シェールガス 米国産輸入で高値買い是正を

毎日新聞 2013年05月21日

米シェールガス 燃料費削減の第一歩に

米政府が、シェールガスの日本向け輸出を許可した。割安な天然ガスの輸入に道が開けたことは朗報だ。

日本が現在輸入している液化天然ガス(LNG)の価格は、高止まりしている。シェールガスの輸入が始まるのは2017年の見通しだが、その前でも他の輸出国との交渉材料にはできるはずだ。国民の負担を軽くするためにも、今回の輸入決定をエネルギーコスト全体の引き下げにつなげてほしい。

米政府が今回、輸出を許可した米企業は中部電力、大阪ガスと契約している。両社はLNGに加工して年間計440万トンを輸入する計画だ。これは日本の年間輸入量の5%に相当する。米国の天然ガス価格は、日本が輸入しているLNGの4分の1前後で、液化や輸送の費用を加えても、今より3割以上安くまかなえるという。東京ガスや商社などがかかわる他のプロジェクトの輸出許可も期待したい。

日本は2年前の東京電力福島第1原発事故以降、大半の原発が稼働停止したことで、火力発電への依存が高まっている。燃料になるLNGの輸入が増え、価格も高止まりしているため、貿易赤字の大きな原因になっている。

しかも、最近の円安がこの傾向に拍車をかけている。電気・ガス料金の上昇が企業や家計を圧迫し、上向きかけている景気に冷や水を浴びせかねない状況だ。エネルギーコスト全体の抑制は緊急の課題といえる。

エネルギー源の大半を輸入に頼る日本は、輸入コストの抑制だけでなく、調達先の多様化も図らなければならない。安全保障面でも、米国産を輸入できる意味は大きい。

もっとも、米国からの輸入は今ある計画がすべて実現しても、年間輸入量の1~2割にとどまる。直接的なコスト削減効果は限られるため、輸入に道が開けたことのメリットを最大限に活用すべきだ。

狙いの一つは、中東などから輸入するLNGの価格決定の仕組みだ。米国の「シェールガス革命」による量産効果で、世界的にガス需給が緩和しているにもかかわらず輸入価格が下がらないのは、LNG価格が原油価格に連動する仕組みになっているためだ。ガスの市場価格に連動し、割安な米国産の輸入は、価格決定を市場連動型に改める交渉の材料として活用できるはずだ。

今、欧州向けのガス輸出を減らしたロシアが、日本への売り込みを活発化している。ここでも米国産の輸入をけん制材料にしながら、したたかに交渉を進めてほしい。もちろん、電力・ガス会社は共同調達を増やすなど自力で交渉力を強める努力も忘れてはならない。

読売新聞 2013年05月21日

シェールガス 米国産輸入で高値買い是正を

「シェールガス革命」に沸いている米国が、割安な天然ガスの日本向け輸出に道を開く。

東京電力福島第一原子力発電所の事故後、ほとんどの原発が停止し、火力発電に依存する日本にとって、調達先を多様化する重要な一歩である。

米エネルギー省は、中部電力と大阪ガスが参画するテキサス州の企業の液化天然ガス(LNG)輸出事業を認可した。地中深くの岩盤から採掘したシェールガスなどをLNGに加工して輸出する。

中部電力と大阪ガスは、このプロジェクトで2017年から両社合わせて最大年440万トンを輸出する計画という。日本のLNG輸入量の5%にも相当する。

米国は原則、自由貿易協定(FTA)を結んでいない日本などへのLNG輸出を規制していた。

しかし、例外的に対日輸出を初めて認めた意義は大きい。シェールガス革命で生産が飛躍的に増大して需給見通しが緩み、日本に輸出しても米国内の価格上昇は避けられると判断したのだろう。

日本が、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加を決めたことも追い風になり、オバマ政権が日米関係を重視したといえる。

シェールガス革命の恩恵を享受する日本は、これで安価なガスを調達できるようになる。

日本がカタールなどから輸入するLNG価格は、100万BTU(英国式熱量単位)約17ドルと北米のガス価格より4倍も高い。

原発を再稼働できない日本は、生産国から足元を見られ、「ジャパンプレミアム」という高値買いを強いられている。12年度の貿易赤字が過去最大の8兆円超に達したのも、LNG輸入が主因だ。

米国産ガスを輸入した場合、LNGへの加工代や輸送コストを加えても約10ドルと割安になる。米国との連携を切り札に使い、中東などとのLNG価格交渉を有利に進める効果も期待できる。

米国では、三菱商事と三井物産の連合や住友商事が天然ガスの開発に参加している。官民連携でこれらのプロジェクトによる輸出の早期認可を働きかけ、高値買いの構造をさらに是正すべきだ。

米国から天然ガス輸入が始まるのは約4年先だ。原発を再稼働できなければ、当面は火力頼みで、燃料コスト高を余儀なくされる状況は変わらない。

国富の流出を食い止めるため、政府は安全性が確認できた原発を着実に再稼働する必要がある。エネルギーを安定供給する総合戦略を構築しなければならない。

産経新聞 2013年05月21日

シェールガス 安定調達へ大きな一歩だ

米政府がシェールガスの日本向け輸出を初認可した。輸入先の多様化はエネルギー安定調達の基本であり、認可には日米同盟重視という戦略的意味も込められている。大いに歓迎したい。

日本は原油や液化天然ガス(LNG)を政情不安定な中東などに依存する。同盟国米国からの輸入ルート開拓は、エネルギー安全保障面で大きな前進といえる。

安倍晋三政権は他の米シェールガス輸入交渉の成約に向け、米政府に働きかけを強めてほしい。

米国では、硬い岩盤層の隙間に閉じ込められたシェールガスの産出が採掘技術の進歩で急増し、自由貿易協定(FTA)の締結国に天然ガスを供給してきた。今回、非締結国日本への輸出を解禁したのは、日本が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加を決めたことも一因である。

だが、米国内価格が上がりかねないとして米化学企業などに輸出への抵抗も強い。そうした中、安倍首相が2月の訪米で日本への輸出を求めたのに応え、オバマ米大統領は認可に踏み切った。同盟国重視という明確な決断である。

認可に伴い、中部電力と大阪ガスは4年後にテキサス州の貯蔵基地から、日本のLNG輸入量の5%の年440万トンを購入できる。シェールガスの増加で米国内価格は低下し、今より3割ほど安く調達することも可能だという。

原発の再稼働遅れで、代替の火力発電向けにLNG輸入が急激に増えている。足元を見られ、資源国との間で価格引き下げ交渉が難航し、輸入額は大震災前より年3・8兆円も増大している。米国からの調達を、他資源国との価格引き下げ交渉に利用してほしい。

中東産原油・LNGの多くは、イラン核開発問題などで緊張が続くホルムズ海峡経由で運ばれる。米国からの太平洋ルートでの輸入は中東依存度の引き下げにつながり、安定調達にも寄与しよう。

米国は2015年にも世界最大の天然ガス生産国になるとの国際機関の予測もある。日本の商社などは米国内貯蔵基地からの輸入交渉も始めている。そうした調達先の多様化には今後とも、官民挙げての取り組みが欠かせない。

ただ、LNGや石炭などに比べて原発の発電コストは圧倒的に安いのも事実だ。安価で安定的な電力供給には、原発の再稼働が不可欠であることも銘記したい。

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