小学校の英語 楽しく学べる環境を整えたい

毎日新聞 2013年06月01日

小学校英語 じっくり豊かな果実を

安倍晋三首相直属の教育再生実行会議が、小学校の英語を正式の「教科」にし、開始学年を早めようと打ち出した。「グローバル化」に対応する大学教育の徹底的な国際化や人材育成などを首相に提言する中で、柱の一つとしたものだ。

関心は高い。文部科学相の諮問機関・中央教育審議会で仕組みを具体化するが、課題は多い。じっくり掘り下げ、着実な成果を求めたい。

英語について小学校では、総合的な学習の時間(総合学習)で「国際理解」をテーマに英会話に触れるなどしてきた。06年、中教審が必修化を提言し、今の学習指導要領では、高学年の5、6年生で週1時間「外国語活動」として授業が行われている。異文化への関心や理解、コミュニケーションの楽しさなどを学び「素地」を育むもので、文法学習などはない。担任と英語圏出身の外国語指導助手(ALT)らがチームで教えたりしている。

国語や算数と同様の教科となれば、授業は増え、学習指導要領に基づく体系的な検定教科書、成績評価、英語を教える教員の免許、養成や研修制度などが必要だ。とりわけ人材の養成と確保がカギになる。財政上クリアすべき課題も生じよう。

高校、大学への関門に待ち受ける入試英語を頭に勉強し、パスすれば用はないと忘れてしまう。これまでのお決まりだった。こうした発想もパターンも大きく転換させなければ意味がない。そればかりか、英語嫌いを増やすだけになりかねない。

英語が将来にわたり、実用、教養両面で活用できるものと意識でき、主体的に身につけていく動機付けが、指導上何より肝要だろう。

教育再生実行会議の提言は、中学では英語による英語授業の導入、高校では先進的な「スーパーグローバルハイスクール」の指定など、英語を軸にした改革推進を強調する。

そうした力は伸ばす一方で、また別の多様な適性や才能、関心を育む児童・生徒に、しっかり目を向け支えるべきことはいうまでもない。

教育改革の要は入試改革であると私たちは主張してきた。教育再生実行会議は今後大学入試のあり方についても論議、提言する。今回の英語教育改革がどう反映するか。

従来の難解な英文解釈を、さらに難解にすることではない。準備勉強が将来の生き方を豊かにする確かな「学力」になる試験改革が必要だ。

小学校段階では外国語よりも、自国語である日本語の理解と表現法をしっかり身につけるべきだという意見は多い。だが、適切な外国語学習は同時に自国語を意識させ、自国の文化や言葉の豊かさ、味わいを教えてくれるものでもある。

読売新聞 2013年05月29日

小学校の英語 楽しく学べる環境を整えたい

日本の国際競争力を高める上で、豊かな語学力と幅広い視野を備えた人材が求められている。政府は教育環境の整備を進めるべきだ。

安倍首相直属の教育再生実行会議が、海外で活躍できる人材の育成に向け、小学校から大学に至るまで、英語教育の拡充が必要だとする提言をまとめた。

注目したいのは、小学校で教える英語を正式な教科とするよう検討を促した点だ。

小学校では2011年度から「外国語活動」が必修となり、5、6年生が週1回、英語を学んでいる。英語に親しみ、慣れるのが目的で、中学校のような文法の指導はしない。初歩的な会話やヒアリングに重点を置いている。

正式な教科ではないため、教科書は用いない。教員養成課程で英語の指導法を十分学んでいない学級担任が教えることから、指導力に不安を抱える教師も多い。

教科へ格上げすることで、教科書を作り、授業の質向上につなげようという狙いは理解できる。

ただ、課題は多い。

正式な教科にすると、成績評価を行うことになる。その際、英語に親しむための授業で、テストによる評価はなじむだろうか。文法学習まで加わるようになれば、小学校の段階から英語嫌いになる子が出てくるかもしれない。

小学校教師の語学力を高めるのも一朝一夕にはいくまい。研修の充実はもちろん、英語を専門とする専任教師が教えたり、外国人指導助手とチームで指導したりする体制を整えることが大切だ。

他のアジアの国・地域を見ると、中国や韓国、台湾では、小学3年から英語を教えている。早い時期から学習を始めた方が身に着くと主張する専門家もいる。

一方、母国語である日本語の習得を優先すべきだとの意見も根強い。実施学年を引き下げるかどうかは今後の争点となろう。

提言は、大学教育にも言及し、「グローバル化の遅れは危機的状況にある」との認識を示した。

日本人の海外留学生は減少傾向にあり、日本で学ぶ外国人留学生も欧米諸国に比べて少ない。英語を使った講義を増やすなど、日本人学生を鍛え、外国人留学生を呼び込む取り組みが欠かせない。

提言は、英語を母国語としない人の英語力を測る「TOEFL」などの外部検定試験を、大学入試や卒業認定の判断材料に活用することも打ち出した。実践的な語学力の習得を促す観点から、検討に値するのではないか。

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