安倍内閣の進める経済政策「アベノミクス」を好感した円安や株価上昇の追い風を受け、景気の持ち直しが一段と鮮明になってきた。
本格的な景気回復へ、政府と日銀は政策のかじ取りに万全を期さなければならない。
今年1~3月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比0・9%増と、2四半期連続でプラス成長となった。年率換算で3・5%の高い成長率である。
株高が購買意欲を刺激する「資産効果」などで、個人消費が堅調だった。円安を背景に輸出も回復した。内需と外需がそろって上向いたのは心強い。
東京市場の平均株価が1万5000円の大台を回復し、足もとでも明るい動きが広がっている。
甘利経済財政相は3・5%成長について、「異次元の政策投入による、異次元の景気回復への歩みが始まった」と、アベノミクスの効果を強調した。
だが、日本経済が上昇気流に乗ったと考えるのは早計に過ぎる。力強い成長のカギとなる企業の設備投資はまだ低調で、雇用の回復も遅れているからだ。
今年度予算を着実に執行するとともに、日銀の量的・質的金融緩和をあわせた「2本の矢」で、景気をしっかり支えたい。
民間主導の成長にバトンタッチできるかどうかは、「3本目の矢」の成長戦略にかかっている。
安倍内閣は産業振興や成長市場の育成策について、産業競争力会議などで論議している。
歴代内閣も成長戦略を打ち出しながら、成果は乏しかった。今度こそ民間の提言を生かし、技術革新や競争力強化に有効な戦略を練り上げてほしい。
他の主要国に比べて高い法人税率の引き下げや、過剰な雇用規制の緩和も急務である。
むろん、主役は民間企業だ。リストラ頼みの「守りの経営」から脱却し、収益力の強化を図ることが求められる。
心配なのは、1ドル=100円を突破した円安が勢いづき、原材料の輸入価格上昇といった副作用が深刻化しかねないことである。
円安で火力発電の燃料費が増大し、電気料金が追加値上げを迫られると、家計や企業への打撃は大きい。経済再生の観点からも、安全性を確認できた原子力発電所を着実に再稼働すべきだ。
日銀の金融緩和に逆行して長期金利が上昇し、景気への悪影響も懸念され始めた。政府と日銀は市場動向を注視する必要がある。
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