二階氏秘書立件 法改正に与野党で動け

朝日新聞 2009年12月10日

二階氏秘書有罪 偽装献金を防ぐ抜本策を

自民党幹事長代理で、麻生前政権の経済産業相を務めた二階俊博氏の政策秘書がきのう、準大手ゼネコン西松建設からの献金を個人からの献金に偽装した罪で、裁判所から罰金100万円の略式命令を受けた。

偽装は、社員ら60人がひとり5万円ずつ個人で献金したように装う手口だった。政治資金収支報告書には、5万円以下の個人献金について寄付者名を記載する必要がないからだ。

東京地検特捜部は、二階氏の秘書が罪を認め、悪質性を示す証拠もないので略式起訴にとどめた。公判は開かれずに事件の幕は引かれた。

しかし、特定の業者から偽装献金を受けていた裏に何らの癒着構造がなかったのか。不透明さがこれで晴れたとはとても言えない。

二階氏は「政治資金規正法に基づいた対応をきちんとやっている」と疑惑を否定し続けた。秘書の有罪についてきのう「誠に残念」と述べたが、自分の責任をどう考えているのだろうか。

西松建設事件では、小沢一郎・民主党幹事長の秘書も、ダミー団体を経由した偽装献金容疑で起訴され、来週ようやく公判が始まる。

こちらの方は無罪を主張して争う姿勢だ。起訴された違法献金も3500万円と高額で、小沢氏の公共工事受注への影響力が背景として指摘されている。

西松建設からの献金は、小沢氏側だけでなく、二階氏ら自民党議員側にも流れていた。このため、「民主党側だけを摘発するのは不公正ではないか」との批判が検察に向けられた。

このさなか、検察審査会が2度「起訴相当」の議決をすれば、検察が応じなくても起訴されるという重大な改正があった。このことも影響して捜査は長期化し、ようやく自民党側の立件にたどりついた。

様々な手口で寄付者の名前を伏せる報告書の虚偽記載は、鳩山首相の偽装献金疑惑でも明らかになっている。政治資金規正法の網をくぐり抜けようとする不正は、広く政界に横行しているのではないかとの疑念が生じる。

政治家とカネの関係をガラス張りにすることで、政治腐敗を根絶しようとするのが政治資金規正法だ。その報告書にうそを書かれれば、企業や団体からの政治献金を全面禁止にするといった改革をいくら徹底しても、抜け道を防ぐことは難しい。

法律を空洞化させる犯罪を防ぐためには、秘書ら担当者だけを罰していても効果には限界がある。

虚偽記載が発覚した場合に、議員本人の監督責任を問いやすくする改正案が公明党から衆議院に出されている。こうした案も含めて、国会は超党派で早急に実効性のある改革を検討しなければならない。

毎日新聞 2009年12月10日

二階氏秘書立件 法改正に与野党で動け

自民党の二階俊博前経済産業相の長田武敏・政策秘書が政治資金規正法違反で東京地検から略式起訴された。西松建設から献金を受けながら、個人献金と偽装して政治資金収支報告書に記載したとされる。

二階氏は疑惑が取りざたされて以後「個人献金と聞いている」と釈明してきた。しかし、秘書は特捜部の最近の事情聴取に対し偽装を認めたという。二階氏は献金の実態について国民に対し、改めて明快に説明すべきである。

略式起訴された内容によると、長田秘書は06~08年、西松建設から総額900万円の企業献金を受けた。献金は年300万円ずつだったが、「自民党和歌山県第3選挙区支部」の政治資金収支報告書には、寄付者名を記載する必要のない1人5万円の個人献金60人分に仮装するうその記載をしていたという。

政治資金規正法は、企業から政治家側への献金を禁じるが、政党や政党の政治資金団体については認めている。今回、支部の会計責任者は地元支援者である会社社長だったという。なぜ献金を偽装しなければならなかったのか。不可解な隠ぺい工作といわざるを得ない。

西松建設は、ダミーの2団体名義で二階派政治団体のパーティー券を購入していたことも発覚している。市民団体から刑事告発を受けて地検が捜査したが、二階氏側は不起訴とした。しかし、検察審査会で「起訴相当」の議決を受けた国沢幹雄元社長は、特捜部に追起訴され、裁判で有罪が確定した。国民の声が結果的に捜査を後押しした形になった。

西松建設の違法献金事件の捜査は終結する。既に民主党の小沢一郎幹事長側への資金提供で、公設第1秘書、大久保隆規被告が政治資金規正法違反で起訴されている。結局、民主、自民両党の大物議員秘書が刑事責任を問われたことになる。

事件の残した教訓は重い。献金はいわゆる裏金ではないが「表のカネ」でも虚偽記載は許されない。政治資金の透明さに対する国民の目の厳しさを政治家は自覚すべきである。

民主党は、マニフェストで政治資金規正法を改正し、企業団体の献金やパーティー券購入を禁止するとうたう。一方、自民党は鳩山由紀夫首相の偽装献金問題を追及するが、二階氏の事件への説明責任を果たさなければ、説得力を欠く。法改正は与野党共通の課題と認識し、来年の通常国会に向けて動いてほしい。

