オバマ政権になって初めて米政府代表が北朝鮮を訪問し、ようやく協議の仕切り直しが始まった。
ボズワース北朝鮮政策特別代表が、金正日総書記の側近で外交を取り仕切る姜錫柱第1外務次官と会談した。
きのう平壌からソウルに戻った特別代表は、「6者協議の役割」について「北朝鮮と共通の理解に達した」と語った。だが北朝鮮が6者協議にいつ、どのように復帰するかは「6者でさらなる協議が必要だ」とも述べた。
6者協議が途絶えてちょうど1年である。この間、北朝鮮は発足早々のオバマ政権を試すかのように、弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、2回目の核実験まで強行した。
ウラン濃縮の試験に乗り出したことも初めて公にした。使用済み核燃料を再処理し、核兵器の材料であるプルトニウムを新たに抽出したともいう。6者協議からの離脱も宣言した。
ウラン濃縮は認めるわけにはいかない。だが、北朝鮮が計画を進めようとしても、本格的な活動までにまだ時間がかかるとされる。まずはプルトニウムを生む原子炉を再び稼働させないことを最優先としなければならない。
北朝鮮が国連安保理の制裁決議に違反してアフリカに武器を輸出した疑惑も浮上している。制裁の履行への監視も強める必要があろう。
米朝間の協議が再開したばかりのいま大事なのは、こうした危機を高める身勝手な行動をこれ以上、取らせないことである。
そのためには対話への流れを定着させ、北朝鮮を6者協議の交渉テーブルにつかせないといけない。米朝協議の行方はまだ不透明だが、北朝鮮問題の鍵を握る米国、6者議長国の中国には引き続き説得を重ねてもらいたい。
目的は北朝鮮の完全な非核化だ。
金総書記の健康不安。3年後の故金日成主席生誕100年に「大国」への扉を開けるという目標。そうした時間の制約から、北朝鮮は米国との直接交渉で、朝鮮戦争の休戦協定から平和協定への転換の道筋をつけるなど、成果を急ぎたいかもしれない。
だが、北朝鮮が心しておかねばならないのは、平和協定にせよ、非核化や米朝・日朝の国交正常化にせよ、米朝だけで解決できないという現実だ。
こうした目標はすべて、4年前の6者協議の共同声明にすでに盛り込まれている。北朝鮮はそのレールに戻ってこなければならない。
北朝鮮が危機を演出し、他の国が見返りを与える。過去のそんな繰り返しはしないと日米韓が強調していることも北朝鮮は重く受け止めるべきだ。
5者は安易に妥協せず北朝鮮を非核化へと動かさねばならない。そして共同声明を実行に移させる。さらなる連携強化が欠かせない。
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