米朝協議 あくまで核廃棄めざせ

朝日新聞 2009年12月11日

米朝協議 北朝鮮は6者合意に戻れ

オバマ政権になって初めて米政府代表が北朝鮮を訪問し、ようやく協議の仕切り直しが始まった。

ボズワース北朝鮮政策特別代表が、金正日総書記の側近で外交を取り仕切る姜錫柱第1外務次官と会談した。

きのう平壌からソウルに戻った特別代表は、「6者協議の役割」について「北朝鮮と共通の理解に達した」と語った。だが北朝鮮が6者協議にいつ、どのように復帰するかは「6者でさらなる協議が必要だ」とも述べた。

6者協議が途絶えてちょうど1年である。この間、北朝鮮は発足早々のオバマ政権を試すかのように、弾道ミサイルの発射実験を繰り返し、2回目の核実験まで強行した。

ウラン濃縮の試験に乗り出したことも初めて公にした。使用済み核燃料を再処理し、核兵器の材料であるプルトニウムを新たに抽出したともいう。6者協議からの離脱も宣言した。

ウラン濃縮は認めるわけにはいかない。だが、北朝鮮が計画を進めようとしても、本格的な活動までにまだ時間がかかるとされる。まずはプルトニウムを生む原子炉を再び稼働させないことを最優先としなければならない。

北朝鮮が国連安保理の制裁決議に違反してアフリカに武器を輸出した疑惑も浮上している。制裁の履行への監視も強める必要があろう。

米朝間の協議が再開したばかりのいま大事なのは、こうした危機を高める身勝手な行動をこれ以上、取らせないことである。

そのためには対話への流れを定着させ、北朝鮮を6者協議の交渉テーブルにつかせないといけない。米朝協議の行方はまだ不透明だが、北朝鮮問題の鍵を握る米国、6者議長国の中国には引き続き説得を重ねてもらいたい。

目的は北朝鮮の完全な非核化だ。

金総書記の健康不安。3年後の故金日成主席生誕100年に「大国」への扉を開けるという目標。そうした時間の制約から、北朝鮮は米国との直接交渉で、朝鮮戦争の休戦協定から平和協定への転換の道筋をつけるなど、成果を急ぎたいかもしれない。

だが、北朝鮮が心しておかねばならないのは、平和協定にせよ、非核化や米朝・日朝の国交正常化にせよ、米朝だけで解決できないという現実だ。

こうした目標はすべて、4年前の6者協議の共同声明にすでに盛り込まれている。北朝鮮はそのレールに戻ってこなければならない。

北朝鮮が危機を演出し、他の国が見返りを与える。過去のそんな繰り返しはしないと日米韓が強調していることも北朝鮮は重く受け止めるべきだ。

5者は安易に妥協せず北朝鮮を非核化へと動かさねばならない。そして共同声明を実行に移させる。さらなる連携強化が欠かせない。

毎日新聞 2009年12月08日

米朝協議 あくまで核廃棄めざせ

北朝鮮を完全な核廃棄へと導く新たな道を、切り開かねばならない。きょう平壌入りするボスワース特別代表ら米政府代表団には、そういう強い決意を抱いてほしい。

オバマ政権発足後、初めての米朝直接協議である。「核兵器のない世界」を提唱して10日にノーベル平和賞を受賞する大統領は、北朝鮮の核開発にどう対処するのか、国際社会が見守っている。したたかな北朝鮮を相手に、すぐ目に見える成果は得にくいにしても、異様な独裁国家の核の脅威が存続している事態は断固として解消する。この方針を日本や韓国とも共有し、堅持してこそ目標は達成できる。粘り強い不屈の努力を期待したい。今回の米朝協議はその入り口である。

ただ、この問題は解決への展望が見えない状況だ。米国がクリントン政権時代の93年に北朝鮮との交渉を始めて以来、結果的に事態は悪化した。当初、強硬姿勢をとったブッシュ政権は北朝鮮の核実験後、安易な妥協に走って失敗した。オバマ政権はこれまでのところ制裁と柔軟姿勢を併用する堅実な姿勢だが、アフガニスタン情勢や経済危機の優先順位が高く、北朝鮮の核に全力で対処する余裕がないようにも見える。

こうした現実を背景に、米国では「北朝鮮の完全な核廃棄は当面、不可能だ。テロ組織や危険国家への核拡散を防ぐことで良しとすべきだ」といった趣旨の主張も公然と語られている。北朝鮮の手に少量の核兵器や核物質が残ってもやむをえない、という意味になる。この「当面」が長期化するなら、日本が容認できることではない。あくまでも完全な核廃棄を目指すべきである。

ボスワース氏は北朝鮮側に、6カ国協議を通じ核廃棄へと進むなら米朝関係正常化や経済支援も可能だと説明する模様だが、北朝鮮が粘って身勝手な要求を重ねるのは目に見えている。米朝協議は複数回に及ぶ可能性が高い。この難所を越えて6カ国協議にこぎつけ、問題解決を図ろうとする道筋で、米国とともに大きな役割を果たすのが中国である。

中国は北朝鮮の核実験を受けた国連の制裁決議履行に協力した。だが10月の温家宝首相訪朝を機に北朝鮮への経済支援を拡大し、その後も国防相や全国人民代表大会(全人代)代表団が訪朝するなど、北朝鮮との友好協力をアピールしている。

