疑われる対米サイバー攻撃も、いま深刻な不信の種となっている。
だが、ことし、オバマ政権は2期目に入り、中国指導部は世代交代した。今回の会談は、仕切り直しの好機をとらえたものだ。個別的な合意よりも、2人の個人的な信頼関係づくりに主眼が置かれている。
中国は米国と「新しい大国関係」をめざすという。両国は政治体制を支える思想がまるで違う。だから対立点はあるが、総合的な協力関係は見失うまい。冷戦期の米ソのような対立は避けられるとの考えだという。
グローバルな相互経済依存の時代、世界を二分できるはずもない。中国も運命をともにする地球号の一員として、責任ある大国になるかどうかに世界の目は注がれている。
新大国というならば、冷戦期のような米国との覇権争いではなく、周りのすべての国との平和的な共存発展を真摯(しんし)に約束する姿をみせるべきだ。海の航行の自由や貿易、紛争の解決などで国際ルールを守る意思と行動を示さねばならない。
一方、新たな思考が求められるのは日本も同じだ。安倍政権の「価値観外交」が「中国包囲網」をめざしているとすれば、構図はそれほど単純ではない。
米中が新秩序を探りあう21世紀の日本の立ち位置はどこか、創造的な外交戦略が必要だ。
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毎日新聞 2013年06月11日
米中と南北対話 核の協議につなげたい
米国で行われたオバマ米大統領と中国の習近平国家主席の会談が終わり、今度は韓国と北朝鮮による南北高位級の会談が12日からソウルで行われることになった。
昨年末以来、事実上の長距離弾道ミサイル発射、核実験強行、日米韓への核攻撃示唆など、常軌を逸した北朝鮮の言動がようやく収まり、対話局面に入ったわけだ。
協議の展開は予断を許さないが、韓国政府はぜひこの機会を核問題の論議につなげてほしい。
米中会談と南北の動きには密接な関連がある。
「北朝鮮の非核化は両国の共通目標であり、北朝鮮を核保有国と認めない。非核化に向けた協力を強化する。非核化実現に向け、北朝鮮への圧力を継続する」
こうした方針で米側と合意した習主席の意向は、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第1書記が北京に特使を送った際に伝わっているはずだ。
その特使は「中国側の提案を受け入れ、関係各国と対話したい」と語ったとされ、6カ国協議への復帰に前向きの姿勢を示したとも報じられたが、具体的な動きはなかった。
ソウルで2日間開かれる予定の南北会談は開始前から双方の思惑が食い違い、議題が統一されていない。韓国側は核問題の論議を優先したい模様だが、北朝鮮は経済的な利益獲得に主眼があるようにも見える。
南北共通の協議予定が明示されているのは3項目程度だ。
まず、北朝鮮側の開城(ケソン)地域に韓国企業を誘致し2004年から操業してきたものの、4月末に北朝鮮当局が労働者を撤収させ、ストップしている開城工業団地の再開問題。
1998年にスタートしたが2008年、北朝鮮の警備兵が韓国人女性観光客を射殺し、北朝鮮側が真相解明のための共同調査にも謝罪にも応じないため中断した金剛山(クムガンサン)観光事業の再開問題。
そして朝鮮戦争などで広く発生した南北離散家族の再会問題である。 このうち開城工業団地は、安価な労働力確保という点で韓国企業に利益があり、北朝鮮の暴発を抑止する「安全装置」としての役割もあるため操業を再開しやすいだろう。
しかし金剛山観光事業は北朝鮮にドルを渡しすぎ、核開発などの資金になったという批判もある。
北朝鮮はこの種の批判を回避するため離散家族問題を利用しようとしている、との見方もある。
核問題については北朝鮮が「米国と話すことであって、南側は相手ではない」と拒むのは目に見えているが、その壁を何とか崩したい。そういう流れになってこそ、6カ国協議再開の展望が開けてくるだろう。
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読売新聞 2013年06月08日
日仏首脳会談 互いに有益な原発・安保協力
安倍首相が、来日中のオランド仏大統領と会談した。両首脳は、原子力や安全保障分野など幅広い協力をうたった共同声明を発表した。
原子力発電については、原発の安全確立や放射性廃棄物の最終処分など包括的な協力に言及している。核燃料サイクル推進と、次世代の原子炉である「高速炉」の共同開発も盛り込んだ。