特捜部が、当時民主党代表だった小沢氏側の強制捜査に乗り出したのは、総選挙を控えた今年3月だった。そのため、捜査手法への批判も起きた。検察も従来以上に捜査への説明が求められている。

読売新聞 2009年12月10日

秘書略式起訴 二階氏の責任も免れない

やはり特定の企業からの献金を隠そうとしたものだった。

西松建設が社員らの名義を使い、二階俊博前経済産業相が代表を務める自民党支部に献金していた問題で東京地検はそう認定した。

二階氏の政策秘書が政治資金規正法違反で略式起訴され、即日、東京簡裁から罰金100万円の略式命令を受けた。

罰金刑だからと言って、決して軽くみることはできない。

秘書は、西松建設からの献金と知りつつ、献金者名を書かなくて済む年5万円以下の個人献金と偽って、総額だけを党支部の政治資金収支報告書に書いていた。虚偽記入額は、年300万円、3年間で計900万円に上る。

背景には、二階氏の弟が実質的に運営する政治団体の事務所家賃問題があった。

西松建設は、弟の依頼を受け、同社の関係する会社にマンションの一室を購入させ、この政治団体と年280万円の賃貸契約を結んだ。党支部への献金は、家賃を補填(ほてん)する目的で始まったという。

自民党旧二階派は西松建設に約840万円のパーティー券も購入してもらっており、それを持ち掛けたのもこの秘書だった。古くからの付き合いである二階氏と西松建設の親密ぶりがうかがえる。

二階氏側はなぜ一企業からこれほど援助してもらえたのか。弟はどんな役割を果たしていたのか。略式起訴を受け、二階氏は「秘書は軽率だった」と述べたが、こうした疑問にも答えるべきだ。

鳩山首相や民主党の小沢幹事長、小沢氏の秘書だった石川知裕衆院議員にも、政治資金をめぐる疑惑が浮かんでいる。

母親から11億円を超える資金提供を受けていた鳩山首相と、不動産購入をめぐって説明のつかない2億円の収入不足が判明した小沢氏の資金管理団体の問題は、今回よりけた外れに金額が大きい。

民主党は来年の通常国会に政治資金規正法改正案の提出を目指しているが、幹部が自らの疑惑を説明することが先決だ。

政治資金規正法では、会計責任者に対する議員など政治団体代表の選任・監督責任が定められているが、その過失を認定するのは難しく、適用例はほとんどない。

こうした点も含め、現実的で実効性ある改正を図り、「政治とカネ」をめぐる国民の不信感を払拭(ふっしょく)してもらいたい。

首相らの疑惑についても、検察が捜査を尽くし、厳正に処理すべきことは言うまでもない。

産経新聞 2009年12月11日

二階氏秘書起訴 自民党は自浄能力みせよ

自民党は自浄能力を発揮できないのか。西松建設からの違法献金事件で、二階俊博前経済産業相の政策秘書が政治資金規正法違反(虚偽記載など)罪で略式起訴されたことへの執行部の対応は、いくらか残る党への期待感を打ち砕くようなものだ。

谷垣禎一総裁らは二階氏を処分せず、選対局長を続投させた。理由はなんと、鳩山由紀夫首相や小沢一郎民主党幹事長の献金問題に比べて金額が小さいからだという。そんな理由で世間が納得すると思ったのだろうか。

身内に甘い印象を与えるだけではなく、後を絶たない「政治とカネ」の問題に目をつぶっている。こうしたことで自民党が再生を果たせるとはとてもいえない。

立件されたのは、西松建設側から二階氏が代表を務める政党支部に対し、3年にわたり計900万円が個人献金を装った形で渡っていた問題だ。寄付者名を記載する必要のない1人5万円の小口献金に分けられていた。

会計実務にあたっていた政策秘書は裁判所の略式命令に従い、罰金100万円を直ちに納めた。個人献金を装った罪を認めたものといえる。

あくまでも個人献金だと主張してきた二階氏は9日、「大変残念に思う。今後は誤解を受けないよう指示を徹底した」と釈明したうえで、首相の問題と比べて「けたが違う」と述べた。

谷垣総裁は10日、二階氏の主張を受け入れ、党として処分も調査もしない考えを表明した。違法性への認識が薄い。国民が厳しく見つめていることにもっと敏感であるべきだ。

党再生に向けた「政権構想会議」での議論でも政治とカネの問題はほとんど取り上げられていない。さきの臨時国会では、秘書の違法行為について政治家の責任を重く問う政治資金規正法改正への取り組みも不十分だった。2年前の参院選で事務所費問題などが問われたのを忘れたのだろう。与野党ともに説明責任を果たさず、自浄能力を示そうとしないのはきわめて残念だ。

西松建設事件の捜査では、小沢氏の公設第1秘書は逮捕された一方、二階氏側のパーティー券疑惑では検察審査会の「不起訴不当」議決をはさんで、秘書の不起訴処分が繰り返された。政治的判断の存在が問われ、検察当局にとっても大きな課題が残された。

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