公務員制度改革 怠慢5年の責任は重い

朝日新聞 2013年06月05日

選挙制度改革 もう議員に任せられぬ

「国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」

憲法41条には、こうある。だが、その名に恥じない働きをしていると胸を張れる議員は、どれだけいるのか。

衆院小選挙区の一票の格差を是正し、選挙制度の抜本的な見直しをする。昨年11月の自民、公明、民主のこの3党合意は、ほごにされるのが確実だ。

制度改革をめぐる与野党対立が解けず、安倍政権は衆院の小選挙区定数を「0増5減」する新区割り法案について、衆院の3分の2の多数で再可決する方針を固めた。

これで一時しのぎの格差是正は実現する見通しだ。だが、それ以上は手がつかぬまま国会は幕を閉じ、抜本改革はうやむやに終わりそうだ。

最高裁が衆院の一票の格差を「違憲状態」と断じたのは、2011年の3月だ。国民への約束といえる3党合意や衆院選をへて、2年以上たったいまにいたってもこの体たらくだ。

与野党は、それぞれ定数削減や制度改革の案を出している。ただ、自民党は公明党の議席維持に配慮した複雑きわまる制度を唱え、野党の一部は極端な定数削減を言い募る。

要は、自分たちが有利になる制度を主張するばかり。有権者の意思をいかに適切に国会の議席に反映させるかという真摯(しんし)な姿勢はまったく見えない。

一方で、司法からの「違憲」あるいは「違憲状態」の判断に対し、「立法権への侵害だ」という反発がまかり通る。

党利党略がさまざまに絡み、自らの身を切る改革は難しいのだろう。だとしても、各党の間で妥協を図る政治的な意志も交渉術も持ちあわせないというならば、国会の手による改革は不可能だと認めるしかない。

1993年に自民党が下野し、自民党と社会党中心の「55年体制」は終わりを告げた。いまの小選挙区比例代表並立制の導入が決まったのは、翌94年のことだ。

それから6回の衆院選をへて、政権交代は2度実現した。一方、最近の3回の選挙では、得票率の差以上に議席数が大きく開くという小選挙区制の特性が如実にあらわれた。

いまの制度の点検を含め、衆院と参院の役割分担も念頭においた選挙制度の抜本改革をセットで考える。そのためには、首相のもとで各界の有識者らが議論する「選挙制度審議会」に委ねるしかない。

安倍首相はじめ各党党首は、その決断をすべき時だ。

毎日新聞 2013年06月05日

公務員制度改革 怠慢5年の責任は重い

国家公務員の人事体系などを見直す公務員制度改革の仕切り直しを安倍内閣が図っている。政府は月内に全体像を取りまとめ、参院選後の臨時国会に関連法案を提出するスケジュールを描く。

2008年の国家公務員制度改革基本法制定で改革の青写真を示してからはや5年、具体的な立法措置をほとんど講じず無駄にエネルギーを費やした与野党の責任は大きい。今度こそ制度化を急ぐべきだ。

基本法は自民、民主両党が賛成し成立したプログラム法だ。「省あって国なし」とまで言われる中央官庁の省益優先を打破するため各省幹部人事は官房長官が候補名簿を作り、内閣官房に置く内閣人事局で一元管理することなどが盛り込まれた。

だが、制度化に向け自公、民主両政権で3度にわたり提出された関連法案は衆院解散などでいずれも廃案の憂き目をみた。政府の制度改革推進本部も7月に期限切れを迎える。5年にわたる迷走はあたかも「決まらない政治」の象徴である。

内閣人事局にいたっては基本法施行から1年以内が設置に向けた法制化の期限だった。第1次内閣当時に公務員制度改革を主唱した安倍晋三首相が引き取ることは当然である。

とはいえ、行方は予断を許さない。稲田朋美行政改革担当相は麻生内閣が09年に国会に提出した政府案を踏まえ、改革案を練り直すという。

内閣人事局の権限をめぐっては給与ランク別に定員を決める「級別定数」の管理権限を人事院から移譲する点で調整が難航した経緯もある。一元化機能を骨抜きにしない一方で、客観的かつ公正な人事評価の担い手たり得るような組織のあり方を全体像で具体的に示す必要がある。

民主党が実現を目指した国家公務員の労働基本権の回復も避けて通れぬ課題である。民主党政権は国家公務員労組に労働協約の締結権を認める代わり、基本権を制約する代償措置である人事院勧告制度を廃止し、公務員庁を設置することを目指していた。

自民党は労働基本権の回復に慎重だ。だが、基本法では国民理解のもとに「自律的な労使関係制度を措置」するよう定めている。この問題を放置し人事院勧告制度の位置づけが不安定なまま、中長期的な公務員制度が描けるとは思えない。

人事院勧告に基づかず国家公務員の給与を平均7・8%引き下げた措置は来春で終了する。勧告に基づかない措置をそれ以降も続けるかどうか、政府は極めて難しい判断を迫られる。機動的な給与水準の決定を可能とするためにも、労働協約の締結など基本権を認めた新制度の構築を政府は怠ってはならない。

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