民主化と経済改革を進めるミャンマーに対し、日本が大型支援を表明した。アジアの新市場を開拓する布石でもある。
安倍首相がミャンマーを訪問し、テイン・セイン大統領と会談した。日本の首相としては、1977年の福田首相以来36年ぶりの歴史的訪問だ。
首相は大統領の改革を前向きに評価し、「官民の力を総動員し、国造りを応援する」と語った。
具体的には、ミャンマーへの債権のうち3000億円を帳消しとし、日本企業の拠点となる工業団地開発などに910億円の政府開発援助(ODA)を拠出する。
大型発電所や電力供給網、高速通信網などの整備でも、民間と連携して支援する方針を示した。
民政移管後のミャンマーは、有力な投資先として世界中から注目され、米国をはじめ各国の進出競争が勢いを増している。首相は、日本企業の進出促進に向けてトップセールスを図ったといえる。
大統領は謝意を示すと共に、日本の投資の重要性を強調した。
ミャンマーは、天然ガスなどの資源に恵まれ、労働力の質と市場の潜在力の高さから、「アジア最後のフロンティア」といわれる。立ち遅れている社会基盤(インフラ)整備への日本の協力は、経済発展を大きく後押ししよう。
首相は「ロシア、中東に続き、ミャンマーへのインフラ輸出も日本の成長につなげたい」と記者団に述べた。安倍政権の成長戦略の中で、ミャンマーは重要な位置を占めることになる。
首相は大統領に、法整備や人材育成を支援する意向を伝えた。
多様な経済支援を実効あるものにするには、ミャンマーの投資環境や企業運営などに関する法整備が必要だ。ミャンマーから1000人規模の青年を日本に招待する取り組みは効果的だ。
両首脳は、少数民族の貧困撲滅対策への協力でも一致した。人権問題の解決につなげたい。
安全保障協力の強化でも合意した。海上自衛隊の「練習艦隊」がミャンマーに初めて寄港するなど、防衛交流が活発化する見通しだ。その意義は小さくない。
中国とインドの間に位置するミャンマーは、地政学的に要衝の地である。来年は東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国だ。
中国寄りの外交から転換したミャンマーとの関係強化は、安倍首相が掲げる民主主義や自由を重視する外交路線とも重なる。軍事、経済面で自己主張を強める中国への牽制にもなるだろう。
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