これが中国外交というものではあろう。しかし6カ国協議の議長国、同時に北朝鮮の命綱を握る支援者として、強い影響力を発揮する責任もあるはずだ。北朝鮮は打開困難な窮地に陥れば自ら大きく譲歩する。米国と中国が協力し、そんな状況を作るのは可能なはずである。

読売新聞 2009年12月12日

米朝協議 安易な妥協は避けるべきだ

北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議の早期再開へ、いかにしてつなげていくのか。難しい宿題が残された。

訪朝したボズワース米政府特別代表は、北朝鮮から、6か国協議への「復帰」も、核放棄公約の「再確認」も、得られなかった。ただ、「一定の共通理解」には達したという。

再開まで、なお米朝協議を重ねる可能性があるということなのだろう。オバマ米政権は、注意深く早期再開の道筋を探るべきだ。

北朝鮮は今年5月、2度目の核実験を強行し、その後も核開発の手を緩めようとしていない。

核実験後、国連安全保障理事会が採択した制裁決議を愚弄(ぐろう)する態度だ。国際社会は、北朝鮮が核放棄へ具体的な措置をとるまで、制裁を緩めるわけにはいかない。

北朝鮮の金正日政権にとって、破綻(はたん)した経済の足かせは大きな負担となっている。先月末の突然の通貨デノミネーションの発表は、その一例だろう。国際社会との関係改善なしに、経済を立て直すのは不可能だ。

北朝鮮は、自らの行動が体制の一層の脆弱(ぜいじゃく)化をもたらしていることを自覚すべきである。

今回の米朝協議で、北朝鮮は、朝鮮戦争の休戦協定に代わる平和協定の締結を改めて主張した。米国に「敵視政策」の放棄を迫るものだが、問題は、平和協定を先行させた場合、北朝鮮が核放棄する保証はないということだ。

それでは、「核保有」の既成事実化を容認することになる。

6か国協議プロセスの核心は、北朝鮮に、後戻りできない検証可能な核放棄を実行させることだ。北朝鮮の“善意”に期待して、一方的に譲歩すれば、取り返しがつかなくなる。

2005年9月の6か国協議共同声明を再確認することは、そのためにも必要だ。北朝鮮はその中で、「すべての核兵器と既存の核計画を放棄する」と約束した。

平和体制の確立や、関係正常化、経済・エネルギー支援など、北朝鮮に核を放棄させるために必要な要素も列挙されている。

北朝鮮の最も重要な貿易相手国の中国の責任は重いが、温家宝首相の訪朝を機に、北朝鮮への大型支援に踏み切ったようだ。6か国協議の早期再開に、どう影響してくるのか。

日本は、決して、日米同盟を揺るがして北朝鮮につけいる(すき)を与えてはならない。北朝鮮に核放棄を迫るために、米、韓との連携をさらに強化していくべきだ。

産経新聞 2009年12月09日

米朝高官協議 日本は米韓と結束固めよ

米政府のボズワース北朝鮮政策担当特別代表が米朝高官協議のために平壌入りした。3日間の訪朝を通じて6カ国協議復帰と核放棄を約束した共同声明(2005年)の再確認が狙いだ。

高官協議は1年2カ月ぶりで、オバマ政権では初の仕切り直しとなる。従来の失敗を超えて、日本人拉致問題も含めた包括的解決を図るには日米韓の連携が何よりも重要だ。それなのに、今の日米関係は危機的状況にある。鳩山由紀夫首相は直ちに同盟の信頼回復と日米韓の結束固めに向けてかじを切り直すべきだ。

オバマ大統領は対北政策で「過去のパターンは踏まない」と明言してきた。米国はこれまで段階的措置や安易な妥協の繰り返しで北に見返りをただ取りされてきた。前政権が日韓などの意向や忠告を無視し、米朝2国間主導で話を進めて失敗した反省もある。

今回の訪朝の目的は(1)6カ国協議への無条件復帰(2)核放棄の意思の再確認−にある。核廃棄の具体的手順や見返り策は6カ国協議の場へ引き出して話し合う戦略だ。米高官は「復帰に見返りを与える考えもない」と、協議復帰に向けた支援もしないとしている。

だが、北は「核保有国同士の交渉」を主張し、朝鮮戦争終結の平和条約交渉などを持ち出す恐れもある。高官協議を漫然と重ねるだけなら米朝主導時代へ逆戻りする。そうならないように、米側には毅然(きぜん)たる対応と日韓との緊密な連携に念を押しておきたい。

日本にとって重要な拉致問題でも、北は7日の国連人権理事会会合で「拉致は解決ずみ」と表明した。拉致被害者の再調査を約束した日朝合意を踏みにじる対応だ。決して許してはならない。

こうした約束破りを阻止するために、米韓では従来の段階的措置に代わる「グランド・バーゲン」(一括解決)構想が浮上した。核放棄と見返り策をあらかじめ確定した合意を図る狙いからだ。

日本政府は核、ミサイル、拉致の包括解決を一貫して主張してきた。新構想を生かすには、日韓、日米の結束を通じて拉致問題をきちんと組み込んでいくことが不可欠だ。日米同盟の信頼が一層重要となるのはそのためでもある。

ボズワース代表は今回、日本に寄らず韓国へ直行した。同盟の現状を象徴するようだ。普天間飛行場移設問題の早期解決が何としても求められる理由である。

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