沖縄復帰の日 主権と安全守る覚悟こそ

毎日新聞 2013年05月15日

沖縄と安倍政権 そして溝は深くなった

沖縄の「本土復帰」から、15日、41周年を迎えた。安倍政権は、サンフランシスコ講和条約発効61年の4月28日、「主権回復の日」を記念して政府主催の式典を開いたが、15日は何の政府行事もない。

安倍晋三首相は4・28式典への沖縄の反発に配慮し、本土復帰の政府式典を検討する意向を示していた。しかし、具体化は見送られた。沖縄と政府の溝の深さが理由である。

講和条約によって、沖縄などは本土から切り離されて米国施政下に置かれた。4・28式典と同時刻、沖縄では「政府式典に抗議する『屈辱の日』沖縄大会」が開かれ、仲井真弘多知事は、県民感情に配慮して政府式典を欠席せざるを得なかった。

沖縄にとって4・28は、「沖縄切り捨て」(大会決議)の日という意味にとどまらない。米国施政下で米軍基地が定着し、今の在日米軍基地の沖縄偏在の出発点になった日でもある。そして、41年前の「5・15」以降、沖縄にも日米安保条約が適用され、基地負担が固定化された。

沖縄で、4・28も5・15も複雑な思いで受け止められる理由はそこにある。過重な基地負担を解決する以外に、沖縄問題の解決はない。

ところが、政府は3月末、米軍普天間飛行場の県外移設を求める仲井真知事に対し、名護市辺野古への県内移設に必要な公有水面埋め立て許可を申請した。4月には、日米両政府は普天間の返還について、辺野古への移設を前提に「2022年度またはそれ以降」で合意し、しかも、移設までの周辺住民の危険性除去策は示さなかった。また、同月末の日米防衛相会談では、沖縄が反対する新型垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを今夏、普天間に新たに12機配備することで合意した。

安倍政権発足から4カ月半。基地問題について政府と沖縄の距離は一層、広がっているように見える。

政府が普天間の県内移設、沖縄における基地機能強化の理由にするのが、米軍の抑止力維持である。

しかし、過去の政府答弁書は、米海兵隊が日本に存在する意義を強調するものの、その基地が本土でなく沖縄でなければ抑止力が維持できない根拠を示していない。辺野古への移設賛成論者にも、抑止力維持の観点からは、海兵隊が沖縄にいなければならない理由はない、との議論がある。抑止力維持を海兵隊の沖縄駐留の根拠にするのは困難になっている。

首相は4・28式典で、沖縄の本土復帰に触れ、「沖縄が経てきた辛苦に深く思いを寄せる努力をなすべきだ」と語った。そうであれば、基地負担の軽減と、基地問題の象徴である普天間移設の現行計画見直しに、真剣に向き合うべきだ。

産経新聞 2013年05月15日

沖縄復帰の日 主権と安全守る覚悟こそ

沖縄の本土復帰41年を迎えた。沖縄が歩んだ苦難の歴史を思いつつ、その周辺領域における日本の主権と安全を守ることの大切さを改めて見つめ直したい。

沖縄が返還された昭和47年当時、日本にとって最大の脅威は旧ソ連だった。今は、中国が軍事力を背景に尖閣諸島の奪取を狙い、威嚇と挑発を常態化させている。

今年に入り、中国公船が尖閣周辺の日本領海に侵入した日数はすでに昨年1年間の23日を超えた。今月12日から13日にかけ、中国潜水艦が沖縄近海の接続水域を潜航したまま通過した。

中国共産党機関紙、人民日報は8日、沖縄の帰属は「歴史上の懸案であり、未解決の問題だ」とする論文を載せた。人民日報傘下の環球時報も11日付社説で、沖縄の独立勢力を「育成すべきだ」と中国政府に提案した。県内の一部に同調する動きがあるが、尖閣ばかりか、沖縄全体の領有化を狙う中国の正体を見極めるべきだ。

沖縄を中心とする南西諸島の防衛強化はますます急務となっている。最大の懸案は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設問題だ。民主党前政権の迷走もあって、県外移設を求める声も根強いが、やはり日米合意に基づく名護市辺野古への移設が現実的である。

安倍晋三政権は沖縄の基地負担削減や地元振興を踏まえつつ、辺野古移設に向けた粘り強い説得を続けてほしい。尖閣諸島有事を想定した日米共同作戦計画の策定も急がれる。

初の政府主催の「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」が開催された4月28日、宜野湾市で「屈辱の日」大会が開かれた。日本本土が独立と主権を回復した後も、沖縄は20年間、米軍の施政権下に置かれ、切り捨てられたとする抗議集会だった。

しかし、沖縄に潜在主権は残され、主権を回復した日本政府が米国と交渉を行ったからこそ、沖縄が返還されたのではないか。

昨年11月、天皇、皇后両陛下は沖縄を訪問し、昭和20年の沖縄戦の犠牲者らの遺骨を納める国立沖縄戦没者墓苑(糸満市)で供花された。即位後4度目の沖縄ご訪問で、皇太子時代を含めると、計9回に及ぶ。

多くの県民が戦死した沖縄に、陛下が特別な思いを寄せられていることも、忘れてはならない。

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