米韓の対北連携 日本はずし喜ぶのは誰か

読売新聞 2013年05月09日

米韓首脳会談 対「北」包囲網の強化に繋げよ

米韓両国は今後、日本や中国、ロシアとも緊密に連携し、北朝鮮に核兵器と弾道ミサイルの開発断念を迫る戦略を立てるべきである。

それを、堅固な北朝鮮包囲網の形成に(つな)げねばならない。

オバマ米大統領が、韓国の朴槿恵大統領と初めて会談した。焦点の北朝鮮を巡っては、金正恩政権に国際規範順守と非核化を粘り強く求めていくことで一致した。

米韓首脳は会談後、60周年を迎えた米韓同盟の深化をうたう共同宣言も発表した。

宣言は、米韓同盟をアジア太平洋の平和と安定の要と位置付け、エネルギー安保やテロ対策、核拡散防止など広範な分野の協力推進を盛り込んでいる。北朝鮮への対応では、6か国協議の関係国との協調を明記した。

新たな次元に入る米韓同盟の真価は、北朝鮮を国際社会に引き出せるかどうかで問われよう。

オバマ氏は、会談後の共同記者会見で、北朝鮮への抑止力を強化して、「北朝鮮が非核化に向かえば、対話に臨む」と明言した。

朴氏も、国際社会が一致して北朝鮮に強いメッセージを発する必要があると指摘した。北朝鮮の非核化へ、中国とロシアが果たす役割の重要性にも言及した。

中国の主要銀行が、北朝鮮の貿易銀行に取引停止と口座閉鎖を通知したというのが確かなら、中国が米国や日本の制裁に同調したものと肯定的に評価できよう。

疑問なのは、朴氏が記者会見で、日本と協力する必要性について触れなかったことだ。

韓国側によると、首脳会談で、日米韓の緊密な連携が必要との認識を示したオバマ氏に対し、朴氏は「北東アジア地域の平和のためには、日本が正しい歴史認識を持つべきだ」と述べたという。

首脳会談の席で、第三国の「歴史認識」に言及するのは異例だ。韓国内で、安倍内閣の閣僚らの靖国神社参拝などに反発が強いことが背景にあるのだろう。

朴氏は、北朝鮮と信頼醸成を図る「朝鮮半島信頼プロセス」や、平和と協力の新時代を開くために関係国が協議する「北東アジア平和協力構想」を提唱している。

北朝鮮に対話の扉を開いても、日本とは対話ができないとなれば「平和協力構想」も画餅に帰す。朴氏の本意ではあるまい。

日韓両国が、双方で見解の異なる歴史認識や領土問題を理由に、連携を図れないということがあってはならない。それは北朝鮮の立場を利するだけだ。

産経新聞 2013年05月09日

米韓の対北連携 日本はずし喜ぶのは誰か

韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の初訪米は、北朝鮮への強いメッセージを発する効果があった。半面、日本にとっては、きわめて残念な思いを残した。

首脳会談では、対話の前提として、北朝鮮に非核化を強く求めた。北が挑発姿勢をなお捨て去っていない中で、安易に歩み寄らない姿勢を鮮明にしたことの意味は大きい。

共同記者会見で、オバマ米大統領は、北の瀬戸際戦術が通用する時代は終わったと断じ、朴氏は「核開発に固執すれば、生き残れない」と警告した。

両首脳は、北への支援を含め「外交的関与」の用意があるとし、北の非核化、国際的義務の順守がその条件だと表明した。

北のミサイル撤去が伝えられるが、それだけで問題解決とはならない。核・ミサイル開発を放棄しなければならず、国際社会はそれまで、対話を探りつつも北制裁を厳格に履行する必要がある。

会談の成果とは別に、驚かされたのは、朴氏の発言に露骨な「日本はずし」があったことだ。

記者会見でオバマ氏が、「日米韓」連携の重要性に言及したのを受けて朴氏は「中国、ロシアは北に大きな影響力を持つ」と述べた。中国については、元来、制裁に消極的だったにもかかわらず、国連安保理の制裁決議で活発な役割を果たしたと持ち上げた。

この両国と米国、北朝鮮、韓国、日本が北の核問題をめぐる6カ国協議のメンバーだ。そのうちあえて日本にだけ触れなかったが、どういう意図なのか。

朴氏は首脳会談で、「北東アジアの平和のためには、日本が正しい歴史認識を持たなければならない」とも伝えた。オバマ氏の反応は伝えられていないが、第三国との首脳会談で持ち出す話か。

朴氏は米紙との会見でも「日本は(周辺国の)過去の傷を開き、うずかせてきた」と非難した。

朴氏は中国との関係を重視し、「米中韓」の協力が重要だと強調している。確かに中国は北に影響力を行使できるが、「日米韓」の連携があってはじめて中国を動かせると知るべきだ。

先月予定された外相会談を韓国側が中止するなど、歴史・領土をめぐって日韓関係がぎくしゃくしている。菅義偉官房長官は「わが国の考え方が理解されるよう働きかけていく」と述べたが、日韓の亀裂は北を喜ばせるだけだ。

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