日仏が技術や経験の蓄積を生かして協力する意義は大きい。
東京電力福島第一原子力発電所事故の処理も、官民で連携を一層拡大する。フランスは、汚染水や土壌の処理などで高い技術を持つ。両国の連携強化は、原発事故処理を国際的に進める一つのモデルにもなろう。
原発輸出に関しては、第三国への輸出に向けて、日仏が官民連携で取り組むことを明記した。
三菱重工業と仏原子力大手アレバの企業連合は先月、トルコからの受注に初めて成功した。こうした国際戦略の展開は、双方の経済にとっても有益だ。
共同声明のもう一つの大きな柱である安保では、「新たな大国の台頭で生じる課題に対応する」として、強硬姿勢を強める中国に対する連携強化を打ち出した。
特に、「海洋法の原則の尊重」といった海洋関連の項目には、太平洋に自国領の島々を持つフランスと、対中国で協調できるとの日本側の期待がある。
ただ、仏防衛企業は先般、悪天候でもヘリコプターが着艦できる装置の輸出契約を中国と結んだ。日本側は、尖閣諸島周辺で中国公船が領海侵入を繰り返しており、中国の船の能力増強は好ましくないと仏側に懸念を伝えてきた。
両首脳が、武器転用が可能な装備品の輸出を協議する政府間対話の開始で合意したのは一歩前進だ。今後も対中輸出に、厳しく抑制を求めていく必要がある。
大統領は会談後、国会で演説し、日本と中韓両国との関係が歴史認識を巡って緊張していることを念頭に「過去に対しては一線を引かねばならない」と述べた。長年戦争を続けた仏独両国が関係を改善したことを例に挙げた。
歴史認識の問題については、日本の立場を仏側にも丁寧に説明していかねばなるまい。
今回のオランド氏の訪問は、仏大統領としては、シラク氏以来17年ぶりの国賓訪問だ。サルコジ前大統領は、中国との経済関係を重視し、とかく日本に冷ややかだった。オランド氏の来日を日仏関係再出発の機会としたい。
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産経新聞 2013年06月11日
尖閣で米中応酬 「挑発」するのはどちらだ
米中首脳会談で、尖閣諸島(沖縄県石垣市)をめぐる応酬があった。オバマ米大統領が「行動でなく、話し合いを」と中国側に自制を求めたのに対し、中国の習近平国家主席は「(日本は)挑発をやめるべきだ」と主張した。
中国は尖閣が「盗取」されたと詭弁(きべん)を弄し、尖閣周辺で公船による領海侵犯を繰り返している。日中のどちらが挑発しているかは明らかだろう。
オバマ氏が尖閣問題を「長時間」(米側)取り上げたことは、日本の立場も踏まえたもので歓迎したい。しかし、米国は尖閣が日本防衛義務を定めた日米安全保障条約の適用対象であるとの姿勢をとっているにもかかわらず、オバマ氏が明確に言及しなかったとすれば残念だ。
習氏は「主権と領土を断固守る」と言明した。南シナ海の島嶼(とうしょ)の問題を含め「関係各国が責任ある態度で挑発ともめ事を起こすことをやめ、対話を通じて問題を解決することを望む」と語った。
尖閣についての中国の領有権主張は石油資源埋蔵の可能性が浮上した1970年ごろからだ。対話で解決というが、そもそも解決すべき領有権問題が存在しない。
尖閣北方海域で今年1月、海自の護衛艦やヘリが、中国海軍艦艇からレーダー照射を受け、小野寺五典防衛相が「国連憲章上、武力の威嚇に当たる」と抗議した。中国側にこそ、こうしたもめ事を起こさないよう求めたい。
オバマ氏は習氏に対し、第三国の主権問題には立ち入らない米国の原則を示し、外交解決を目指すべきだと主張した。だが、ケリー国務長官らが「尖閣は日本の施政下にあり、現状を変更しようとするいかなる一方的な行為にも反対する」などと指摘しているのに比べれば抑制的だ。
米中首脳会談は2日間計8時間に及び、非核化に向けた北朝鮮への圧力強化などでも合意した。両首脳が率直な意見交換の場を持つことは歓迎できる。
安倍晋三首相は「世界の平和と安定にとってはいいことだ」と両首脳の対話について指摘する一方、「日米は同盟関係でこれは米中とは決定的な差だ」と述べた。17、18両日の英国での主要国首脳会議(サミット)の場などを利用して、今回の会談について米側に詳しい説明を求め、対中国での連携を確認してほしい。
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