中国の沖縄論文 筋違いの妄言看過できぬ

読売新聞 2013年05月10日

沖縄の「領有権」 中国の主張は誇大妄想気味だ

中国の膨張主義もここまで来たかとあきれ返る言いがかりである。

8日付「人民日報」が沖縄県の帰属について、「未解決」とし、中国に領有権があると示唆する研究者の論文を掲載した。

こんな誇大妄想的な暴論を、習近平政権の意向を忠実に反映する中国共産党機関紙が掲載した意図を怪しまざるを得ない。

論文は、日清戦争後の1895年の下関条約調印の際、「台湾と(尖閣諸島を含む)付属諸島、澎湖諸島、琉球(沖縄)が日本に奪われた」と指摘した上で、「歴史的に未解決の琉球問題を再び議論できる時が来た」と主張した。

菅官房長官が、「沖縄は歴史的にも国際的にも我が国の領土であることは紛れもないことだ」と述べ、論文が「中国政府の立場であるならば、断固として受け入れられない」と、中国側に厳重に抗議したのは当然である。

沖縄への「領有権」主張は中国で反日デモのスローガンや一部学者の論文には登場していた。だが中国政府が領有権を主張したり、具体的な行動を起こしたりしたことはない。さすがに根拠がないことを認識しているからだろう。

中国外務省の報道官は記者会見で論文に言及し、「学術界が長期間注目してきた問題だ」としただけで、領有権に触れなかった。

中国政府は日本政府に対し、「研究者が個人の資格で執筆したもの」と説明したという。

だが、今回の人民日報の論文を軽視するわけにはいかない。

沖縄県・尖閣諸島を、国家主権や領土保全など絶対に譲歩できない国益を指す「核心的利益」の対象に初めて位置づけたのが昨年1月の人民日報だったからだ。

その後、中国政府はこの言葉の使用を避けていたが、今年4月には、外務省報道官が公式に明言する事態となった。

それから2週間足らずで今回の論文を掲載した背景には、尖閣諸島をめぐって対立する安倍政権に圧力をかけて揺さぶろうとする習政権の狙いがあろう。

習政権は最近、日本の尖閣諸島に対する実効支配を切り崩そうと、尖閣周辺の領海に監視船を侵入させる示威活動を一段とエスカレートさせている。

中国が示威活動と並行して、尖閣と沖縄を組み合わせた独自の主張を展開する宣伝戦に出てくることを警戒する必要がある。

日本政府は中国の主張がいかに不当であるかを、国際社会で積極的に訴えていかねばならない。

産経新聞 2013年05月10日

中国の沖縄論文 筋違いの妄言看過できぬ

開いた口がふさがらないとは、まさにこれをいう。中国共産党の機関紙「人民日報」が尖閣諸島(沖縄県石垣市)に対する中国の領有権を主張し、沖縄県の日本帰属の正当性をも否定する学者の論文を掲載した。

沖縄について「明・清両朝の時期には中国の藩属国だった」としながら、その後「独立国家だった琉球を日本が武力で併合した」とし、「未解決の問題だ。改めて議論する時期が来た」と論じている。妄言以外の何物でもない。

沖縄県はまぎれもなく日本だ。沖縄の一部に基地問題をめぐって「独立論」もくすぶる中、一党独裁政権の見解を反映する人民日報が「未解決」と断じたことは重大だ。軍事力を背景に尖閣の奪取を狙って、沖縄全体を国際社会向けの「世論戦」の材料にする揺さぶり戦術の可能性もある。

菅義偉官房長官が「全く不見識な見解」と中国に抗議したのに対し、回答は「研究者が個人の資格で執筆した」と極めて不誠実だった。中国政府は謝罪すべきだ。

沖縄県について中国と台湾は、日本領土として公式に認めていない。沖縄県の地位を中台が問題にするのは、日本が受諾したポツダム宣言に「日本国の主権は本州、北海道、九州、四国並びに吾等の決定する諸小島に局限せらるべし」との一節があったためだ。

連合国の一員であり、かつての宗主国を関与させずに日米間で沖縄返還を決めたことへの反発がにじんでいる。

中国で、沖縄の地位を未確定とする学者の論文は以前にも発表された。沖縄は台湾や尖閣とともに日本に奪い取られた、との一方的な言論も少なくない。

この問題は5年前、米上院軍事委員会の公聴会でも取り上げられた。当時の米太平洋軍司令官は中国側の思惑に関し「中国海軍高官から、ハワイを境に米中が太平洋を東西に分割管理してはどうか、と提案された」と証言した。

中国にとって沖縄は、台湾-フィリピンへと延びる事実上の対米防衛ライン「第1列島線」の起点として重要な意味をもつ。中国海軍艦船の沖縄近海での航行が常態化しているのもこのためだ。

今回の人民日報の論文からは、尖閣だけではなく、沖縄全体の奪取を狙う中国の露骨な意図が透けてみえる。「世論戦」ではすばやく反撃しなければならない。

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